381ーオクソール師匠
「リリアス殿下、ご紹介頂けますか?」
テュールの奥さんのエウリアーだ。
「はい、エウリアー様。初めてでしたっけ?」
「はい」
「アルコース殿、テュール兄様の奥さんでエウリアー様です。エウリアー様、辺境伯次男のアルコース殿です」
「お初にお目に掛かります。アルコース・サウエルです。お見知りおき下さい」
「初めまして、エウリアーです。可愛い子供達ですね」
「有難うございます。兄の長女でアンシャーリと、私の子のアウルースです」
「お初にお目に掛かります。アンシャーリです!」
「アウルースです!」
「まあ! お利口ね。元気だわ」
「エウリアー様、剣の鍛練はよくされるのですか?」
「ええ、アンシャーリ。毎日しているわ。でも、ニルに全然敵わないの」
「ニル凄い! 強いのね!」
「アンシャーリ様、私は普通です」
ニル、また言ってるよ。何を基準に普通と言ってるんだか。まさか、オクソールと比べてないだろうな。
「リリアス殿下の周りは皆強いですから。私が勝てるのはラルク位です」
「あー、ニルさま。酷いですよ。僕だって直ぐにニル様に勝って見せます!」
あらら、これ比べちゃってるよ。俺の周りって、オクソールにシェフにリュカじゃん。そりゃあ、強いわ。
そんなのと、比べられたらラルクが気の毒だよ。
「アンシャーリ、ニルも強いからね」
「はい! リリ殿下。あれ? ニルの武器はなあに?」
「これは、双剣ですよ」
「双剣。両手で剣を持つのね! カッコいい!」
「アンシャーリ様、女は男性には力では敵いません。ですので、手数とスピードです。力もうまく利用しなければなりません」
いやいや、ニル。6歳の子に何マジで語ってんだよ。
「私も練習すれば双剣を使えるかしら!」
「もちろん、鍛練すれば身につきますよ」
「まあ! 叔父様! 私もニルみたいに双剣を使いたいです!」
「アンシャーリ、基本が出来てからだ」
「そうね、アンシャーリ。アルコース殿の仰る通りだわ」
「エウリアー様、そうなのですか?」
「そうよ。何でも基本がしっかり出来ていないと駄目なの。双剣は特にね。危ないわ」
「そうなのですね!」
ああ、アンシャーリがニルやエウリアー様に染められていくぅ〜。
「リリさま、リリさまも強いのですか?」
「おぅ、アウルース。リリも強いぞ!」
テュールがやってきてアウルースを抱き上げる。
「テュール殿下! 殿下とどっちが強いですか?」
「アウル、テュール兄様に決まってるじゃない」
「いや、リリ。分からんぞ。10歳の時に一緒にダンジョンを攻略しただろう。あの時でもリリはかなり強かったからな。
あれから、3年だろ? もしかしたら、今はリリの方が強いかも知れないぞ? ちょっと手合わせしてみるか?」
「テュール兄様、しませんよ! もう、兄様に敵う訳ないじゃないですか!」
マジ、すぐ手合わせとか鍛練とか言う人達、なんとかしてくれ。
オクソールとリュカが打ち合いを始めた。
「あー、やり始めちゃったよ」
「リリ、何? 此処は剣を持っていなきゃいけないルールとかあるの? いつも打ち合いしてなきゃ駄目なの?」
「ね、フォルセ兄様」
てか、何だあの二人は! 超早いじゃねーか! よくあんな反応するよ。
「凄い! 早くて分からないわ!」
ああ、またアンシャーリがどんどん染まっていくぅぅ〜。
「アルコース殿、すみません。アーシャを刺激してしまいましたね」
「アハハハ。いや、お気になさらず。アーシャは領主隊の鍛練を見てもあんな感じですから。
それより、殿下。リリアス殿下は何歳に鍛練を始められましたか?」
アルコースが小声で俺に聞いてきた。
「僕は、えっと……5歳だったかな? オクソールに毎朝しごかれてるよ」
「5歳ですか……」
アルコース、まさかアンシャーリやアウルースを鍛えようなんて思ってないよな?
「ね、リリアス殿下。どうしましょう?」
なんだよ! 俺に聞くなよ! アルコースのこんなちょっと惚けたところが面白い。俺は好きだな。
「あー、アルコース殿。僕よりオクソールに聞いた方が……て、聞いたら絶対に今すぐとか言いますよね」
うんうん、てアルコースが頷いてるよ。参ったなぁ。
「えっと、僕はですけど」
な
と、前置きしてから言った。
俺は、オクソールの鍛練を受けていて未だに半分死ぬけど、でもやっていて良かったと思うんだよ。
自分が守られるだけなのは嫌だと言う気持ちもあるが、守る力をつけて貰えていると思う。
もしも、何か起こった時に大切な人達を守れなくて後悔するのは嫌だから。
でも、それは剣に限らず魔法だって一緒だ。シオンに付いて、魔法を一から学べて良かったと思う。
人其々だから、何が良いとは一概には言えないが。色んな可能性を調べるのは良い事だと話した。
「そうですね。アンシャーリは自分でやりたいと思ってますが、アウルースは魔法の方が向いているかも知れませんね」
「アルコース殿、それも先入観だ。やってみないと、試してみないと分からないよ。
良い機会じゃない? シオンとも会ってみたら?」
「いやいや、殿下。そこまでして頂く訳には」
「アルコース殿、辺境伯領を守る事は帝国を守る事にも繋がるんだ」
「リリったら、大人だね」
フォルセ、茶々を入れるのは止めて。
「話していても始まらないので、やってみましょう」
「殿下、良いのですか?」
「良いって良いって。あ、アルコース殿が反対ならしません」
「いえ、願ってもない事です! お願いします!」
よし!決まりだな。
「オークー!」
俺はいつまでもリュカと打ち合いをしているオクソールを呼んだ。
「殿下、お呼びで」
「うん。オク、アーシャとアウルを見てあげてくれない? 軽くだよ。向き不向きを見る程度で良いからさ。本気は駄目」
「はい、分かりました。軽くですね」
「超軽くだよ」
本当に、オクソールの軽くは信用できないからな。
「リュカ、殿下方が使っておられた子供用の木剣があっただろう?」
「はい。オクソール様、持ってきます」
リュカが騎士団の室内鍛練場に走って行く。
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もうすぐ完結すると思うと寂しい気持ちになります。
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