はじめてのおつかい 1
リリの小さい頃を書きたかったのです!
本編には全く関係ありません。
投稿するのも申し訳ない位なのですが、宜しければ読んでみて下さい。
「リリ! リリ! 走ったら駄目よ!」
「かあしゃま! はやくれしゅ!」
小さな皇子が城の中をトテトテとかけて行く。直ぐ後ろには護衛のオクソール、侍女のニル、そして少し離れて母が付いて行く。
小さな皇子、リリアスが目指すところは父の執務室。
「とうしゃまにおねがいしてぇ、しょりぇかりゃぁ……えっとぉ」
「殿下! 走りながら考えていると転けますよ!」
「あッ!!」
案の定、オクソールの言う通り躓いて転けかけてオクソールに抱き抱えられた。
「殿下、危ないです」
「エヘヘー、オキュ、ありあとー!」
「陛下の執務室に行かれるのですか?」
「うん! おにぇがいがありゅの!」
「はあ、歩いて下さい。でないと、私が抱っこします」
「あい。オキュありゅくよ」
「はい」
オクソールに下ろしてもらい歩き出す。ポテポテと。しかし、だんだん早くなってまた走り出してしまう。
「キャハハハ!」
「殿下!」
リリ達が通り過ぎて行くと周りの者達が、クフフと笑顔になる。
可愛い無邪気な小さな皇子の笑顔が城の中を明るくする。
「とーしゃま!!」
バタン! と、大きな音を立てて父である皇帝の執務室のドアを開けて叫ぶ。
「リリ、どうした? 今日は何かな?」
「あい! とうしゃま! リリはおちゅかいがしたいりぇしゅ!」
フンスッ! と、何故か自慢気に腰に手を当てて胸を張っている。
「陛下、またお邪魔をして申し訳ありません」
「エイル、構わない。リリが毎日何をするのか楽しみだ」
どうやら、毎日父の執務室に来ているらしい。
「とうしゃま、おじゃまれしゅか?」
少し悲しそうな顔をして父の顔を覗きこむ。コテンと少し顔を傾けてウルウルした目で見つめられると、誰が邪魔だと言えるだろう?
「邪魔じゃないさ。リリがこうして来てくれるのを楽しみにしているよ」
「あい!」
ビシッと片手を上げている。
「リリ、お使いは何をするんだい?」
「わかりましぇん!」
え、分からない?
「リリ、何をお使いするのか分からないのか?」
「あい! とうしゃま、何かないりぇしゅか? リリはおちゅかいがしたいりぇしゅ!」
「リリ、お使いはまだ早いわ。今日は戻りましょう」
「いや! かあしゃま、いやりぇしゅ!」
短い手を身体の前で組んで、頭をブンブン左右に振っている。あらら、振った勢いで少しよろけているぞ。
「グフッ、ん゛ん。リリ、じゃあ父様のお使いをしてくれるかな?」
「あい! しましゅ!」
「じゃあ、今からお手紙を書くから、皇后に届けてくれるかな?」
「あい! おまかしぇりぇしゅ!」
「じゃあ、少し座って待ちなさい」
「あい!」
そう返事をして、オクソールに両手を伸ばす。抱き上げて座らせろと言う事だ。
「リリアス殿下、何か飲みますか?」
「せてぃ、りんごじゅーしゅがいい!」
「はい。お待ち下さい」
「セティ、りんごジュースなんて用意してないでしょう?」
「エイル様。毎日殿下が来られるので、ご用意しております」
「まあ、ごめんなさいね」
「いいえ。とんでもございません」
セティと呼ばれた皇帝の側近は抜かりが無い。リリアスの前にりんごジュースが置かれる。
「ありあとぅ!……コクン……おいしぃー!」
「ようございました」
「うん。せてぃありあとぅ!」
「さあ、リリできたよ。皇后の部屋は分かるかな?」
皇帝は一通の手紙を小さな皇子に手渡した。
「あい! 分かりましゅ!」
「じゃあ、届けてお返事を貰ってくるんだ」
「あい! とうしゃま!」
皇子が早速ソファーから下りて部屋を出て行こうとするので、母とオクソールが付いて行く。
「らめりぇしゅ! ちゅいてきたりゃだーめ!」
皇子が来るなと小さな手で制止した。
「リリ、まさか1人で行くつもりなの?」
「あい! ボキュのおつかいりぇしゅ! かあしゃまもおきゅもにりゅもらめ!」
「リリ、お城は広いわよ?」
「らめりぇしゅー!」
「殿下、階段だけでも」
「おきゅ、らめ!」
小さな両手を前に出して、駄目だと言い張っている。
「リリ、1人で大丈夫かい?」
「あい! とうしゃま!」
「お手紙をなくさない様にちゃんと持って行くんだよ」
「あい!」
「よし、じゃあ頼んだ」
「あい! おまかしぇ!」
小さな皇子が、意気揚々と部屋を出て行く。
「オクソール、こっそり後を付いていってちょうだい」
「はい。エイル様」
オクソールが、素早く部屋を出て行く。
後を付けるオクソールと、ニル。
「ニル殿、私1人で大丈夫ですよ?」
「いえ、私も行きます。気になって待っていられませんから」
なるほど。侍女は心配でジッと待っていられないらしい。
そんな事など全く知らないリリアス皇子。テテテテ〜と城の中を駆けて行く。
「まあ! リリアス殿下、お一人ですか?」
すれ違ったメイドに声をかけられている。
「うん! とうしゃまの、おちゅかいなの!」
「お気をつけ下さい! 転けますよ!」
「らいじょぶー!」
テテテテ〜と走り抜け、1階の中庭沿いの廊下に出た。
「いいお天気らぁ! お花がきりぇい!」
あらあら、中庭の花の庭園に走って行ってしまいました。皇后の部屋はそっちじゃありませんよ。
「このお花は何てお花?」
とうとう花の前に座り込んでしまいました。
「おや、リリアス殿下。お一人ですか?」
庭師らしき男性が声をかける。こっそり付いてきているオクソールとニルにも気付いている様だ。
「うん! このお花きりぇいだね!」
「今が盛りですからね。皇后様のお好きなお花なのですよ」
「へぇ〜! 持って行ったりゃ皇后しゃまはうりぇしいかなぁ?」
「そりゃあ、お喜びになられるでしょう。お持ちになりますか?」
「うん!」
庭師に花を切ってもらう。庭師は小さな皇子の手でも持てる様にほんの数本だけ切って手渡した。
「ありあとう!」
「いいえ。お気をつけ下さい」
「うん!」
また、走り出す小さな皇子。
大事そうにお花とお手紙を両手で持ちトテトテと走って行く。
廊下を走り階段を1段ずつ登り、また廊下を走る。
小さな皇子の後から、見つからない様に影に隠れながら付いて行くオクソールとニル。
目的の皇后の部屋まであと少し。