353ー超迷惑
第5章の本編はこのお話で最後です。
明日はシェフのお話を少しだけしようと思います。
ビスマス鉱山の調査も無事に終わり、俺達は最後の鉱山に向かう事になった。
色々あったけどな、まぁ無事に終わって良かったよ。ビスマス鉱山からまた何日もかけて次の鉱山に向かう。
次の鉱山は北の山脈に少し入り込んだ場所にある。冬は雪に閉ざされる為、夏しか稼働していないし夏しか鉱山に入れない。
オリクト鉱山。管理しているのは鉱山のある地の領主、スターリ・オリクト伯爵、55歳の年長者だ。
「オリクト伯爵とは学園時代に交流がありました。よく医学談義をしたものです。懐かしいですな」
ほう、レピオスの知り合いか。
「レピオスと同級生なの?」
「いえ。私の方が2歳上です。もう何十年も会っておりませんので、どうなっているか楽しみです」
ほうほう、何十年てスゲーな。てか、レピオスの知り合いなら俺も楽しみだ。
馬車は鉱山へ向かう為の最後の町に到着した。鉱夫達がいる町だ。ここからは、馬に乗り換える。この先の道は、馬車が通れる程の道幅がないんだ。
俺が馬車を降りると、クーファルがやってきた。
「リリ、父上から連絡があった」
何だ? 何かあったのか?
「それが、一時的に少し城に戻る様にと言う事だ」
げげッ! 何でだよ! ここ迄来てさぁ!
「兄さま、そんな折角ここ迄来たのに」
「私もそう言ったんだが、テュールの婚約が決まったそうなんだ」
「ええーッ!! テュール兄さま、そんな感じ全然なかったですよ!?」
ビックリしたぜ! マジかよ! テュール、いつの間に!
やっぱ、イケメンは怖いね。そんな気ありません。て、顔してたのにさぁ。あー、やだやだ。
「リリ、それで転移して戻って来いと言うんだ」
「兄さま、本当ですか? 何て面倒な」
「まったくだ。父上は計画性が全くない」
「本当ですね! もう、こっちの身にもなって欲しいです!」
マジで、面倒だ。調査が終わってからでも良いじゃんか!
「リリの作った転移玉だと、一度行った所には転移できるのだろう? だから、ここから転移してまたここに戻ってくる事になる」
「兄さま、何人戻るのですか?」
「そうだね。私とリリと、ソール、ニル、ラルク、オクソール、リュカ、シェフだ。後はこの地を治めている伯爵邸で待機だ」
伯爵と言うと、オリクト伯爵か。レピオスの後輩だな。まあ、仕方ない。父が言い出したのだからな。
「兄さま、分かりました。それ位の人数なら転移玉を使わなくてもボクとユキで転移できます。10名迄は転移を確認しています」
「リリ、そうなのか!? そんなにリリは転移できるのかい?」
「はい。ルーとシオンに教わりました」
「じゃあ、シオンも転移できるのか?」
「いえ、シオンは魔力量が足らなくて出来ません」
「そうか。いつの間にそんな事を出来る様になっていたのか。兄様は驚いたよ」
あれ? ちょっとクーファルの目が怖いぞ?微笑んでいるのに目が笑っていない。
「リリ、そんな大切な事はこれからは兄様に教えてくれないかな?」
「あ……はい。すみません」
やっぱ、ちょっと怒ってたよね?
「じゃあ、用意ができ次第頼めるかい?」
「はい、兄さま。分かりました」
おー、クーファル怖いよ。まるでセティみたいだった。
俺は、ニルとラルクに説明する。
「はい。オクソール様から連絡がありました」
「ニル、急でごめんね。用意してくれる?」
「はい。畏まりました。殿下とラルクは昼食を食べて来て下さい」
「うん。分かった。ありがとう」
ラルクと一緒に食事に向かう。
「殿下、お食事はあちらの宿屋でとります」
「リュカ、ありがとう。リュカも食事して用意してね」
「はい。急ですね」
「本当にね。父さまは何を考えているのか。帰ってからでも良いじゃんね」
「顔合わせをなさりたいのでしょう?」
「別にさ、クーファル兄さまとボクがいなくても出来るじゃん」
「ご兄弟が揃われる方が良いのではないですか?」
「本当、迷惑だよ」
「リリアス殿下、私はこちらでお待ちしております」
レピオスがやって来た。
「レピオス、もう話を聞いたの?」
「はい、先程。オリクト伯爵邸でお世話になるそうなので、私はゆっくりできて丁度良いです」
「そうだね。後輩と思い出話でもしていてね。ボクは本当に迷惑だ」
「殿下、仕方ありませんよ」
「レピオス、分かってるけどさぁ」
と、ブツクサ俺は文句を言いながら宿屋に向かう。
宿屋で食事と言う事は、流石にシェフの料理は無理だろうな。
「殿下! こちらです!」
シェフが宿屋らしき建物の前で手を上げている。
「昼食はシチューにしました。夏なのにこの辺は涼しいですからね」
シチューにしました。て、シェフの料理なのか? 作ったのか?
「シェフの料理なの? まさか、作ってないよね?」
「はい。マジックバッグに入れて沢山持って来てますから」
なるほどね。どんだけ入れてんだか。まあ、俺は美味しいシェフの料理を食べられるから良いんだけどな。
「さあさあ、こちらです。お座り下さい」
「あれ? 兄さまは?」
「直に来られると思いますよ」
そうか。クーファルが来る迄待つとしよう。
「リリ、待たせたかな?」
直ぐにクーファルが慌てて入ってきた。
「いえ、兄さま。ボクも今来たところです」
て、何だ? 外が騒がしいぞ?
――クーファル殿下が来られてるのよ!
――私、見たわよ! もう、カッコよすぎ! 信じらんない!
――リリアス殿下もご一緒ですって!
――そうそう! お人形の様に可愛らしい方だったわ!
――え! あなた見たの!?
――ええ、もう間近で!
――ズルいわ〜!
あ〜……なるほど。クーファル揉まれていたんだね。
「リリ、私はもう婚約したんだけどね」
「兄さま、それとこれとは別みたいですね」
「みたいだね。落ち着くと思ったんだが、甘かった様だよ」
「兄さまは人気者ですからね。兄弟でダントツで1番じゃないですか?」
何だ? クーファルがキョトンとして俺を見ている。
「リリ、何を言ってるんだい? 1番はリリだろう?」
「兄さま、どこがですか?」
クーファル、何言ってんだ? 外の女子の声が聞こえなかったか?
クーファルカッコいいと言ってただろう?
「リリは老若男女だからね」
「え? そうですか?」
「ああ。私はピンポイントだが、リリは全年齢だからね。しかも男女関係ない」
マジか? 知らなかったよ、俺。
「さあさあ、食べて下さい」
シェフがシチューを持ってきてくれた。
俺達は、シェフの美味しいシチューを食べて城に転移して戻った。本当、迷惑な父だ。
此処まで読んで頂き有難う御座いました。
来週からとうとう最終章に突入します。
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