表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

402/442

気がついたらヒロインキャラがいなかった件 1

リリのお友達のお話です。


「リリ殿下」

「ディア、どうした?」


 俺が、帝国学園高等部に入学して2度目の新学期を迎えて暫くした頃だ。


「殿下、テスト結果が張り出されていましたよ」

「そう」

「殿下は、また学年でトップでしたわ」

「良かった」

「あら? 殿下でも順位は気になさるのですか?」

「そりゃあ気にするよ。兄上達は皆、在学中ずっとトップだったのだから」

「そうでしたね」

「本当、優秀な兄達を持つと気苦労が絶えないよ」

「まあ! フフフ。殿下だって優秀ではないですか」

「ディア、僕は普通なの。努力の人なんだよ?」

「フフフ」


 ディアとは、アイスクラー侯爵家の令嬢で幼馴染のディアーナだ。

 お姉さんが、クーファルの奥さんだ。


「殿下、また1番でしたね」

「レイ、ありがとう。レイはどうだった?」


 レイも幼馴染で、ジェフティ侯爵家の次男だ。


「はい、僕は2番でした。また殿下を抜けませんでした」

「レイ、止めて。お願いだからそっとしておいて。僕、2番になる訳にいかないからさ」

「ハハハ、皇子殿下は皆様優秀でしたね」

「殿下もレイも凄いですわ」

「ディア、ありがとう。でも、殿下には勝てない」

「レイ、2番でも凄い事ですわよ?」


 そうだよ。本当にレイ、このまま2番でいてほしいんだよ。

 さっきも言ったけど、俺の兄達は学園に在学中は皆学年でトップだったんだ。

 クーファルは分かる。納得だよ。なのに、あのジャイ◯ンなフレイや、脳筋なテュール、妖精さんのフォルセまで1番だったんだ。

 なのに、俺が落ちる訳にいかないんだ。そりゃあもうプレッシャーだよ。

 だから、レイ。お手柔らかに頼むよ。


「殿下、今日帰りお伺いしても良いですか?」

「いいけど。じゃあ、一緒に帰る?」

「はい!……あ、アースだ」


 あれ、アースがベンチに一人座って項垂れている。


「アース、どうした?」

「ああ、レイか……殿下、ディアも」

「アース、どうしたんだ?」


 いつも元気なアースなのに気になるじゃないか。

 アースも幼馴染だ。シグフォルス侯爵家の五男だ。兄弟5人共男って凄いよね。

 とか言う俺も五男だけど。


「殿下……テスト結果が……」

「あー、駄目だったの?」

「はい」

「アース、今に始まった事じゃないだろ?」

「レイ、酷いな。」

「フフフ。でも、アースは身体を動かす方が得意なんでしょう?」

「ディア。それも言ったら駄目だよ」

「あら、レイ。どうして?」

「いや、まあ。そっとしておいてやってくれ」

「え? 何がですか?」

「ディア、俺は身体を動かす事も殿下に敵わないんだよ……」

「え、え? そうなの? あら、ごめんなさい?」


 ディア、天然は怖いね。傷口に塩胡椒してるよ? 擦り込んじゃってるよ?


「殿下はずっとオクソール様の鍛練を受けているから、当然だよ。アース、気にしたら駄目だ」

「気にするわ! 俺、それしかないのにさ!」

「アース、それしかない訳ないよ」

「殿下、慰めはいらないです」


 うわ〜、面倒……


「あ、殿下。今、面倒だとか思いましたね?」


 レイ、余計な事を言うなよ。ややこしくなるじゃねーか。


「アースも今日一緒に来る? オクに稽古つけてもらう?」

「殿下! お願いします!」


 オクソールを餌に使ってごめんね。


「まあ、では私もご一緒しても良いですか?」

「うん、いいよ。シェフが喜ぶよ」


 何でシェフが? て思う? 実はディアはシェフの作るスィーツが大好きなんだ。

 だから、ディアが来たらシェフが張り切るんだよね。

 

 5歳の頃に仲良くなった俺たちは、学園の高等部に入学してからも変わらず仲良くしていた。

 周りの貴族達は皆、婚約者がいるのに俺達は誰も婚約していなかった。

 レイもアースもディアも侯爵家だ。俺は第5皇子だ。その俺達が婚約していないので、ある意味注目されていた。

 ディアの姉が第2皇子のクーファルと婚姻している事もあって、当然ディアは俺と婚約するだろうと噂されていたんだ。

 俺は誰とも婚約するつもりはないんだけどね。


 なんて、俺達は何も知らずに呑気に仲良くしていたが、大人達はそうではなかった様だ。



「殿下、ディア本人がいる前で言うのもなんなんですが」


 皆一緒に帰ってきて、今は俺の部屋にいる。

 帰ってきてすぐにオクソールに少し手合わせしてもらったアースは、落ち込んでいたのも何処へやら。アッサリと復活してシェフの作ったおやつをガッツリ食べていた。

 俺はもちろん、りんごジュースを飲んでいる。


「アース、何かな?」

「ディアを、殿下とレイと俺のうち誰が射止めるのかと話題になっている様です」

「え……」

「まあ……」

「…… 」

「それ誰が話題にしてんの?」

「まあ、主に僕達の親ですね」


 レイ、なんだよそれ。勝手に言ってれば良いんじゃない?


「主に、うちの親なんです。すんません」

「アースの?」

「はい。ディアは唯一のヒロインキャラなんで」

「え? アース、何言ってんの?」

「これも、殿下の周りに女子がいない事が原因です」

「レイまで。意味不明だよ」


 ヒロインキャラって何なんだよ。別に俺は女子が嫌いな訳じゃねーよ。嫌いな訳ないじゃん。健全な男子なんだから。

 でもさ、それ以上に面倒なんだよ。女子はみんな目がギラギラしてるから。

 下心が見え見えで、正直コエーんだよ。


「殿下、ディア以外に仲の良い令嬢はいますか?」

「アース、確かにいないけど。じゃあ、アースやレイはいるの?」

「まあ…… 」

「はい、普通に……」


 なんだとー!? ズリーなお前ら! 俺は全然知らなかったぞ! 紹介しろよなー! けしからんな!


「殿下、だからです」

「レイ、何が? もう好きに言ってれば良いじゃん」


 不貞腐れるよ、俺は。


「ウフフフ」

「ディア、笑い事じゃないんだぞ」

「あら、アース。でも周りが何を言っても殿下にその気がないと無理ですわ」

「だからだよ。殿下、分かってますか? 殿下の周りにいる女性と言えば、ニルです。母君とフィオン様は別にして、あと思いつくのはアーシャです。いきなり、お子ちゃまですよ」


 だから、アース何だよ。いいじゃん別にさぁ。


「ああ、アーシャと言えばアースがお気に入りだったよねー」

「殿下、俺は幼児趣味はありません」

「まあ! ウフフフ!」


 ディア、笑ってるよ。意味分かってんのか?


「てか、どう言う事? アースがディアを好きなら告白すれば良いじゃん。僕は邪魔しないよ?」

「うん、そうですよね」


 ほら、レイも言ってるよ。


「ウフフフ」


 ディア、笑ってる場合じゃないからね。


あと少し続きます。

本編完結しましたが、ブクマ、評価宜しくお願いします。

励みに番外編書いてます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ