表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

425/442

番外編ーオクソールの婚姻 3

「リリ! いる!?」


 突然、フォルセが俺の部屋にやって来た。あれ? 学園に行っている時間じゃないのか?


「フォルセ兄さま、どうしたんですか?」

「リリ、大変だよ! オクソールの婚約者が姉に階段から突き落とされた!」

「ええッ!?」

「信じらんないでしょう? 実の妹を突き落としたんだよ!? オクソールが自分を見てくれないのは妹のせいだって。邪魔するからだって。父親に告げ口したんだろって言ってたらしいよ!」

「兄さま……マズイですね」

「ね、ビックリしちゃった! まさかそんな事をすると思わないじゃない? でも、もっと証拠を集めてから慎重に動くべきだったよ!」


 本当だ。フォルセ兄さまの言う通りだ。

 俺達が軽はずみに動いたせいで。


「オク、行ってあげて!」

「しかし……」

「リリ、今はどこにいるのか分からないじゃん」

「あ、そうですね。父親は知らないのですか?」

「どうだろ? 僕、学園の先生達を探ってみようか?」

「兄さま、お願いします」

「うん、じゃあまた何か分かったら知らせるよ!」


 フォルセがバタバタと部屋を出て行った。きっと、早く知らせようと学園を抜け出して来てくれたんだ。


「オク、父親は?」

「クルーガー伯爵は今頃だと城におられるかと」

「じゃあ、会いに行こう!」

「いえ、リリアス殿下が動かれると大事になってしまいます。私だけ行っても宜しいでしょうか?」

「そっか。うん、オク。行って! 助けてあげなきゃ!」

「では、少し離れます。リュカ、頼んだ」

「はい! 大丈夫ですから!」


 オクソールが部屋を出て行った。


「オクソール様、珍しいですね」

「え? 何が?」

「何があっても殿下のそばを離れられない方なのに」

「んー、まあ今回は仕方ないよね。階段から落ちたって……最悪な事態も起こり得るからね」

「そうですね。ビックリです」

「本当だよね。やっぱ令嬢って怖いわ!」

「アハハハ! 殿下、そんな令嬢の方が珍しいですから」

「そうだけどさぁ」


 俺、マジで令嬢不信になっちゃうよ。

 結局、その後しばらく令嬢がどこにいるのか掴めなかったんだ。

 父親の職場に行ったオクソールだけど、一歩遅かった。父親は早退した後だったんだ。その後、数日登城してこなかった。

 フォルセ兄さまも学園の先生に聞いたりしてくれたけど、デリケートな問題だし、知る事はできなかった。

 姉はと言うと、学園から自宅謹慎を言い渡されていた。

 その時も、自分は突き落としていない。妹が勝手に落ちたんだとか言い訳していたらしいが、複数の目撃者がいたし姉の評判は先生方にも良くなかったんだ。

 後から分かった事なんだが、数人の先生と問題を起こしていたらしい。それに、真面目な妹と違って成績が悪い。単位が欲しくて男性教諭に迫った事もあったらしい。

 次から次へと出てくる悪い話に、俺は本当に驚いた。女の武器をフル活用していたんだ。

 まさか、そんな令嬢がいたなんて。今迄父親が気付かなかった事も不思議だ。

 あれだね、異性の前と同性の前とでは態度が違うって子だね。

 数日後、父親が登城してきてやっと話が聞けたんだ。


「オク、で?」

「はい、大きな怪我もなく打身程度ですんだそうです。療養も兼ねて、父親の両親の家に預けているそうです。自宅謹慎になった姉が家にいるので、同じ家には置いてはおけないとの判断だそうです」

「そう、安全な場所にいるんだね」

「はい、らしいです」

「でも、一時凌ぎだよね」

「はい」

「伯爵が夫人や姉とちゃんと話をしなきゃ」

「仰る通りです」

「オクはどうすんの?」

「どうとは……?」

「だって、そんな家の令嬢でしょう?」

「はあ、そうなんですが……」

「が?」

「その……リタ……妹ですが、真面目な大人しい令嬢なのです」

「姉とは大違いなんだね」

「はい。しかし、今回母親と話して思ったのですが……」

「うん、何?」

「もしかしたら、彼女は幼い頃から母親や姉に虐められて育ったのではないかと」

「あー、あり得るよね」

「はい。伯爵は気付いていなかった様ですが」

「可哀想に……オクは、婚約を無かった事にするつもりはないんだね?」

「はい。もしも、虐められて育ってきたのなら、私位は味方になってあげたいと」

「そう。なら一層の事オクの実家で引き取っちゃえば?」

「殿下、それは……」

「だめ?」

「いや、両親は喜ぶと思いますが……」

「そうなの?」

「はい、両親は彼女を可愛がっておりますから。うちは男3人ですし」

「そうなんだ。でもまあ、伯爵のご両親がいるもんね」

「はい」


 そうさ。クルーガー伯爵のご両親がいるのに、差し出がましい事はできない。

 仕方ないけど、様子見だったんだ。

 この事件が、また違う事件に結び付くとは思いもしなかった。

 ホント、何がきっかけになるか分からない。


 問題の姉が謹慎になってから、男性教諭と生徒の中に体調不良を訴える者が出だしたんだ。

 皆、同じ症状で頭が重い、ボーッとする、吐き気がする。て、ものなんだが。

 偶々、その症状を訴える生徒の中にフォルセの学友がいたんだ。


「リリ、忙しいかな?」

「フォルセ兄さま、いいえ。どうしました?」

「僕の友達なんだけどさぁ、ちょっと見てくれない?」

「兄さま、見るとは?」

「この2〜3日ね、頭がぼーっとして少し吐き気がするんだって。動けない程じゃないそうなんだけど。目の下にクマができていてさぁ、見てらんないんだ」

「体調不良ですか? なら、ボクよりレピオスの方が良くないですか?」

「もし平気なら2人に見てもらいたいんだ。実は例の令嬢と少し接点があった奴でね。あ、婚約破棄とかはしていないよ。ちゃんと気がついていて、線引きしていたから。でもね、なんか引っかかるって言うか、気になっちゃって」

「分かりました。レピオスと一緒に行きます」

「ホント? ありがとう! 部屋で待ってるね!」


 フォルセのこんな時の『気になる』は無下にできない。勘がいいんだ。俺に婚姻するつもりがないのを唯一見抜いていたのもフォルセだ。

 俺は早速、レピオスを連れてフォルセの部屋を訪ねた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ