383ーシオン先生 2
「でも、リリ殿下。どうやって使うのですか?」
アンシャーリ、それかぁ。どうしようかなぁ? な、シオンよ。
「そうですね。どうしましょうか。まだ、お二人は魔法を使えませんからね」
「シオン殿、危なくないものを覚えるのはどうでしょう? 例えば、クリーンとかライトとかですね。
それに、2人は魔法を使う回数の上限を決めてしまう方が良いかと思います。すべて使い切ってしまうと危険なんですよね」
「そうですね。その方が良いでしょう。大人になって、慣れると感覚で分かるので使い切ると言っても一歩手前で止めますが、お二人はまだ子供ですし慣れていませんから明確に回数を決める事は良いでしょう。
しかし、アウルース君はヒールを覚えて欲しい気もしますが」
「シオン先生!」
可愛い!アンシャーリ、片手を上げてシオンを先生だって! 可愛いすぎるぜ! おじさんがハナマルをあげよう!
「はい、アンシャーリさん」
「回復魔法は光属性魔法しかないのですか?」
「いいえ、そんな事はありません。ウォーターヒールと言って、水属性魔法でも中の上ランク……えっと、普通より少し難しいのですが回復魔法があります。土属性魔法にも、アースヒールがあります」
「ああ、水と土ですか。私、どっちもありません。シオン先生、どうしたら良いですか?」
「アンシャーリさん、魔法とは便利なものです。怪我を治すヒール等は特にそう思うかも知れません。しかし、それだけに拘る事はないのですよ。適材適所……いえ、出来る人が出来る事をすれば良いのです。
ヒールがなくても、ポーションがあります。火属性を使えなくても魔石があります。分かりますか?」
「はい! 先生!」
「はい、よろしい」
さすが、シオン。教えるのが上手だ。
「ああ、そうだ。お二人は、今覚えた身体の中の魔力を動かす練習を寝る前にしましょう。
お腹から頭に、足に手に、指先に。そうやって、まずは動かす練習をしましょう」
なるほど。魔力操作の練習だな。
「自由に動かせる様になったら、次は動かす量です。半分だけ、少しだけと言った感じで動かす量を減らしていきます。
そして、動かす場所も腕、手、指、指先と小さくしていきましょう」
「はい! 先生!」
また、アウルースもアンシャーリの様に手を上げてるよ。この2人は素直だなぁ。
可愛すぎてニヤけてしまう。いかん、笑ってはいかん。2人は真剣にやってるんだ。我慢だ。
「はい、アウルース君」
「それは、何の練習になるのですか?」
「そうですね、例えばアンシャーリさんのお父上は剣に風属性魔法を付与、えっと……つける? て、戦われるのは知ってますか?」
言葉の選択が難しいよな。シオン、気持ちは分かるぜ。頑張ってくれ。
「はい! カッコいいです! わたしも使える様になりたいです!」
「はい、カッコいいですね。あの練習です。これを、魔力操作と言います」
「まりょくそうさ」
「まりょくそうさ?」
「はい。お二人共、お利口ですね。沢山の魔力を一度に使ってしまうと、次が困ります。どう説明すれば良いのやら。リリアス殿下、交代です」
「ええー! シオン、何でだよ!」
「もう、頭が混乱してしまってですね」
ま、気持ちはよく分かる。でもほら、2人が目をキラキラさせてシオンを見ているぞ。
「そうですねー。蝋燭に火をつけるとしましょう。小さな火ですよね。ほんの少しの火で蝋燭に火はつきます。なのに、大きな火の玉で火をつけると無駄ですね。分かりますか?
魔力量も属性と一緒で適量です。その練習になるのですよ。リリアス殿下は、それがとてもお上手です」
どうも有難う。シオンの指導のおかげだよ。
「リリさま、凄い!」
「アウル、僕もシオンに教わったんだよ。そりゃあもう、沢山教わった」
そうさ。これでもか、て位にしごかれたよ。
「シオン先生、凄い!」
「ハハハハ、私ではなくリリアス殿下が凄いのですよ」
「シオン先生も、リリさまも凄いです!」
アウルース、うまいねー。持ち上げ上手かよ。
「それを練習していたら、お父様の様に風の剣を使えますか?」
「アンシャーリさん、使える様になるには身体の鍛練が必要ですね。風の剣を作れても、身体が出来ていないと使いこなせません。アンシャーリさんのお父上は両方出来るから戦えるのですよ」
「あー! リリ殿下の言ってらした鍛練だけでも駄目と同じですね!」
「そうです! 素晴らしい!」
「アーシャ、凄い!」
もう、何なんだ? この子達は。素直で聡くて、オマケに超可愛いときたぜ。俺、マジで泣いちゃうよ? いいかな?
「リリアス殿下、堪えましょう」
「はい、シオン」
シオン、何で分かったんだ!?
俺は連日一日中、アウルースとアンシャーリと一緒に過ごした。時々、下のチビちゃん2人も一緒に遊びながら。
今日は、アウルースの5歳のお披露目パーティーだ。
俺の時は、俺が5歳だったので父と母と一緒に挨拶を受けた。だが毎年、皇族に5歳児がいる訳ではない。普通は、皇帝と皇后、そして皇子か皇女の中から誰かが出席する。
俺の時は、皇后の代わりに母だったが。
「まあ、別に良いけど。でもね、僕基本的にパーティーて苦手なんだよね」
と、ぼやいているのは俺だ。
ニルに、キラキラの衣装を着せられている。人形状態だぜ。マジで。
「殿下、動かないで下さい」
「ニル、僕もう膝丈のパンツは嫌だな」
「まあ、お似合いですのに」
「ニル様、ブーツは白ですか?」
「そうね、ミーリィ。そっちのロングブーツが良くないかしら?」
「はい。可愛いです!」
ほら、ニルとミーリィ2人の着せ替え人形だよ。
「ニル様、髪はどうしましょう? おリボンはこっちですよね?」
「そうね、グリーンシルバーが良いわね。ああ、でも細めのおリボンの方が良いわ」
はいはい、何でも良いよー。
分かる? お披露目パーティーに、今年は俺が出席するんだよ。て、去年も俺だったよな?
「何で毎年僕なの?」
「そりゃあ、殿下。歳が近いからじゃあないですか?」
「ミーリィ、本当に?」
「はい!」
「さ、リリアス殿下。できました」
はい。有難うよ。
「ふぅ……ニル、りんごジュースちょうだい」
「お披露目パーティーの途中で催しますよ?」
「大丈夫だよ。もう、いくつだと思ってんの?」
「では、少しだけ。こぼさないで下さいね」
ああ、りんごジュースまで制限されちゃったよ! りんごジュース位自由に飲みたいよ。