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360ーテュールの婚約 5

「叔祖母様は相手の気持ちを考えない。何をどう思っているのか、感じているのか知ろうともしない。それが1番駄目なんだ」


 テュール、その通りだな。うん。俺もそう思うよ。


「リリなんて酷いことを言われた事あるじゃない」

「あー、ありましたね」


 そう、俺も言われた事があるんだ。まだ小さい頃だ。今でも小さいが。


「お前は、光属性を持つだけの綺麗なお飾りの人形だ。と言われましたね」

「ね! 今でもムカつくよ!」

「フォルセ、本当にな! あの時は皆ムカついた!」

「母さまと喧嘩になっちゃいましたもんね」


 俺が叔祖母様にそう言われた時、母も一緒だったんだ。父も皇后様も兄弟もいた。

 母は、叔祖母様に噛み付いた。


「リリは人形ではありません! 歴とした1人の人間です! 私の大事な息子です! 帝国の光です!

 あなたにそんな失礼な事を言われる筋合いはありません! 謝罪して下さい!」


 俺の前に出て、そう啖呵を切った。


「あの時は、皆怒っていたからな。エイル様が文句を言っても誰も止めなかった」

「フレイ兄上、そうでしたね。なのにあの人はまだ言ってたよね」

「ああ。クーファルだって切れかけていただろう?」

「フレイ兄上もでしょう?」

「あの時は、皇后もだよ。もう、私はどうしようかと思ったよ」

「父上、ヘタレですね」

「フォルセ、酷いね」

「だって、父上が言わなければいけない事をエイル様が言ったのですよ?」

「フォルセの言う通りだな」

「フレイ兄さま、叔祖母様はプライドが高すぎるんですよ」

「リリ、お前自分の事を言われているのに冷静だったよな?」

「だって、何か……あー、この人は何を言ってるんだ? て思ってしまって」

「リリの事をなにも知らないクセにな」


 クーファルまで怒っているか?


「リリ、あれを怒らない者はいない」

「クーファル兄上、そうですよね。皇后様なんて、エイル様の前に出ていらしたもんね」

「あれは驚いた」

「父上、本当にヘタレですね」

「また、フォルセ。酷いよ?」

「だって、それも父上がしなきゃいけない事ですよ?」

「あの人はね、自分は前皇帝の妹なんだ。て、それが1番なんだよ。自分は悪い事は言ってない、てね。

 私が表立って対立したら皇族が公に対立する事になるだろう? それは駄目だ。貴族達に派閥を作るきっかけを与えてしまう」


 まあ、父の言い分も分かる。父の立場だと静観しかなかったのだろう。と、思いたい。


「で、テュール兄さま。それからどうなったんですか?」

「それからな、クレメンス公爵とエウリアー嬢のご両親が部屋に入ってこられた」


 クレメンス公爵は叔祖母様の夫だな。前々皇帝の兄弟だ。公爵位を持つ貴族は皇族の血統だ。


 そして、公爵とご両親はテュール側についたそうだ。

 今迄、黙っていたがもう無理だと。

 エウリアーはお祖母様の人形じゃない。エウリアーにはエウリアーの望む事をする権利があるんだ。と、ご両親は言ったそうだ。


「公爵は、『お前はもう黙りなさい。私と領地で静かに暮らそう。公爵家は息子達に任せる』と、仰った」


「うわ、テュール兄さま凄い事になりましたね」

「ああ、リリ。俺も驚いた」

「そこからどうやって婚約まで繋がるのですか?」

「それが、まあ、なんだ」

「リリ、エウリアー嬢のご両親に言われたんだよ」

「え? 婚約しろと?」

「いや。リリ、逆だ」


 逆だと? なんだ?


「だからね、もうこれ以上関わるな、て言われたんだって」

「フォルセ兄さま、本当ですか!?」


 スゲーな! ビックリだ。


「話す機会を作ってもらえた事には感謝するが、これ以上は関わるなとな。でも俺は、それが嫌だったんだ。

 もうエウリアー嬢に関わるなと言われて、初めて気がついたんだ」

「なるほど。確かにテュール兄さまは鈍感ですね」

「リリまでそう思うか?」

「はい。フォルセ兄さまの言う通りですね。それで、テュール兄さまはどうしたのですか?」

「俺の一存で軽はずみな事は言えないからな。その時は、また改めます。と言って帰ってきた」


 ほほう。先に父と皇后様に相談する為か。


「父上と母上、皇后様に相談して改めて城に呼んだんだ」

「テュール兄さま、その前にエウリアー嬢には何も言わなかったのですか?」

「リリ、そうなの! そこがテュール兄様の抜けてるとこだよ!」


 マジかよ! 本人の気持ちが1番だろ!?


「本当に!? テュール兄さま、駄目駄目ですね」

「リリ、そう言うな」

「でも、令嬢はビックリしたでしょうね」

「ああ、驚いていた。それは同情か? と言われた」


 ま、そりゃそうだよな。だが、ご両親には感謝されたそうだ。

 家族だけでどうにも出来なかった事に、テュールが風穴を開けてくれた。きっかけを作ってくれたと。

 叔祖母様は、公爵家の女王様だったんだろうな。


 それから、やっとテュールはエウリアー嬢と2人で話し合ったそうだ。

 もちろん、令嬢はテュールの事を良く思っていない筈がない。

 昔は仲が良かったんだからな。

 テュールは憧れで、希望だったとか言われたそうだ。いいね、リア充は。


「へぇ〜」


 あれ、りんごジュースもうないや。ニルを見るとおかわりをくれた。やったぜ。


「コクコク……」

「リリ、飽きちゃった?」

「え? フォルセ兄さま、そんな事ありません。なるほど〜て、思っただけです」

「そう?」

「はい。でも、それがどうしてボク達が呼び戻される事になるのですか?」

「リリ、それなんだが」

「リリアス殿下、実はその公爵夫人から要望がありまして。

 自分が領地に帰る前にしっかりちゃんとした正式な婚約の儀をしてもらいます。と仰られまして」


 セティが説明してくれた。なるほど。それでか。


「ま、仕方ないですね。ね、クーファル兄さま」

「ああ、リリ。そうだね。テュールの為だ」

「はい。兄さま」


 叔祖母様の、『しっかりちゃんとした正式な婚約の儀』て、とこがミソだ。

 皇族全員揃っておけよ、と言う事だ。

 そして、翌日テュールとエウリアー嬢の『しっかりちゃんとした正式な婚約の儀』が、開かれた。


 婚約の儀とは、双方の両親と神官の立ち会いの元で、婚約証書に著名する儀式だ。

 皇族の場合は、教会の大司教様が立ち会う事になっている。

 俺達兄弟は、儀式には立ち会えないがその後の顔合わせ兼婚約の儀を終えた報告のお茶会に出席する。

 父、皇后、テュールの母のナリーシア様、俺の母のエイル、フレイ、フレイの奥さんのシャルフローラ、クーファル、フォルセ、そして俺だ。久しぶりに正式な皇子の格好をしたさ。


 それはそれは『しっかりちゃんとした正式な婚約の儀』だったよ。

 これで、文句はないだろ。て、感じだ。

 とにかく、テュールの婚約が決まって良かったよ。テュールも令嬢も幸せになってほしいね。


いつも、誤字報告有難う御座います!

ブクマ、評価も宜しくお願いします!

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