428ー番外編 ブランコが欲しい!
突然ですが
『6/1発売、感謝をこめて!』
番外編の投稿です。
SSですが、読んでいただけると幸いです!
「殿下、集めてきましたよ」
「うん、リュカありがと」
ミーミユ湖の近くにある別邸から城に戻ってきてもう日常生活に戻っている。リュカも大分慣れた。でも変わった事があるんだ。
まず、午前中に1時間だけクーファルから授業を受けるようになった。俺、まだ3歳なんだけどね。なのに、帝国の歴史やら一般教養やらを教わっている。
先生はクーファルだし、1時間だけだから楽勝だよ。
それから、午後に隔日だけどレピオスに師事する事になった。もちろん、レピオスに緊急の場合がない時だけだ。
邸にいる間も、レピオスに色々教えてもらっていたからな。それを継続したかったんだ。
午後からといっても、俺は昼食を食べたら眠くなる。お昼寝は大事だからな。お昼寝から起きてほんの2時間程だけだ。少しでも医療に携わっていたいんだ。前世、現役の小児科医だったからな。もう、ライフワークだ。
今は何をしているのかと言うと、今日は午後から何も予定が入っていないんだ。そこで、おれはリュカと一緒にブランコを作ろうとしているんだ。
だってさ、遊具と呼ばれるものが全然ないんだよ。ブランコくらいはあってもいいんじゃね? と、思ってさ。それで、城の裏庭に来ている。丁度、良さげな木があるんだよ。
リュカが集めてきた板を並べて聞いてきた。
「殿下、これどうするんスか?」
「あのね、板をつなげて座りぇりゅ位にしてほしいの」
「座れる位にですか?」
「しょう。こうして繋げりゅとさ」
俺は実際にリュカが持ってきた板を地面に置いてみる。
「ああ、分かりましたよ。じゃあ、釘と木槌も借りてきますね」
「うん、わかった」
リュカがどこかへ走って行った。
「殿下、何を作るのですか?」
「オク、ぶりゃんこらよ」
「ぶ?」
「ぶりゃんこ」
「何です、それは?」
「え、知りゃない?」
「はい、聞いた事がありませんが?」
えぇ~、本当にこの世界には遊具がないんだな。
「こんなのなんだけど……」
俺は地面に簡単な絵を描いてみせる。
「なるほど。これに乗るのですか?」
「しょう。乗ってね座ってこぐの」
「こぐ?」
「こう足でさ」
と、ジェスチャーで説明する。
「そうすると前後に動きますよ?」
「そうだよ。動かさなきゃ楽しくないよ」
「危なくないですか?」
「いっぱいこいだらちょっとあぶないね。でもそんなことしないよ。楽しいよ」
「そうですか?」
「うん!」
「殿下、どこから吊るしますか?」
「ありぇだよ、オク」
俺は指差す。すぐ、後ろにある大きな木の枝をだ。
「それで、この場所なんですね?」
「しょう。あの枝が1番強そうかなって」
「そうですね。あれくらい太さがあれば殿下お1人位は平気でしょう」
「殿下! 借りてきましたよー!」
と、リュカが走ってきた。
「で、どうします?」
「リュカ、この2枚の木を裏かりゃくっつけて」
「はい。こんな感じッスか?」
「うん、そうそう」
平な2枚の木を、裏側に細い木を当てて打ち付ける。
「でね、2つ穴をあけてほしいな」
「どこら辺に開けます?」
「殿下、もしかして2箇所に縄を通しますか?」
「うん、オク。そうなの。で、三角にして1本にすりゅの」
「よく考えておられますね。その方が安定するんですね」
「そうそう」
オクソールが理解してくれたから、後は早かった。
リュカが木に登って縄を結んでくれて完成だ。
「やった! できた!」
「殿下、ここに座るんッスか?」
「リュカ、そうだよ」
早速、俺が座ろうとしたら高くて座れなかった。しまったな。今の自分の大きさを理解していない。
「アハハハ、殿下お乗せしましょう」
「オク、おねがい」
俺は両手を出してオクにブランコに座らせてもらう。
「おお! 初ぶりゃんこら! せーっの!」
せーので思いっきり漕いでみた……動かない。びくともしない。
「なんれ!?」
「ブハハハ! 殿下、力が足らないんですよ!」
「えぇー! せっかくつくったのにー!」
「リュカ」
「え、オクソール様。俺ッスか?」
「リュカ、あのね。ここ! ボクの両側に足を置いて立って漕いで!」
「えぇ!? 立ってですか!?」
「しょう! ね、早く!!」
もう、なんだよ。3歳児はブランコも1人で乗れないのかよ。
リュカが仕方なく俺の両側に足を置いて乗る。
「殿下、これどうやって漕ぐんですか?」
なんだと!? そんな事も分からないか!?
「リュカ、こうだ」
オクソールが横でジェスチャーしてくれる。ほら、オクソールは理解しているぞ。
「ああ、なるほど……こうッスね」
リュカが漕ぎだすと、ブランコがギュインと前後に揺れ出した。
「やった! リュカ、もっと早く!」
「えぇー! 殿下、怖くありませんか!?」
「こわくないよ! 楽しい!」
「アハハハ、殿下は色んな事を考えつくッスね」
オクソールが少し離れて見ている。
ああ、風が気持ち良いよ。ブランコなんて何年ぶり、いや何十年ぶりだよ!?
「ねえ、リュカ。もういいからおりて」
「じゃあ止めますよ」
「ダメだよ。止めないの。このまま下りて」
「えッ!? どうやって下りるんスか?」
「じゃんぷすりゅの」
「嫌ッス。怖いじゅないですか!」
「えぇー! リュカなりゃできりゅよ!」
「いや、できるできないじゃなくてですね。殿下、怖いですって」
「えぇー! なんれー!?」
「アハハハ! リュカは怖がりか!」
オクソールが爆笑しているぞ。
これがきっかけで帝都でブランコが流行ったんだ。でもさ、ネーミングが問題なんだよ。まさかここで『ら行』の呪いが発動するとは思わなかったよね。
分かる? 俺はさ、ちゃんとブランコって言ってるつもりなんだ。
でも、聞いていたオクソールとリュカがね……『ぶりゃんこ』て伝えたんだ。
違うだろって! だからさぁ、俺は『ら行』がちゃんと発音できないの知ってるよね!?
本当、びっくりしたよ。後で良い笑い話になったんだ。
読んでいただき有難う御座います!
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