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386/442

386ー父親

投稿が遅くなりました。

申し訳ないです!

ちゃんと、ルビが出来ているか少し不安。

「リリ、初代皇帝の思いだ」


 俺は、ゆっくりと小箱を開けた。

 中には一通の手紙と、小さなカードが入っていた。


「リリは転生だったが、初代皇帝はそのまま転移だったんだ。国が魔物で荒らされていたから、成長を待っている時間がなかった。だから、身体も記憶もそのままこっちの世界に渡ってきた。

 当時、この世界に来た時に持っていた物の一つだ。もうそれしか残っていない」


 これは……運転免許証じゃないか!


「え……嘘だ」


 俺は、目を見張った。信じられなかった。だって……


「だって、親父は生きていた! 医者として生涯を全うしたんだ! 何で!? どうなっているんだよ!」


 その免許証には、若い頃の親父の写真があった。日付を見ると、まだ俺が産まれる前だ。いや、結婚する前だ!


 免許証の写真には、確かにあの豪快だった親父の面影があった。若い頃、優柔不断だった俺に、喝を入れてくれた親父だ。

 俺は、恐る恐る手紙を読む。親父らしい短い文だった。

 いきなり、初っ端から謝っている。ただ、すまないと。なんだよ。謝るなよ。


『すまない。

 俺がこの世界に来た事で、縁が出来たそうだ。

 これを読んでいる俺の子孫に願う。

 どの世界であろうと、

 どの人種だろうと、

 どの種族だろうと関係ない。

 手が届く範囲だけでもいい。

 救える命を諦めないで欲しい。

 宜しく頼む』


 確かに親父の名前が書いてあった。懐かしい日本語だ。漢字だ。何が、宜しく頼むだよ。


日生ひなせ あきら

 それが、初代皇帝のリリの世界での名前だ」


 意味が分からない。確かに親父は生きていた。でないと、俺が産まれてないだろう? それに、家族で葬式をして送ったんだ。

 そうだ。俺のあの事故の次の日には、家族で墓参りに行く予定だった。

 確かに親父は78歳まで生きていたんだ。


「ルー、意味が分からない」

「転移だったと言ったろう? 初代皇帝はこの世界で55歳まで生きた。そして、元の世界に帰したんだ。身体を戻して魂ごとな。元の世界で、丁度1年後にだ」


 1年後? 何だ? 何だっけか……何か言われたんだ。

 

「あッ……! お袋が、湖に近付くなと、気をつけろと言ってた……」


 お袋は何か知っていたのか? いや、そうだ。昔、俺も祖母ちゃんに聞いた事がある。俺から見た祖母ちゃん、親父の母親だ。


 親父は若い時、研修医時代に1度行方不明になっていた事があるそうだ。

 俺が車ごと落ちた湖。昔、そこに魚釣りに行った親父が戻らず丸1年行方不明だった。

 だからか祖母ちゃんは、あの湖には近付くなと俺達孫に言っていた。

 行方不明だった親父は、1年後に同じ湖で釣りをしていた人に保護された。

 その時親父は放心状態で、しかも何故か見るからに高価そうな服装だったらしい。

 それからの親父は変わった。1年のブランクをあっという間に取り戻し、精力的に仕事に取り組む様になり、海外で医師として活躍していた。

 祖父さんが身体を壊して、実家の医院を継ぐ事になり日本に戻ってきたんだ。

 そして母親と結婚。姉、俺と生まれて2人共医師と言う職業を選んだ。姉さんも俺も、親父の医師としての姿勢を見ていたからだと思う。


 そんな大事な事を、俺は何で忘れていたんだ?

 じゃあ、親父は2度生きたのか? こっちの世界での記憶はあったのか?


「記憶は操作していない。こっちの世界でも、思い出すタイミングを計るだけで消してはいない。リリもそうだろ? そんな状態に、耐えられる精神力を持つのも初代皇帝の血筋だ」

「ルー、本当に?」

「ああ。真実だ。リリの、元の世界での名前は『日生ひなせ 光輝みつき

 皇帝が、元の世界でもしも息子が産まれたとしたら、その名前を付けたかったと言っていた。

 女の子なら、『結輝ゆずき』どっちも光の意味がある文字を使っていると言っていた」


 そうだ。姉さんの名前が、『結輝ゆずき

 俺は、『光輝みつき』だった。


 俺が、獣医師になりたいと言い出した時、親父はこれを言いたかったんだ。

 どっちも救えなんて、無茶振りも過ぎるだろうと思っていたが、そのまんまだったんだ。

 親父はこの世界で、そうやって生きてこの帝国を作ったんだ。どっちも救う為に、多種族多民族の帝国を。


「リリ、もっと大人になってからと思っていたんだ。いくら、魂が大人だと言っても身体は10歳だ。思考も心も引っ張られる。まだ脳も身体も心も未熟だ。なのに、リリは見つけてしまった。自分で見つけたんだ。そう言う事なんだろう」


 何だよ。何なんだよ。中途半端に隠す方が余計にキツイだろうが!

 

「待って、ルー。まさかボクの後にもこっちに来る魂があるの?」


 そうだよ、縁があるんだろ? 俺だけで済まないのじゃないのか?


「こんな事は初めてなんだが、もう1人こっちに来ている。分かるだろう? リリ、予想がつくだろ?」


 何だ? もう、来ている? 俺が分かる?

 兄弟か? 姉さんじゃねーよな? もしも姉さんなら、絶対にフィオンだ。それとも、まさかの母親か?

 いや、違う! 何で……! 何で真っ先に思いつかないんだ! そうだよ! 分かるよ! それしかないじゃないか!

 大きな口を開けて食べる癖、笑い方、そっくりじゃないか!


「ああ。リリ、そうだ」

「アウルース……『日生ひなせ 陽輝はるき

 俺の息子だ。長男だ」


 俺は愕然とした。駄目だ。自分だけならまだしも、息子までなんて耐えられない。

 俺はまだ良いさ。結婚もした。息子も2人できた。55年生きた。

 だが、息子はまだ大学生だ。まだこれからなんだ。何でだよ。何で……!


「アウルは……アウルは思い出してるの?」

「いや、まだだ。だが、本能で分かるのだろう。あれだけリリに懐いているんだ」

「アウルもその内思い出すの?」

「その内な。だが、もっと心が安定してからだ。リリもそうする筈だった。だが、リリは湖に突き落とされて命が危なかった。

 それがきっかけになって思い出してしまったんだ。リリは本当に予想外な事が多かったんだ。僕が加護を授けた理由の一つでもある」


 そんな事はどうでもいい。俺はいいんだ。


「ルー、無理だよ。こんなの、耐えられない!」


 俺は、泣いた。そうしないと、気が変になりそうだった。

 親父、俺は良いから俺の息子に謝ってくれ。息子はまだ若い。まだこれからなのに。


「う……うう……うあぁーーー!!」


 暫く泣いた。ルーは何も言わずに俺が落ち着くのを待ってくれていた。

 泣いていても仕方ない。外では、心配してクーファルが待っている。

 

「ハァ……ルーごめん」

「いや、リリが謝る事はない。でも、リリ。この世界のリリの家族もみんなリリを大切に思っている。家族だけじゃない。リリに仕えている者達もだよ」


 そんな事、分かっているさ。とにかく、今だ。こうなってしまったんだ。

 親父、今だよ。今こそ、俺に喝を入れてくれよ!


明日、2話の投稿で最終話になります。

今迄読んで頂いて本当に有難う御座いました!

もう、終わってしまいますが、ブクマ、評価宜しくお願いします!


私のiPhoneでは、ルビは問題なく表示されていますが、もし読めない等不具合がありましたらお知らせ下さい。


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