レイの呟き 2
読んで頂きありがとうございます!
このお話は、最終章前に投稿するつもりでしたが、テュールの婚約を優先したのでボツにしていたものです。
レイの気持ちがこもってます。
宜しければどうぞ読んでみて下さい。
最近の殿下は毎日魔石に付与しておられる。僕はそれをジッと見る。どうやってるんだ? 何でこんなに出来るんだ?
殿下を見ていると、大した事ない様に見える。実際、殿下は僕達と話しながら一度に数個同時に付与している。
僕も教えてもらった。全然出来ない。1個ずつでさえ、出来ない。
殿下にマジックバッグの作り方を教わった。
「あー、マジックバッグはまだ無理だね。空間魔法が使えてないや」
殿下に言われた。殿下はあんなに簡単に作っているのに。僕は全然出来ない。
辺境伯領にご一緒する事が決まって、殿下は僕とアースに大小2個のマジックバッグを下さった。
父と母が大騒ぎだった。
こんな高価な物を殿下から頂くなんて! と、父は殿下にお礼状を書いていた。
僕だって、絶対に作れる様になってやる。
殿下はご自分の飛び抜けた才能を分かっていない。殿下の考え方もそうだ。とても10歳の子供とは思えない。大人顔負けだ。
なのに、時々天然さが出る。
やたらとりんごジュースを飲み過ぎて、侍女のニルさんに叱られていたりする。
それに殿下は涙もろい。
リュカさんとオクソール様の騎士の叙任の時も、披露パーティーでボロボロ泣いていた。
皇帝陛下に抱き上げられて、顔を隠して泣いていた。あんな所は普通の子供なんだけどなぁ。
10歳になって、殿下にも側近候補の人がついた。
ラルク・ナンナドル。ニルさんの甥だそうだ。僕達より1歳上だ。
専門の教育と鍛練を受けた人だ。強いらしい。それでも殿下の方が強いとニルさんが言ってた。そうだろうな。
だって、何年もオクソール様のシゴキを受けているんだから。
そして僕達は、辺境伯領に行って驚いた。なんだ、この歓迎は!?
沢山の領民が辺境伯様のお邸の庭に集まっていた。皆、リリアス殿下が来るのを待っていたんだ。口々にリリアス殿下の名を呼んでいる。
凄い。アースと2人で圧倒されてしまった。
殿下がずっと会いたいと仰っていたフィオン様のご子息アウルース。
殿下は嬉しそうに抱きしめておられた。次期辺境伯様の子供もだ。
アウルースは殿下の側を離れようとしない。殿下はそれも嬉しいみたいだ。
辺境伯領は、思っていたよりもずっと豊かだった。料理も見た事がない物ばかりで、とても美味しくてアースは毎日食べ過ぎていた。
殿下が海に調査に行っている間等、僕とアースが留守番の時に辺境伯様が色々と案内して教えて下さった。
リリアス殿下が5歳の時に森の調査をされた事。その時にユキと出会ったそうだ。
しかも、ユキの命を助けたなんて知らなかった。
殿下が発見された食べ物。
殿下が発見された魔石。もうキリがない。辺境伯領は殿下に救って頂いたとさえ、言っておられた。
殿下が3歳の時に花を咲かせた樹も見せてもらった。突然、白い蕾が沢山できて花が咲き出したので驚いたと。
殿下は帝国には無くてはならない人だと言ってらした。
なのに、ダンジョン攻略に行かれる事になった。フレイ殿下も、リリアス殿下が行く事が当たり前の様に話される。
なんでだ? 殿下はまだ10歳なんだよ?
10歳の子供にダンジョンなんて、普通じゃないだろう。なのに、殿下も当たり前の様に参加されている。
「殿下はお強いですし、オクソール様やリュカ、シェフ、ユキもいますから心配ありませんよ」
と、ニルさんが言う。
そうなんだろうけど、僕は心配だった。フィオン様の子供のアウルースもだ。
殿下が帰って来られるまで、アウルースはズッと外で待っていた。殿下のお母上もだ。
殿下が帰って来られて、アウルースは泣きながら殿下の手を離さなかったらしい。
夕食まで殿下はアウルースと一緒に寝ていらした。夕食でやっと僕達は殿下と話せた。
いつも通りの殿下だ。怪我もされていない。良かった。
ラルクは一緒に行けなくて悔しがっていた。顔には出さなかったけど、僕だってアースだってそうだ。
悔しい。もしも、次があるなら次は絶対にご一緒するんだ。僕達だってお守りするんだ。て、アースも絶対に思ってる。
だって、アースだって口には出さないけど、悔しく思っているのが分かっていたから。
今回は、ご一緒できなかった。でも、殿下は無事に帰って来られた。なら、僕達はいつも通りでいよう。
労って、惚けて、いつも通りの友人でいるんだ。それが殿下のお心をお守りする事になるんだ。と、父が言っていた。
僕はまだよく分からない。でも、普段通りでいようと思う。
ダンジョン攻略があったせいで、帝都に帰る日が延びた。フレイ殿下がそう決められた。
早く帰りたい訳ではなくて、まだまだ辺境伯領にいたい気持ちの方が強い。アースもそうだ。
そんな時に、領主隊や騎士団がまた裏で何かしていた。
障害物競走と言うのだそうだ。わざわざ大掛かりな障害物を用意してあった。何を思ったのか、殿下も参加される事になった。いや、僕はいいよ。身体を動かすのは苦手だ。
騎士団を目指していると普段から公言しているアースはやる気だ。運動神経が良いからな。アースなら出来るだろう。
と、思っていたのにアースのヘッポコぶりったらなかった。違う意味で驚いたよ。流石に走るのは早いけど、マトモに障害物をクリアできていない。
殿下は違った。本当に同じ歳なのか? またびっくりした。
身のこなしがアースとは全然違う。自分の身体を思い通りに動かせるんだ。僕もそうなりたいと思ったけど、僕は無理。
そんな事とうの昔に知っている。だから僕は僕の出来る事をするんだ。
魔法だって本当は得意じゃない。好き以上で得意未満て感じだ。でも、僕は自分の弱さを知ってる。不甲斐なさも知ってる。
勿論、殿下に並びたい。横に立っていたい。しかし、僕は殿下のストッパーになりたい。
殿下は時々先走りされる時がある。ご自分が傷つく事なんて全く考えずに。だから、僕は殿下を止められる人間になりたい。
自分の弱さを知っているから、不甲斐なさを知っているからこそ出来る事だと思うんだ。
また殿下は城を空けられる事になった。今度は北の鉱山に行かれるそうだ。
無事に戻られる様に祈る。
また、泣いておられるのではないかと、心配してしまう。
自分の事より、周りの事を優先させる殿下。
自分の価値を分かっておられない殿下。
無茶されていない事を願う。
まだまだ、僕達は子供だ。この先、どんな風に成長していくんだろう。
叶うなら、ずっと殿下に関わっていたい。殿下の近くにいられる様、努力しよう。たとえ一歩先が苦しくて辛い闇だろうと、もう一歩先に光がある事を信じて。
何度でも立ち上がってやるさ。
完結後にも関わらず、ブクマ、評価、いいね!ありがとうございます!
最高132000PVまでいきました!ビックリです!
評価頂いた方々、有難う御座います!
異世界、ファンタジー、日間ランクで最高13位でした!本当に有難う御座います!
本編は完結しましたが、少しずつ番外編を投稿していきたいと思ってます。
これからも、ブクマ、評価を宜しくお願いします!