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374ー辺境伯一家

「リリアス殿下! 申し訳ありません! 助けて下さい!」


 と、言ってアルコースはガバッと頭を下げた。


「アルコース殿、どうしました。フィオン姉様に何かあったのですか?」

「いや、もう。私の手には負えません」


 何だ? どうした? フィオンは無事なんだろうな。


「リリアス殿下、フィオンは元気です。いや、元気と言ったら怒られてしまうな。頑張ってます。とにかく、殿下を呼んで欲しいと言ってきかないのですよ」

「アルコース殿、構いませんよ。姉様も不安なのでしょう。僕が役に立つなら喜んで来ますよ」

「殿下、有難うございます! 本当に申し訳ない!」


 アハハハ、これはフィオンのワガママだな。まあ、いいさ。俺を必要としてくれるなら、いくらでも来るさ。

 アルコースに連れられて、フィオンのいる治療室に急ぐ。


「アウルースの時は初産だったので、考える余裕もなかった様なのですが。二人目で、フィオンに少し余裕があるのもまた困ったもので」


 アハハハ! アルコース、何言ってんだ? 落ち着けよ。動揺しまくりじゃねーか。


「さあ、殿下。こちらです」


 アルコースがドアを開けてくれる。


「みんなは待ってて」


 治療室に入ると、フィオンの苦しそうな声がした。


「フィオン姉様! 大丈夫ですか!」

「ハァ、ハァ! リリ! 来てくれたのね! ああ、リリ! もう姉様は駄目だわ!」

「姉様! しっかり!」


 俺はフィオンの手を握りながら、産婆さんを見た。首を横に振っている。と、言う事はまだ息んだら駄目なんだな。


「姉様、フーフーて息を吐いて下さい。まだ息んだら駄目ですよ」

「フィオン様!」

「アズ……フーフー。ああー!」


 アズはフィオン付きの侍女で、ニルのお姉さんだ。小さい時からずっとフィオンに付いている。

 フィオンに付いて辺境伯領に来て、アルコースの側近のローグと婚姻した。まだ1歳にならない男の子がいる。


「姉様、まだです! フーフーて息を吐いて下さい!」


 ちょっと失礼して鑑定してみる。おや? もういいんじゃないか? 子宮口は全開だぞ?

 俺は産婆さんに合図すると、産婆さんは確認して今度は首を縦に振った。

 よし! フィオン頑張れ!


「姉様! 次に大きな痛みがきたら、息みましょう!」


 アルコースはどこに行った? と、キョロキョロすると、治療室の隅に立っていた。


「アルコース殿、産まれますよ! 姉様の手を握ってあげて下さい!」

「は、は、はい! 殿下! フィオン! 頑張れ! フィオン!」


 ああもう、動揺しすぎだ。二人目だろ? 大丈夫か?

 フィオンは何回か息み、無事に二人目の子を出産した。


「姉様、元気な男の子ですよ。おめでとうございます!」

「フィオン様! おめでとうございます!」


 アズ、泣きそうじゃねーか。


「リリ、有難う。ワガママ言ってごめんなさい」

「姉様、良いんですよ。おめでたい事に立ち会わせてもらって僕も嬉しいです」

「リリ、有難う。アズも有難う」


 ハハハ、良かったよ。ビックリだがな。実の姉の出産にまた立ち会ってしまったよ。

 

 因みに、アルコースの兄で次期辺境伯のアスラールには二人の女の子がいる。

 男の子が産まれないので、もう一人と思っているらしい。だが、多分辺境伯を継ぐのはアウルースになるだろうな。

 だって、アウルースはこの地に愛されているから。と、俺は一人こっそりと思っている。

 アスラールもあまり深刻には考えていないらしい。


「アウルがいるので、別に良いんですけどね。挑戦だけはしようかと」


 とか、訳の分からない事を言っている。

 そんな感じで、この3年の間に色々変化があったんだ。



 さて、俺はアウルースと一緒に客間に入ると、辺境伯一家が勢揃いだ。

 チビっ子が増えていて賑やかだな。


「リリ殿下! お久しぶりです!」


 アスラールの長女でアンシャーリだ。


「アーシャ、久しぶりだね。元気だったかな? 相変わらず、可愛いなぁ」


 そう言いながら、アンシャーリの頭を撫でる。


「有難うございます。リリ殿下も、お元気でしたか?」


 まあ、小さなご令嬢だね。しっかりしてるよ。アンシャーリは小さな頃からしっかりしていたからな。


「リリアス殿下、お久しぶりですな」

「アラ殿! 賑やかになりましたね」

「リリアス殿下、もうすっかりおじいちゃんですわよ」


 そう言うのは、辺境伯のアラウィンのご婦人、アリンナ・サウエルだ。


「これだけ孫が増えると、もう隠居したくて仕方ないのです」

「アハハハ。アラ殿、まだ早いでしょう」

「リリアス殿下、言ってやって下さい。もう、隠居すると煩いのですよ」


 辺境伯の長男、アスラールだ。


「それより、クーファル殿下のご婚姻、おめでとうございます。」

「アラ殿、有難うございます」

「先程、ご挨拶しましたがクーファル殿下のあの様なお優しいお顔は初めて拝見しましたよ」

「アハハッ。アラ殿、兄さま婚約してから何年も待ちましたからね」

「そうでしたな。お相手のご令嬢も可愛らしいお方で」

「はい。僕のお友達の令嬢のお姉さんなんですよ。だから、僕も以前から知っているんです」

「そうでしたか」

「お祖父さま、リリさまを独り占めしないで下さい」

「アハハハ、アウルは相変わらずリリアス殿下が好きで」

「お祖父さま、好きじゃなくて大好きですよ」

「アハハハ! リリアス殿下、どうしますか!」

「アウル、有難う」


 どうするもねーよ。俺もアウルースは大好きだからな。


「アウルは5歳のお披露目パーティーだね」

「はい。パーティーなんて苦手です」

「僕も嫌々出席したなぁ」

「リリさまもですか?」

「うん。でも、そのパーティーでお友達ができた。今も仲良いよ」

「そうなんですね。じゃあ、ボクも我慢します」


 あらあら、我慢か。アウルースは辺境伯領だからな。友達が出来ても遠いか。


「アウル、リリ殿下は今日はお忙しいんだ」

「父さま」


 アウルースの父親で、フィオンの夫のアルコースだ。アウルースの弟を抱っこしている。


「お、しっかりしましたね」

「はい、もうすぐ2歳ですから」

「リリしゃま?」

「そうだよ、リリだよ。覚えてくれているかな?」


 君が産まれる時は大騒ぎだったんだよ。


「あい。リリしゃま」


 可愛いなぁ。


「リリアス殿下、そろそろです。フィオン様、辺境伯ご夫妻もお願いします」

「ああ、リュカ。分かった」

「リュカ、分かったわ」

「じゃあ、アウルまた後でね。僕の部屋においで」

「はい! リリさま!」


 リュカに呼び出されて、フィオンとアラウィンと一緒にクーファルの婚姻式に向かう。


「リリ、大きくなったわね」


 そう言って歩きながら、フィオンが俺の髪を撫でる。いくつになっても、フィオンは俺に最大の愛情を向けてくれる。俺の大好きな姉さんだ。


「はい。姉様、お元気でしたか?」

「ええ。相変わらずよ」


 婚姻式に出席するのは、クーファルの実の妹のフィオンと辺境伯であるアラウィンと夫人のアリンナ様だけだ。

 他の辺境伯一家は、婚姻式の後に催される婚姻のお披露目パーティーからだ。

 辺境伯に降嫁しても、フィオンは皇族だ。俺達の家族である事には違いない。


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