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364ーオリクト鉱山

「そうですか? 殿下は、5歳の時に辺境伯領へ。7歳の時に王国へ。10歳でまた辺境伯領、そしてこの北の地にも来ておられます。そんな子供は帝国中探してもいませんよ」

「兄さま達やオク達がいるからだよ。ボクは連れて行ってもらってるだけだよ」

「嫌々行かれた事もありましたね」

「本当だよ。王国に行くのはマジで嫌だった。泣いちゃったもん」

「アハハハ、そんな事もありましたね」


 馬でないと行けない道だったが、オクソールと平和な会話をしながら無事に到着した。

 鉱山の事務所らしき建物の前に人が待っていた。


「クーファル殿下、リリアス殿下、ご紹介します。この鉱山の鉱夫長を任せておりますルドニークです」

「ルドニークです! お初にお目に掛かります!」


 おや、まだ若いね。意外だ。


「ルドニークの父親が去年まで鉱夫長をしておりました。腰を悪くしまして、息子に代替わりしました。まだまだ半人前ですが、頑張っておりますよ」


 ほうほう。そうなのか。鉱夫長も世襲制なのか?


「リリ、そんな事はないよ。たまたまだろう。彼は優秀なんだろうね」

「クーファル兄さま。そうなのですか」


 ルドニークと紹介されたまだ若い鉱夫長。父親が鉱夫長だったので、小さな頃から鉱山にはよくついて来ていた。そのまま、鉱夫になったそうだ。

 赤茶色の短髪にグレーの瞳のまだまだ青年ぽい男性。鉱夫長になってまだ1年目で、それでも今年30歳になるそうだ。

 オクソールは29歳だから、変わんないじゃん。オクソールの方が落ち着いて見えるのは何故だ?


「殿下、まだ若いッスね」


 リュカ、お前が言うかよ。ああ、そうか。雰囲気がリュカに似てるんだ。


「殿下、何スか? その目は?」

「リュカに雰囲気似てるよ?」

「え? 俺、あんなですか?」


 どんなだよ!?


「皆さん、ご苦労様です! 会議室へどうぞ!」


 ルドニークに案内されて、事務所が入っている建物の会議室に通される。


「ここは、夏しか入れないのでその間は皆泊まりなんです。宿泊棟もあります。皆、町のもんですし泊まりと言う事もあって昔からの顔馴染みばかりッス」


 ブハハ、喋り方までリュカに似てるぞ。


「殿下、考えてる事が顔に出てます」

「リュカ、そう? アハハハ」


 笑っちゃうさ。外見は似てないのに雰囲気だけでこんなに寄せてくるかね。

 クーファルがまた同じ書類を見せて説明してくれる。ルドニークは真剣に聞いている。

 真面目そうで好感が持てるよ。なんせ、リュカに似てるってだけで俺は気を許しちゃうね。


「じゃあ、鉱山の中を見せてもらおうか」

「はい! クーファル殿下、ご案内します!」


 おうおう、良いじゃねーか。緊張してるか? クーファルはマジ皇子だからな。俺もだけど。


「兄さま、やっぱりここも一緒ですね」

「リリ、そうだね。光源に通気口か」

「はい、兄さま」


 俺もまた鑑定しながら鉱山の地図にチェックを入れる。

 クーファルも説明してくれている。光源を交換する事。通気口を増やす事。1日の終わりには風魔法で粉塵を外に出す事。

 まあ、どこの鉱山も一緒だ。


「分かりました! 直ぐに取り掛かります!」


 おう、頼んだぜ。


「その光源とか魔石はどうしたら良いッスか?」

「持って来てるから、後で渡すよ」

「リリアス殿下、分かりました!……何スか? 俺、変ですか?」


 悪いな、ついニマニマしちゃったよ。


「ううん、何でもないよ。ブフフ」

「いやいや、笑ってるじゃないッスか!?」

「あー、ルドニーク気にしなくていい」

「クーファル殿下、気になります」

「ルドニークがね、リリの従者兼護衛のリュカに雰囲気が似ているんだ。それだけだ」

「似て……ますか?」

「うん、喋り方まで似てる。ね、リュカ」

「似てるッスか?」

「ほら。プププ」

「殿下、止めて下さい」

「リュカ、ルドニーク、ごめん。悪い意味じゃないんだ。愛着だよ。ん? 愛着?」

「殿下、なんで疑問形なんスか!?」

「アハハハ! リュカさん、マジ似てるかもです!」


 ルドニーク、認めちゃったよ。リュカの方が年下なんだよ。そこはいいのか?


「で、リリ。どうかな?」

「はい、兄さま。ここは向こう側まで出られるんですね」

「みたいだね」

「あ、そうなんです。この坑道は通り抜け出来るんです。今は横道を掘ってます。向こうに出て見ますか? 景色が超良いですよ!」

「そうなの? 見てみたい!」

「はい! リリアス殿下。此処はカールなんです。坑道はカール壁を掘ってるって事ッス」


 ほうほう。じゃあ、突き抜けたらカールの底て事かな? 楽しみだ。

 俺達はルドニークに先導されて坑道を奥へと進む。陽の光が見えてきた。

 坑道を出ると、急崖に囲まれた底には平坦なカール底が広がっていた。


「うわ……雄大だね」

「はい! 夏は薬草も採れます。あー、あそこで採取してますね」


 ルドニークが指差す方を見ると、人が数人小さく見える。


「自然が豊かなんだね」

「はい! 鉱山も薬草も皆の生活資金です」


 なるほど。じゃあ冬はどうしてんだ?


「冬は雪でここまで来れません。でも、雪山から獣が下りてくるんです。雪兎なんスけど。それを狩ります。毛皮も肉も売れます。肉は自分達で冬の間に食べてしまいますけど」


 そっか、貴重なタンパク源なんだ。


「雪兎て名前は可愛いですけど、デカイんです! 2m程あります。人を舐めてますしね」

「そうなの?」

「はい、リリアス殿下。めちゃ身軽で、油断すると飛び蹴りしてきますから」


 なんだよ、なんだよ。人を舐めて飛び蹴りしてくるのが流行りなのか?

 辺境伯でもそう言うのがいたぞ。向こうは魔物だけどな。


「それって、獣? 魔物じゃなくて?」

「はい、獣ッス。魔石は持ってませんから」


 あら、そうなんだ。じゃあ、魔石を持ってたら魔物扱いになんのか? 知らなかったよ。


「リリはまだ勉強しないとね」

「はい、兄さま」


 本当だ。俺、知らない事が多すぎるな。


「鹿と猪も出ます。時々、熊も出ます」

「え!? 危ないじゃん!」

「平気ですよ。鉱夫にかかればチョロいもんです!」


 マジかー!? 鉱夫て強いのか!


「リリ、そんな事はないよ。ここだけだ」

「兄さま、そうなんですか?」

「ああ。鉱夫は皆狩りが出来る訳ではない。ここは、夏は鉱夫。冬は狩人て感じだ」

「そうなんだ」

『リリ、何かあるな』


 え? ユキさん、何? 危険?


『そうではない』


 そっか。とにかく今日は鉱山だ。調査を終えてしまおう。ユキさんや、それでも大丈夫かな?


『ああ。問題ない』


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