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初代皇帝 1


 ――ピカッ……キュイーーン!


 突然、巨大な白い光が空から大地に降り注いだ。


「何だ! 何だ、今の光は!?」

「アーサー様!」

「エレック! 何だ今のは!?」

「分かりません! 確認に走らせましたからお待ち下さい!」


 そう叫んで、従者らしき青年が駆け出していく。


 

 まだ、アーサヘイム帝国として建国される前の辺境の地です。

 大陸の最北部にあるケブンカイセ山脈から南端のボスコニ湾に流れ込んでいる二つの大河、西端はリーセ河、東端はノール河に挟まれた大陸の南端、ボスコニ湾近くの地を代々治めているサウエル伯。その何代目だろうか。

 今は24歳の若者が治めていた。

 アーサー・サウエル。ブルーシルバーの髪に蒼色の瞳。精悍な印象の青年だ。

 その、アーサーの側近を務めているのが、エレック・ガーフレット。

 同じ位の歳だろうか。この青年も鍛え込まれた身体をしている。



「アーサー様! エレック様!」

「どうした!?」


 武装をした兵達が慌てて走ってきた。


「それが! その……! とにかく見て下さい!」


 何だ? アーサーと、エレック二人が顔を見合わせながらも後を追う。


「イッテー! 痛いっつってんだろ! 離せよ! 俺、何もしねーよ!」


 そこには、黒髪黒目の見た事もない服装をした若い男が武装した兵達に抑えられていた。


「先程の光の元らしき場所におりました。ですが、荷物も馬もなくそれにこの格好ですので不審に思い連れて来たのですが、その……」

「何だ? どうした?」

「言っている事が、その……訳が分からず」


 訳が分からないだと? どう言う事だ?


「何処から来たんだ? 馬に逃げられたのか?」

「はぁ!? 馬って何だよ! 中世かよ! 変な格好しやがって! とにかく離せよ! イテーんだよ! クソッ!」


 間者ならあの様な派手な登場はしないだろうし。まあ、危険はないか?


「とにかく、離してやれ」

「しかし! アーサー様!」

「はぁ!? アーサーだと? 円卓の騎士かよ! エクスカリバーかよ! ハッ!」


 こいつは何を言ってるんだ?


「何処から来た? 間者ではあるまい?」

「俺は日本人だよ! 間者て何だよ、戦争中じゃあるまいし! ふざけんなよ!」

「ふざけてはおらん。ここは、アーサヘイムの南端だ。まさか、知らないのか?」

「あ、あー?」

「アーサヘイムだ。本当に知らないのか?」

「俺は湖で釣りをしていたんだ。なのに、一瞬白く光ったと思ったらここにいた。何なんだよ。どうなってんだよ。俺、明日外せない実習があるんだよ!」


 確かに、訳が分からん。嘘をついている様でもない。


「ほら、免許証だ。身分証明になんないか?」


 男は小さな皮の入れ物から四角い薄い物を出した。

 何だ、これは!? 材質は何なんだ? これは、文字なのか!? それに、こんなに精巧な絵は見たことがない。


「お前……この地の者ではないな。これは何だ?」


 俺が、この地の者ではないと言ったからか。兵達が一斉に剣を男に向けた。


「いやいや、何だよ! 俺、何もしてねーじゃん!」


 男が両手をあげている。敵意はないのだろう。


「剣をおろせ」

「しかし! アーサー様!」

「いいから」


 兵達が渋々剣を下ろした。が、まだ警戒は解いていない。剣を鞘に収めないでいる。


「お前、名前は? 歳はいくつだ? その黒髪黒目は珍しいな」

「俺は、日生輝。22歳だ。日本人だからな。普通に黒髪黒目だ。お前らの方が珍しいわ。なんだよ、そのキラッキラの髪の色。てか、アニメかよ!」


 何を言っている? 訳が分からない。


「ニホンと言うのは国名か? その様な国はないぞ」

「はぁ!? 何でだよ!」

「ヒナセと言うのは家名か?」

「ああ。輝が名前だ」

「家名があるのなら、貴族か?」

「庶民だよ! 一般ピープルだよ! 貴族なんかいねーよ!」


 貴族がいないだと?


「王の名前は?」

「だぁかぁらぁ! 貴族なんていねーし、王もいない! いる訳ねーだろーが!」


 何だと!? 王がいない!?


「王がいない国などある訳がない」

「いやいや。日本はなぁ、民主主義なんだよ。王なんかいねーの! 天皇はいるけどさ。てか、何なんだよ。

 地球にアーサヘイムなんて国あんのかよ? 俺、聞いた事ねーぞ?」

「アーサヘイムはまだ大陸名だ。大陸の中央に王はいるが、まだ国としてまとまってはいない。チキュウとは何だ? みん、みんしゅ……何だって?」

「え!? マジかよ……!? 俺どこに来たんだ!?」


 急に男が狼狽しだした。


「どうした?」

「お、俺、どこに来たんだ? 家族ともう会えないのか? 何なんだ? 何なんだよ!?」


 今度は、頭を抱えて泣き出した。

 男の話が本当なら、全く別の地域から来たのだろう。しかし、本人がどうやって来たのかも理解していない。

 身につけている物、持っている物を見ると此処よりもずっと文明が発達しているのだろう事が分かる。俺は、興味を持った。


「アキラだったか。腹は減ってないか?」

「それどころじゃねーよ」

「茶を出そう。来ると良い」

「アーサー様」

「エレック、ネヴィーを執務室に呼んでくれ」

「承知しました」


 俺の後を大人しく付いてくる男。

 22歳と言ったか。俺とそう変わらないが、若い印象だ。22歳と言えば、もう子供の一人でもいてもおかしくはない。

 とにかく、執務室に連れて行き茶を出した。

 裕福な家で、ちゃんと教育を受けて育ったのか? 口は多少悪いが粗野ではない。出した茶も上品に飲んでいる。


「少しは落ち着いたか?」

「あ? ああ。少しな。お前、アーサーてのか?」

「ああ。そうだ。この地を代々治めている。アーサー・サウエルだ」

「貴族なのか?」

「まあ、な。伯爵位だ」

「マジかよ……ここは、地球だよな?」

「いや、何だ?」

「はあ……意味分かんねー」

「アーサー様、お連れしました」

「ああ、入ってくれ」

「失礼致します。どうなさいました?」


 エレックに連れられて、ネヴィーが入ってきた。


「アキラ、俺の妻だ。ネヴィーアと言う」

「ド、ドレス……!? マジか……!」

「アーサー様、このお方は?」

「ネヴィー、見てくれないか」

「宜しいのですか?」

「ああ。アキラ、話が見えないんだ。お前を鑑定してもらうが構わないな?」

「か? 鑑定? 何だそりゃ?」

「スキルだ。ネヴィーは鑑定を持っている。その人が持つスキルが見られる」

「ますます意味わかんね……好きにしてくれ。痛いのは嫌だぞ」

「痛くはない。ネヴィー、頼む」

「はい、分かりました……鑑定」


 ネヴィーアが男を鑑定した。信じ難い事が分かった。俺だけでなく、エレックも鑑定した本人のネヴィーアでさえも、信じられない様だった。


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