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366ーカール底へ

「兄さま、おはようございます」

「リリ、おはよう。眠れたかな?」

「はい。しっかり寝ました」


 おや? クーファルは眠れなかったのか?


「兄さま、もしかして寝不足ですか?」

「寝不足と言う程ではないんだけどね、昨夜フォルセから魔道具で連絡があったんだ」

「フォルセ兄さまですか? また何かあったんですか?」

「フフフ。リリは本当に兄弟に好かれているからね。参ったよ」


 なんだ? 意味分かんねーぞ?


「フォルセがね、リリをモデルに絵を描きたいんだそうだ。だから、早く帰って来いとしつこくてね」

「え……」


 洒落じゃねーぞ。絵だけに。


「今、絵を描く情熱が溢れ出しているんだそうだよ。リリ」


 情熱て何だよ。何が溢れ出してるんだ。参ったね。妖精さんの考える事は分かんねーわ。


「兄さま、ゆっくり帰りましょう。そして、夜は魔道具を外しましょう」

「ああ、それがいい。そうするよ」

「さあ! 朝食ですよ! しっかり食べて下さい!」


 あー、シェフ。今朝もテンション高いね。俺達は、駄々下がりだよ。



 また俺はオクソールの馬に乗せてもらって鉱山へ向かっている。

 宿屋から少し距離があるんだけどな、天気も良いし急ぐ用事でもないしな。鉱山の調査も終わったし、ピクニック気分だ。


「殿下、昨日ユキが言っていた件ですか?」

「うん、オク。そうだよ」


 そのユキは今俺の腕の中でスヤスヤと寝ていらっしゃる。


「何があるんでしょう?」

「さあ。ボクにも分からない。オクは見えた?」

「いえ、私にも分かりませんでした。どこにあるのかもハッキリ分からないので」


 そうなんだよな。ユキは何かあるとは言うけれど、どこなのかハッキリと分からない。ユキ自身も明確には掴めてないみたいだし。

 今日は、あの坑道を抜けた場所、カール底に行って彷徨いてみるか。


「リリ、カール壁にある。入り口だ」

「ユキ、起きてたの?」

「ああ。リリが行くのを待っている」

「え? 何が?」

「分からん」


 やだ、不気味じゃね? 怖くね? 霊的なもんなら俺はやだよ。怖いじゃん。


「リリ、怖くはないぞ」


 あら、俺の心の声を読んだね。


「読まなくてもリリは分かりやすい」

「アハハハ、確かに」


 やだやだ。俺程クールな10歳児はいないぜ?


「殿下、ニル殿とラルクは留守番ですか?」

「うん、オク。今日は残ってもらった。なんとなく。大人数じゃない方が良い気がして。それにさ、ニルは女の人だしラルクはまだ子供だし。あまり無理して欲しくないんだ」

「殿下も子供ですけどね」

「ボクが行くと言ったんだから良いんだよ」

「では、りんごジュースの用意は完璧ですか?」

「オク、当たり前じゃない。りんごジュースはいつも完璧」

「アハハハ。しかし、レピオス殿は良いのですか?」


 そうなんだ。今朝になってレピオスも同行すると言ってきた。もう調査じゃないからゆっくりしていて良いと言ったんだけどな。


「レピオスはカール底に生息している薬草を見たいんだって。シャルフローラ様に懇願されたらしいよ」

「あぁー、シャルフローラ様ですか」

「そうなんだ。薬草となると凄い執着を見せるからね。断れなかったみたい」

「でしょうね。城の温室や薬草園がどんどん埋まって行ってますから」

「みたいだね。本当に好きなんだね」


 シャルフローラがフレイと婚姻して城に入ってから、城の温室と薬草園がどんどん新しい薬草でいっぱいになっていった。

 好きなだけでなく、育てるのも上手なんだ。しかも、遠方から取り寄せたりしている。実家の流通網をフルに使ってな。


「ミリアーナ様は作る方でしたか。」

「そう。薬湯とポーション類ね。もう、ハマってるよね。薬草の次は薬湯とポーションなんだから」

「殿下は力業で回復ですし、上手く出来ているものですね」


 オクソール、そこは感心するところか? てか、その言い方だよ。力業て、俺ってそんな感じなのか?


「でも、良かった。フレイ兄さまもクーファル兄さまもテュール兄さまも想い合って婚姻だもん」

「次はフォルセ殿下ですね」

「あー、フォルセ兄さまはしないと言ってた」

「そうなのですか?」

「うん。それでね、歳をとっても2人で仲良くしよう、て言われた」

「そうですか。殿下は話されたのですか?」

「ううん。オクにしか言ってないよ。だって不確かな事だし。この先、何があるか分からないし」

「なるほど。では、フォルセ殿下は何か勘付いておられるのかも知れませんね。芸術に長けておられる方は我々とは見方も感じ方も違いますから」


 そうか。そうかも知れない。テュールの事もよく分かっていたしな。

 あの妖精さん、マジ裏ボスかよ。フォルセのテヘペロ顔が頭に浮かんだがスルーしておこう。


「殿下、見えてきましたよ。ああ、ルドニークが手を振ってますね」

「ルドニークはさぁ、若いよね」

「アハハハ、殿下がそれを仰いますか」


 いや、本当にマジで。リュカが大人に見えるからな。


「クーファル殿下、リリアス殿下。今日も宜しくお願いします!」

「ああ、ルドニーク。よろしく」

「ルドニーク、よろしくね」

「はい!」


 クーファル、もう復活しているな。朝は疲れた顔をしていたからちょっと心配したぜ。


「リリアス殿下、カール底に向かうのならこのまま馬で行ける道で行きましょう。少し遠回りですが、カール底は広いので馬で移動される方が楽だと思います」


 そうなのか、そんな道があるんだ。

 ルドニークが馬で先導してくれる後を付いて行く。鉱山の入口を迂回して、少し山に入ると細い道があった。

 馬2頭が並んでギリギリ進める程度の道だ。


「薬草を採取する者達はこの道を使うんです。町までの道幅に合わせた小型の荷車を馬に引かせています」

「ルドニーク、荷車が必要な程の量の薬草が採れるの?」

「そうですよ。なんせ広いですから。それに、樹皮もあります」


 なるほどね。樹皮も薬湯に使われる種類があるからな。


「ここは種類も量も豊富なんだね」

「はい。有難いです。自然の恵みです。ですので、絶対に採り過ぎない様にしています」


 それは良い事だ。北の端にある町だが、意外と豊かなんだな。



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