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4ーオクソール

「とーさま! とーさま! オクはわりゅくないです!」


 護衛のオクソールが父に呼ばれたと聞いて、俺は無理矢理ベッドから抜け出した。

 そして、父とオクソールの居る部屋に入って行くなりそう叫んだ。


「リリアス! まだ起きてきたらダメだ」

「でも、でも。オクをしかりゃないでください!」


 父の足にしがみ付いて訴える。


「殿下、私は殿下をお守りする事が、出来ませんでした」

「ちがう! ちがう! オクはなんどもボクを守ってくりぇた!」


 あー、クソ! 喋りにくいなー! らりるれろが言えてねーじゃねーか!


「とーさま、ボクはオクがいいです! オクじゃなきゃいやです!」


 父に抱き上げられながら、しっかり目を見てそう訴える。


「リリアス……分かったよ。オクソール、今迄何度もリリアスを救ってくれた功績がある。今回の事は咎めない。しかし、調査してくれないか? リリアスが湖に落ちたのは、本当に事故なのか。徹底的に調べてほしいんだ」

「はっ! 陛下。畏まりました」

「リリ、父様は直ぐに城に戻らないといけない。リリはもう少し元気になるまで此処で静養していなさい。大人しくするんだよ」


 父が俺の頭を撫でながら、心配そうな目をして見ている。


「はい、とーさま。ありがとうございます!」



「殿下、お守りできず申し訳ありません」


 部屋を出ると、オクソールがそう言ってきた。


「オク、だっこ…… 」


 両手を出すと、オクソールがそっと抱き上げてくれる。

 抱っこだぜ。抵抗なくできる俺は、やっぱり3歳児だ。


「部屋までつりぇてって。まだ寝りゅ。ふぁ〜…… 」

「殿下。まだお辛いですか?」


 俺はオクソールに抱っこしてもらい欠伸をしながら話す。


「だいじょぶ。お薬のんだりゃ眠くなりゅだけ」

「殿下、こちらにいらしたんですか!? 心配しましたよ」


 ニルが慌ててやって来た。


「ニリュ、ごめん」

「さ、お部屋に戻りましょう」

「ニリュ、オク。ボク持ってなかった?」


 眠くて身体をオクソールに預けなら、オクソールとニルに聞いてみる。


「殿下、何をですか?」

「オクが、ボクを助けてくりぇたの?」


 駄目だ…… 眠いぜ……


「はい」

「ボク、手に持ってなかった?……黄色いリボンのお飾り……」


 俺は眠気に耐えられず、そのまま寝てしまった。


「眠ってしまわれましたね」

「……ニル殿。今の殿下の話はまだ内密に」

「はい、オクソールさま」




「ふわぁ〜…… 」


 よく寝たぜ! もうかなり良いな。うん、熱ももうないしな。

 しかし何だ? あの薬は? 超青臭いしクッソ苦いじゃねーか!

 なのによく効くもんだな。ビックリだ。成分を分析してみたいもんだ。

 さて、どーすっかなぁ……?



「リリアス殿下、お目覚めですか? 今日は顔色が良いですね。ご気分は如何ですか?」


 俺付きの侍女であるニルが、部屋のカーテンを開けながら聞いてきた。


「ニリュ、だいぶ元気」

「お食事できますか?」

「うん、食べりゅ」


 ベッドの中でゆっくりと身体を起こす。

 ニルはベッドの脇に持ってきてある椅子に座り、食べさせようとしてくれている。


「フーフーして冷ましますからね」

「ニリュ、一人で食べりゃりぇりゅ」


 ニルからスプーンを取ろうとして手を出す。


「いけません。熱いですから」

「ニリュ、だいじょーぶ!」


 ――コンコン


 控えめなノックの音がして、そっとドアが開いた。そこから小さな頭がヒョコッと2つ。


「リリ、どう?」

「テューにーさま、フォリュにーさま。もうだいじょぶです」


 3歳の俺がテューにーさまと呼んでいるのが……

 第2側妃の子で三男のテュール・ド・アーサヘイム 14歳。

 ブルー掛かった金髪に紺青色の瞳。緩いウェーブの柔らかそうな髪をスッキリ短髪にしている。スポーツマンタイプか。


 もう一人、フォリュにーさまと呼んでいるのが……

 同じ第2側妃の子でフォルセ・ド・アーサヘイム 11歳。

 金髪より淡いブルーブロンドの髪に紺青色の瞳。兄と同じ緩いウェーブの髪を肩まで伸ばして後ろで1つに束ねている。弟の方は超絶可愛い感じだ。


「良かった!」

「なかなか目が覚めないから心配したよ!」


 二人揃ってベッドの脇にやってきた。


「エヘヘ、お薬のんだりゃ眠くなりました」

「あのお薬苦いよねー」

「フォリュにーさまも、飲みましたか?」

「うん、お熱が出た時に飲んだよ」

「俺も飲んだ事あるぞ。あれは嫌いだ」

「テューにーさま、ボクもきりゃいです!」


 そうだよな。どの世界でも子供は薬が嫌いなのは一緒だな。


「リリアス殿下、先に食べてしまいましょう」

「そうだね、食べて。また後で来るよ」

「ああ、ニル食事中にすまない」

「いいえ、テュール殿下、フォルセ殿下。態々ありがとうございます」

「にーさま、元気になったらまたお相手してください」

「うん、またね!」

「ああ、またな!」


 結局、無理矢理ニルに食べさせられた。55歳のオッサンは小っ恥ずかしい。


 さて、黄色のリボン。どうやって探そうか?

 オクはあれで、分かってくれただろうか? オクは知らなそうだったから、湖に落としたか? それしかないよな?

 身体が元気になってくると、寝てるだけってヒマだよな。テレビねーし。スマホねーし。あー、日本の文化が恋しいなー。


 ――コンコン


「殿下、起きておられますか?」

「うん、オク。もう元気」


 まだベッドから出られないけどな。


「殿下、覚えておられますか?」

「なぁにぃ?」

「黄色のリボンです」


 お、ちゃんと分かってくれてるじゃん。


「うん。フワフワのお飾りね」

「何故、手に持ってらしたのでしょう?」

「取ったの」

「取った?」

「うん。掴んだの」


 小さな手をグーにして掴む振りをする。


「落ちる時にですか」

「うん。ドン! ガシッブチッて!」


 両手を前に出して、また片手で掴むジェスチャーをする。


「ドン……ガシッ……?」

「うん。ドン! てなって…… うわっ! ガシッブチッ!て」


 クソ、喋れてねーじゃねーか!! こんなんじゃ伝わんねーぞ! 3歳児の俺、頑張れ!


「殿下、ドン、はどこに?」

「どこ?…… 背中? 背中にドンッ! てなった」

「ガシッブチッは?」

「うわっ! てなって、ガシッ! ブチッ! てとりぇた」


 身振り手振りで通じるか?


「はぁ…… 」

「で、ドボーン! ブクブクブク」


 今度は落ちて沈んでいくジェスチャーだ。


「成る程、よく分かりました」


 マジか!? こんなんで分かったのか!?


「オク、本当にわかった?」

「はい、分かりましたよ。では、黄色のリボンを探してきます」

「うん! オク、おねがいッ!」


 俺は短い親指を立てて、サムズアップする。

 あいつ、スゲー! 俺なら全然理解できないぞ。しかし3歳児てこんなか? こんなに喋れないもんなのか?


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― 新着の感想 ―
>抱っこだぜ。抵抗なくできる俺は、やっぱり3歳児だ。 こういったギャグを作中にちょくちょく挟んで貰えると読者としては読みやすいです。 作者さんの心遣いに感謝★ ^^¥
子供は苦い薬が嫌い そうですよねぇ、だから甘味をつけた水薬やチェアブル錠なんかが開発されるんですよね(・∀・)
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