376ーアウルの属性
読んで頂き有難う御座います。
このお話は、フィクションです。ファンタジーです。
現実性を追究した作品ではありません。
宜しくお願いします。
「あらあら、兄弟皆集まって何をしているのかしら? ご挨拶が残ってますよ」
「はーい」
母に呼ばれちゃったよ。俺達はホールの一段高い所に移動した。
クーファルとミリアーナ嬢を中心に、家族全員揃って並ぶ。
「今日は、祝いの席に皆よく来てくれた。クーファルとミリアーナ嬢、二人を見守り支えてやって欲しい。今日は、第5皇子のリリアス専属のシェフが腕を奮って自慢の料理を揃えてくれた。まだレシピが世に出ていない料理ばかりだ。存分に堪能して欲しい。これからも、皆の健勝と帝国の繁栄を願う」
父が挨拶をして、俺達は手に持っていたグラスを軽く上にあげた。
父がわざわざレシピの話を出したのは、これを機に公開する事となったからだ。
今迄も少しずつ公開はしていたが、商業ギルドが間に入って大々的に公開する事が決まった。
「リリアス殿下、お久しぶりです」
お、着飾ったディアが声を掛けてくれた。
「ディア、久しぶりだね」
「はい。相変わらずお忙しそうですね。アースとレイがぼやいてましたよ」
「あー、2人に全然会えてないんだよ。僕が時間をとれなくて」
俺は、10歳から皇子教育と一般教養等の教育が始まった。専門の先生方について教わっている。
合間に、レピオスと医局でまったりしたり、シオンと魔法談義をしている。毎朝のオクソールとの鍛練も続けている。結構、多忙なんだぜ。
「殿下はとても優秀だとお噂で聞いてます」
「ディア、止めて。知らない事を勉強するのは楽しいんだけどさ、兄様達は本当に優秀だからプレッシャーなんだ」
「ご謙遜を。また、4人で集まりたいですわね」
「そうだね。予定を考えてみるよ」
そうだな、久しぶりに4人で集まりたいな。ディアはもう既に立派な御令嬢だ。
「あー、終わった」
「リリアス殿下、お疲れ様でした」
パーティーが終わって、俺はラルクと部屋に戻ろうと城の廊下を歩いていた。
「ラルク、食べれた?」
「まあ、程々に」
「僕は全然食べれなかったよ」
「仕方ないですね。あの場では」
「うん。それに、慣れないよ」
「パーティーですか?」
「うん。正装自体が慣れない」
「でも殿下は堂々とされてましたよ?」
「そりゃあ、オドオドはできないじゃない?」
「リリアス殿下」
リュカが正面から歩いてきた。
「リュカ、どうしたの?」
リュカとオクソールも今日は正装をしている。騎士の正装だよ。俺はそれが嬉しいやら誇らしいやら。
「部屋でアウル様がお待ちですよ。それと、シェフが軽食を部屋に用意してくれています」
「わ、嬉しい」
「ラルク様の分もありますよ」
「有難うございます。リュカさんは食べられましたか?」
「いえ、私もオクソール様も食べられなかったのでご一緒させて頂こうかと」
「うん。そうしよう。皆で一緒に食べよう! アウルも待ってくれているんでしょ?」
「はい! 久しぶりですが、アウル様は会うたびに大きくなられますね」
「ねー。もうお兄さんだからね」
「リリしゃまー! て、殿下の後をついておられたのが昨日の様ですね」
「うん。そうだね」
部屋の前で、オクソールが待っていた。
「オク、入って。一緒に食べよう」
「はい。有難うございます」
何度見ても、オクソールの正装姿はカッコいい。どんどん貫禄がついてきているな。
「リリさま! お待ちしてました!」
「アウル、お待たせ」
ニルと、俺付きの侍女になったミーリィが軽食を並べてくれている。
「ニル、ミーリィも食べよう」
「はい! 殿下!」
「ミーリィ、即答は駄目よ」
「あ、ニル様。つい」
「アハハハ。ニル、良いよ。ミーリィはこう言う子だから」
「殿下、甘やかしてはいけません」
「いいの、いいの。僕達だけなんだし」
――コンコン
「リリ、いいかしら?」
おや、フィオンだ。アルコースもいる。どうした?
「フィオン姉様、構いませんよ。アルコース殿も一緒に食べませんか?」
「お、良いですか? パーティーではあまり食べられなかったので」
「どうぞ、どうぞ。ニル」
お茶を頼もうとニルを見たらもう入れてくれてたよ。さすがだね、ニル。
「殿下はりんごジュースですよね?」
「うん。ミーリィ、有難う」
「リリ、少しお願いがあるのよ」
ん? ちょっと真剣な話か? アルコースはもう食べてるぞ?
「ここにいる者だけの事にしておいて欲しいの。他言はしないでほしい」
「姉様、どうしました?」
「リリアス殿下、アウルースの事です」
「父さま、ボクですか?」
アルコースがアウルースを見て頷く。
分かってしまったよ。さっき、パーティーでフレイが言っていた事だろう。
「リリ、アウルースの属性を見てほしいの」
「姉様、10歳の鑑定の儀では遅いですか?」
「そんな事はないけど。フレイ兄上の子供はもう確認したのでしょう?」
「はい。産まれて直ぐに」
「だからと言う訳ではないのよ。実は少し不安な種があるの。それで、サウエル家に光属性を持った子がいるとまた違ってくるわ。もちろん、属性が何であれ私たちの可愛い息子である事には変わりないし、私も表に出て守るけれど」
フィオンの親としての気持ちは変わらないと言う事だな。
「リリアス殿下、すみません。兄に男の子がいない事もあって両親が気にしていて。フィオンが言った様に、きな臭い事も少々ありまして」
やっぱり属性か。きな臭い事がアウルースの属性で回避できると言うのか?
それよりも、アウルース自身はどうなんだ? それが1番大切だ。
「アウルはどうなの? 早く知りたい?」
「リリさま、ボクは早く知りたいです。魔力量を増やす事も出来ると聞きました。その事もリリ様に教えて頂きたかったんです」
「アウル。それは、どうして?」
「リリさま、覚えてますか? 花を咲かせて下さいました」
ああ、もちろん覚えているさ。忘れる筈がない。
「あれからボクは考えてました。ボクは、お祖父さまの領地を守る手助けをしたいです。属性よりも、ボクはリリさまみたいに魔法を使える様になりたいです」
「アウル、急がなくても10歳になったらみんな分かるし使えるんだよ?」
「でも、リリさまが初めて大樹に花を咲かせたのは3歳だと聞きました。ボクはもう5歳です」
「そうか」
なんか、レイを思い出すなぁ。レイも早く使える様になりたいと言っていたなぁ。