番外編ーオクソールの婚姻 2
「え……マジ?」
初めてオクソールの話を聞いた俺の言葉がこれだった。
だって、あの時は俺もまだ7歳だったしさぁ。7歳の子供によくそんな相談したよな? ビックリだ。まあ、中身はオッサンなんだけどさ。
「殿下、マジなのです」
「え、オク。ボクまだ7歳なんだけど?」
「はい。承知しております」
「26歳のオクに分からない事が、7歳のボクに分かる訳ないじゃん」
「殿下なら……」
「そんな訳ないよ?」
「はぁ……」
はぁ……じゃねーよ! よく7歳の子供に相談しようと思ったな? その辺どうなんだよ?
「いや、殿下ならと……」
「そんな訳ないじゃん!」
「はぁ……」
「……え、ちょっと待って。オクの婚約者が何歳だって?」
「15歳です」
「で、そのぶっ飛んだ姉が?」
「たしか2歳上なので17歳です」
「オク。フォルセ兄さまに相談しよう!」
「え、殿下。それは……」
「オク、気付いてないの? 兄さまと婚約者は同級だ」
「あ……」
「とにかく、婚約者とその姉がどんな令嬢なのか調べてみよう!」
「殿下……」
「ん? どうしたの?」
「楽しんでおられますか?」
「え……そんな訳ないじゃん!」
あ、ちょっと面白くなってきたと思っているのがバレちゃったか?
「リュカ、フォルセ兄さまのご都合を聞いてきて!」
「はい、分かりました!」
そばで話を聞いていたリュカも、張り切って飛んで行ったぜ。
ニルまでニマニマしているし。みんな人が悪い。ちょっと面白くなってるんだよ。きっとな。
リュカも速攻で戻ってきた。
「殿下、オクソール様、フォルセ殿下が直ぐに来る様にと仰っています!」
「よし! オク、行こう!」
「殿下、あまり大っぴらには……」
「分かってるって!」
俺は渋るオクソールを連れて、フォルセの部屋に急いだ。
リュカが付いてくる。何故かニルまで付いてきている。いつも部屋で待ってるくせにさぁ。
「フォルセ兄さま」
「リリ! 聞いたよ。オクソール、面白い事になってるじゃん!」
あ、フォルセ。面白いとか言ったらダメだぜ?
「フォルセ殿下、面白いとは……」
「ああ、ごめんごめん。でもさ、その姉の方だけどヴェロニカ・クルーガーでしょ? その子ね、学園でもちょっとした問題になってね有名人なんだよ。悪い意味でなんだけどね」
なんだと? どう言う事なのかフォルセに聞いた。
「まあ、座って。オクソールも」
「いえ、私は……」
「いいから、座りなよ!」
「はぁ……失礼致します」
きっとこの時点では、オクソールは少し後悔していたんじゃないかなぁ? 俺に話した事をだよ。大袈裟にしたくないだろうから。でももう遅いよな〜。
「その令嬢なんだけどね、通称クラッシャー令嬢て呼ばれているんだよ」
「兄さま、クラッシャー令嬢ですか?」
「そう。婚約者のいる男子生徒に言い寄って婚約を破棄させるんだ。で、相手が自分のものになったらポイするんだよ」
「え……ビッチ?」
「ね、そう思うでしょ? 下半身もユルユ……いや、だらし無いって話だよ」
「殿下」
「ああ、ごめん」
一緒に話を聞いていた、フォルセの側近が注意をした。そりゃそうだ。皇子殿下が、そんな事言ったらダメだ。しかも、俺はまだ7歳だ。
「殿下、リリアス殿下はまだ7歳でおられます」
「そうだった。忘れてたよ。アハハ」
アハハじゃねーよ。
フォルセの話によると、その令嬢は色々やらかしているらしい。
婚約者のいる男子生徒にしか興味を持たないんだって。あれかな? 時々いるじゃん? 人のものを欲しがる子がさ。それなのかもな。
で、婚約者の令嬢をハメまくるらしい。意地悪されたとか、物を壊されたとか、殴られたとかさ。最初の頃はそれを真に受けて男子生徒も引っかかっていたらしいんだけど、令嬢はもう学園の最終学年だ。
そこまで来ると、周りも分かっていて近付く者も引っかかる者もいないらしい。
ああ、また始まった。位にしか思わなくなったんだって。
だから、最近では引っかかる男子生徒もいなくなったらしい。
そしたら今度は入学してきた妹を虐めだした。悪口を言いふらしたり、すれ違い様に足を引っ掛けたり。
学園では周りは分かっているから、可哀想に……て、感じらしいんだけど。
問題は、母親だ。オクソールの話だと、母親はその馬鹿な姉を贔屓して妹を虐げている可能性がある。
「オク、婚約者のご令嬢が可哀想だよね」
「はぁ……」
「え? オクソール、反応が鈍いね。どうしたの?」
「いえ、信じられないと申しますか……そんなご令嬢がいるとは」
「オクソール、君の婚約者が辛い思いをしているかも知れないんだよ。いや、きっとしてるよ。助けてあげなきゃ!」
「はぁ……」
フォルセはノリノリだ。
だけどなぁ。家でどうこうと言うのは、家庭の事情です。て、言われたら突っ込み様がないしなぁ。
「オク、取り敢えず父親と2人で話してみたら? 夫人に邪魔されない様にさ」
「そうですね」
「うん、そうしなよ。それがいいよ」
オクソールは早速、父親を呼び出して話を聞いたんだ。
フォルセ兄さまが言っていた事を父親に伝えて、家で母親と姉に虐げられていないか聞いたんだ。
「まさか、その様な事……」
「はい。私も信じられなかったのですが、フォルセ殿下がその様な嘘をつかれる筈がありません」
「そうですね……なんと言う事だ……! 自分にも婚約者がいるというのに。オクソール様の事を言い出した時にも、実は私は驚いたのです。妹の婚約者に対して何を言っているのかと。しかし、妻が……何しろ姉贔屓なので……」
「分かっておられるのでしたら、事実関係を調べ早急にリータニカ嬢の保護をしませんと」
「そうですな。いや、オクソール殿にはお恥ずかしい事を……」
「いえ、私で良かったのです。別のもっと高位の貴族子息に目をつけていたら……」
「確かに。どうなっていた事か……こんな事が公にでもなったら……いや、そんな事を言っておられませんな。早急に事実確認を致します」
そう父親のクルーガー伯爵は話していたそうだ。
それがいけなかったんだ。軽はずみに動いたりしたから……
事態は悪い方向へと動いたんだ。
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