もしも……フォルセ編
真面目なお話の後には、ちょっとおふざけしたくなるのです。書きたかったのです。
「リリ、リリ」
「ん……あ、フォルセ兄さま」
「待たせちゃった? こんなところで寝ていたら駄目だよ?」
「すみません、寝てましたか?」
「スヤスヤと寝てたよ。さあ、行こう」
「兄さま、どこに行くのですか?」
「リリ、寝惚けてんの? 鬼◯の刃展だよ。チケットとるの大変だったんだよ。帰りにジャン◯ショップに行こうって言ってたじゃない」
「え……? 鬼◯?」
「ほら、行くよ」
何だ? 何でだ? ビルじゃねーか。日本じゃねーか! なのに何でフォルセと一緒なんだ? 俺、10歳のまんまじゃん!
「リリ! 早く! 電車出ちゃうよ!」
「兄さま! 待って!」
とにかく付いて行こう。何が何だか分からないぞ。夢でも見てんのか?
日本にフォルセがいる訳ないだろ! しかも、何で俺はリリのままなんだよ!
「はぁ、間に合った。ねえ、リリ。鬼◯はさあ、やっぱ絵が綺麗だよね。今は呪術◯戦も人気だけどさぁ、僕は鬼◯の方が好きだなぁ。映画なんて2回も見ちゃった」
はぁ!? 呪術◯戦だと!? 映画だと!? どうなってんだ!?
「リリはどっちが好き?」
「え、ボクはどっちも好きです」
「あ、ここで王道ワ◯ピースとか言ったら駄目だよ。どっちかだからね」
マジ、意味分かんねー。俺、どっちもあんま真剣に見た事ねーよ。鬼◯はちょっと泣いちゃったけどね。てか、なんで日本にいるんだよ。
日本にいても、フォルセは妖精さんのままだよ。超目立ってんじゃん。
「リリ、どうしたの? ボーッとして。気分悪い?」
「いえ、兄さま。そんな事ないです。兄さまは何処にいても妖精さんだなぁ、て思ってました」
「何言ってんのー! リリだってめちゃ可愛いよ? ほら、周りの女の子たちがリリを見てるよ」
「兄さま、あれは僕じゃなくて兄さまですよ?」
何言ってんだよ。妖精さんバリに可愛いフォルセを見ているに決まってるだろう?
ヤベーな。フォルセが変なのに声かけられない様に気をつけないとな!
「やだ、リリ。どうしたの? 顔が怖いよ?」
「え、フォルセ兄さまを守らなきゃと思って」
「何から守るんだよー! もう、可愛いなぁー!」
止めてくれ。こんな電車の中で抱きつかないでくれー!
「あ、降りなきゃ」
フォルセは俺の手をとってサッサと電車から降りる。
「少し前はね、ハ◯キュー!! 展もやってたんだって。いきたかったよー!」
あー、はいはい。それは何回も見た。ローリングサンダーだな!
「あ、それはボクもです」
「ね、残念だよ」
いやいや、どうなってんだ? フォルセから日本のアニメの話を聞くなんて違和感半端ねーよ。
それから、俺はフォルセに連れられて鬼◯の刃展に行き、ジャン◯ショップにも行った。楽しかった。超楽しかったんだよ。55歳の俺がだよ。マジやべーよ。
「リリ、ちょっと画材屋さんに寄ってもいい? 直ぐそこなんだ」
「はい、兄さま」
俺は全く分からないので、おとなしくフォルセの後を付いていく。
「僕はずっと油絵だったでしょぉ? 最近ね、水彩画を始めたんだ」
ほうほう。なるほど。
「でね、見切り発車で始めちゃったからさぁ、絵の具が全然足らないんだよねぇ」
ほうほう。なるほど、なるほど。
「兄さま、彫刻もやってませんでしたか?」
「うん。今はちょっと飽きちゃって」
「え? 飽きたのですか?」
「うん。そーなんだ。何て言うのかなぁ〜、こう、内から湧き出るような情熱がね、出てこなくてさぁ」
ほうほう。よく分からんが。
「でね、初めて水彩画にチャレンジしてみたらさぁ」
と、フォルセの水彩画に対する情熱を、ほうほうなるほどと聞きながら画材屋さんで色々と購入し、ちょっと疲れたので小洒落たカフェのテラス席でお茶してる。
「ねえ、君たちは兄弟なのかな?」
ん? 何だ? スーツ姿だけど、サラリーマンじゃないよな。
「おじさん、何?」
フォルセが慣れた感じで対応している。
「僕は、こういう者なんだけど」
名刺を差し出された。何だ? 出された名刺を見ると……お、芸能事務所か。スカウトってやつか?
「ねえ、君たちちょっとだけ撮影させてくれない?」
「え、嫌だけど」
あら、フォルセ。本当に慣れてるね。
「兄さま?」
「ああ、リリ。よくあるんだよ」
「あ、やっぱよく声かけられたりしてる?目立つからなぁ。もう何処かの事務所に所属していたりするのかなぁ?」
「いや。興味ないから。悪いけど」
「そっちの弟くん? なんて、お人形みたいだよね。その髪、もしかして地毛なの?綺麗だねー」
俺かよ。俺より、フォルセだろ。こんな妖精さんは他にはいないぜ?
「あのねー、興味ないって言ってんでしょ! はい、さようなら!」
フォルセが名刺を突き返した。
「うわー、冷たいね」
スカウトらしきおっさんがスゴスゴと引き下がった。
「あ、兄上から電話だ。もしもし? クーファル兄上?」
フォルセがiPhon◯使ってるぜ。なのに、クーファル兄上とか言ってる。
違和感ありまくりだわ。
「リリ、クーファル兄上が近くにいるから迎えに来てくれるって。そこの道で待ってなさいってさ」
「はい。兄さま」
マジかよ。クーファルまで登場かよ。
「兄さま、クーファル兄さまは車ですか?」
「リリ、何言ってんの? 当たり前じゃない。秘書のソールの運転だよ。良かったね」
「え? 何で良かったんですか?」
「えー、リリどうしたの? ソールだと安全運転だけど、クーファル兄上だと運転が荒いからさぁ、怖いじゃない?」
そうなのか? クーファル、運転荒いのか? 普段は冷静沈着だから意外だよ。
ハンドル握ると人格変わるタイプか?
「あ、リリ。あそこでアイス買おう! 食べながら待っていようよ」
「はい、兄さま」
「フォルセ、リリ!」
「あ! 兄様!」
「テュール兄さま!」
げげ! テュールまで登場だ!
「クーファル兄上が迎えに来てくれるぞ」
「さっき電話をもらったよ」
「テュール兄さまもアイス食べますか?」
「リリ、もう兄上着くぞ?」
「え? 兄様そうなの? じゃあ、アイスは止めておく方がいい?」
「車でこぼさなきゃ良いんじゃないか?」
「リリ、こぼしちゃ駄目だよ?」
「え、フォルセ兄さま。ボクですか?」
「お、アイスか?」
「フレイ兄さま!」
げげげ! フレイまで登場だよ。
「兄上、今帰りですか?」
「ああ、テュール。クーファルが拾ってくれるらしいぞ。飯食って帰ろう、て言ってたんだ。あ、俺がアイス買ってやるよ。好きなの選べ」
「やった! リリやったね!」
「はい、フォルセ兄さま! フレイ兄さまありがとうございます!」
「僕、ダブルにしよーっと」
「あ、フォルセ、俺も!」
「リリはどうするんだ?」
「フレイ兄さま、ボクはシングルで」
――キャー!
――何? 超カッコいいー!
――モデルなの!?
「あ、クーファル来たな」
「え? フレイ兄さま?」
「あの女子の声だよ。きっとクーファルだ。あいつしかいないな」
日本でもクーファルはモテモテなのかよ。
「リリ! フォルセ! テュール! フレイ兄上! 早く! 逃げるよ!」
なんだなんだ? クーファルどうした?
「あ! ヤベッ! 行くぞ! リリ!」
「え? え? フレイ兄上!?」
俺はヒョイとフレイに抱えられた。俺、10歳なんだけど。アイス持ってんだけど。
クーファルの後ろを見ると、女子達が追いかけてくる。
「マジ!? フレイ兄さま! 車と反対に走ってます!!」
「えッ!? リリ、マジか! いやもう引き返せねーよ!」
「もう! なんで車を降りてきてんの!? クーファル兄上が来るといつもこうなんだから!」
「アハハハ! クーファル兄上! 早く!」
「フォルセ! テュール! 待ってくれ!」
「あ! あーッ! フレイ兄さま! アイスが!」
「リリ! アイスどころじゃないぞ!」
「アイスが落ちますーッ!!」
「あー! もったいないぃッ!!」
「リリアス殿下? どうされました?」
「あ……ニル?」
「はい、ニルですよ。」
あー! 夢かよー! おかしいと思ったんだー! 変にリアルだったじゃん! 夢かよー!! アイス落としちゃったよー! 夢だけど!
「リリアス殿下?」
「ううん。なんでもない。ニル、りんごジュースちょうだい」
「はい、殿下」
今日も平和なリリアスですッ!
読んで頂きありがとうございます!
本編は完結してますが、おもしろかったよ〜と思われた方はブクマ、評価を宜しくお願いします!
目指せ!トップ10入り!!