3歳児の遊び(正)
やっぱり可愛い。
「殿下! リリアス殿下! どこですか!?」
ニルが俺を探している。はい、ここです。て、出るわけないじゃん。
俺は今、城の中庭で絶賛かくれんぼ中だ。
ニルには言ってないけど。
勝手に隠れてるんだけど。
オクソールは相手してくれないけど。でも、こっちは見るなよ。
「おい、リリ。ニルが探してるよ?」
「るー、しぃー! 見つかりゅじゃない!」
「隠れてんのか?」
「うん」
「何かやらかしたのか?」
「なんでよ」
「いや、またニルに叱られるから隠れてんのかと思ってさ」
「ちがうよ! かくりぇんぼなの!」
「殿下!」
あー! 見つかってしまったぜ!
「もう! るー! 見つかったじゃない!」
「殿下! 突然隠れるのは止めて下さい!」
「あい。ニリュごめんなさい」
「あらあら、リリ。また、叱られてるの?」
「かーさま!」
俺は、走っていって母に抱きついた。
「かーさま! かくりぇんぼしてました!」
「ええ!? 殿下、かくれんぼだったのですか!?」
「うん、ニル! 見つかったから今度はボキュが鬼ね! ニリュ、かくりぇてー!
いーち、にいー、さーん!」
「えッ!? ええー! 殿下!」
「ニリュ、早くかくりぇて!!」
「まあ! ホホホホ! リリ、母様もまぜてくれるかしら?」
「あい! かーさまもかくりぇてください! いきまーしゅ! いーち! にぃー!」
「ニル、隠れるわよ! ほら! 貴方達もよ!」
母のお付きの侍女や護衛の騎士も巻き込んでかくれんぼだ。
「……はーち! きゅーう! じゅーう!」
俺は、テテテテ〜と走って母やニル達を探す。
「あ! みっけー!」
まずは、花壇の生垣の向こうに護衛の騎士見っけ!
「あー、見つかってしまいましたー!」
「エヘヘへ!」
また、テテテテ〜と走って探す。四阿の柱の陰にメイドさん見っけ。
「あー! メイドさんみっけー!」
「きゃあ。見つかりましたー!」
「エヘヘへ!」
また走って、見つけてまた走る。
「ありぇ〜、かーさまとニリュがいない」
「殿下、もっとよく探されてはいかがですか?」
「ん〜。オク、わかった」
トテトテと探しまわる。
「いないー! かーさまー! 二リュー!」
まだ見つけられない。
「殿下、呼んでも出てこられませんよ? 見つけださないと」
「オク、分かってりゅ! うぅ〜、いない〜。う……うぅ……か、かーしゃまぁ〜! ニーリュ〜! えぇーーん! いにゃいぃー!! えーん!」
「まあ! リリ!」
「殿下!」
あ、出てきた! 庭園の花の間から顔を出している。
「かーさまとニリュみっけー!!」
「まあ! リリずるいわ」
「殿下、それはずるいです」
「エヘヘへ。だってさびしくなったんだもーん」
「もう! リリったら!」
母に抱き上げられちゃったよ。
「キャハハハ! かーさまー!」
「リリは何をしているんだ。それはズルだろう」
「あ! とーさま!」
「エイルとニルはリリには弱いね」
「陛下。リリはずるいのですよ」
「アハハハ、見ていたよ。リリは賢いねー!」
「キャハハハ! とーさま! もっと高くです!」
3歳の俺は父に抱き上げられてご機嫌だ。どこにいたのか、ルーが父の肩にとまった。
「リリは知能犯だな」
「ルー様。おられたのですか」
「ああ、見ていたよ」
「るー! 見て! めちゃ高い!」
父が高く持ち上げてくれて、いつもは見上げている父や母達が俺より下に見える。
「無邪気だなぁ、おい」
ルーがパタパタと飛んで俺の肩にとまった。
「るー! 楽しいよ!」
「そりゃ、良かった!」
「キャハハハ! あ! とーさま! おりょしてくだしゃい!」
「おや、リリもうおしまいか?」
「あい! おります!」
下ろしてもらった俺は城の方へ走って行く。
「殿下! どちらに!?」
「テューにーさま! フォリュにーさま!」
「あ、リリ!」
フォルセが気が付いて走ってきてくれた。
「リリ、何してたの? あ、父様!」
「フォルセ、リリ」
「テューにーさま!」
「走ったら転ぶぞ」
「だいじょーぶです! テューにーさま、フォリュにーさま。かくりぇんぼしてました!」
「そうなの? みんなで?」
「はい! かーさま達とニリュとです!」
「じゃあ、リリ。僕と追いかけっこだ。リリが鬼ね! つかまえて!」
「あ! フォリュにーさま! ずりゅいです!」
走り出したフォルセを追いかけて走る。テテテテ〜と妖精さんを追いかける。
「キャハハハー!」
「リリ! こっちこっち!」
「キャハハハ! アハハハ! にーさま! はやいです!」
「あー、エイル。あれはリリ転ぶね」
「はい、陛下。時間の問題ですわね」
「オクソール様! 殿下が!」
「ニル殿、男の子です。多少転けても」
「もう! オクソール様! 殿下! そんなに走ったら転けますよ!」
ニルが俺を追いかけてくる。
「キャハハハ! ニリュもきたー!」
「リリー! こっちだよー!」
「にーさま! アハハハ! キャハハハ……あッ!」
「あー、ほら転けた」
「陛下、泣きますわよ」
「ああ、泣くね。手を広げて笑いながら顔からいったね。あれは痛いよ?」
「う……いたい。うぇ……びぇーー! かーさまー!!」
「殿下! だから言いましたのに!」
ニルが俺を起こしてくれる。
「あーあ、リリ転けちゃったね」
フォルセも俺の服の汚れをはたいてくれている。
「にーさま! いたいれしゅー! えーん!」
「殿下、男の子です。転けた位で泣いてはいけません」
「オク……だって、いたいー! えーん!」
「転けないように鍛えますか?」
「え……いや! 泣かない! ヒック」
オクソールは3歳児に何を言ってるんだよ。甘えたい盛りなんだよ。
「エイル、平和だね」
「はい、陛下。幸せですわ」
「ああ、そうだね」
「リリを見ていると飽きないね」
「ええ、ルー様」
ある日の昼下がりの城の光景だ。
見ていたのは、そこにいた従者達だけでなく、その場を偶然通り掛かった者達、等間隔に立っている兵士達、たまたま声が聞こえて窓から見ていた者達などなど。
結構な数の人達が微笑ましい光景を見ていた。皆の笑顔の先には第5皇子のリリアスがいる。
本人はまったく気がついていない。可愛い無邪気な3歳児のリリのお遊びでした。
タイトルに(正)とあります。さてさて?
誤字報告ありがとうございます!
可愛かったよ〜と思われる方、そうでない方も、評価とブクマ宜しくお願いします!