346ー和やかな時
「コクン……コクコク……うま」
「殿下……」
ん? ラルク何だよ? あれれ? ちょっと場違いだった? つい、声が出ちゃった。ごめんよ。
「ウフフ。リリアス殿下は本当にりんごジュースがお好きなんですね」
ルティーナが言った。
「うん。大好き。何でもそうだけど、好きなものを我慢したりするのって辛いよね?」
あらら? 何で沈黙するかな?
「子爵だからと気にし過ぎては駄目。ハルコスがこの先、功績を上げたら爵位も上がるかも知れない。子爵より上の貴族だって、簡単に爵位を無くす事だってあるんだ。そんな事で人の価値を決めては駄目だ。
それよりも、ルティーナと手を取り合って領地を盛り立てて行けば良い。お互いを想い合って幸せな家庭を築けば良いんだ。選択を間違えたら駄目だ」
「リリアス殿下。有難うございます」
ふふん。ハルコス、いいって事よ。ちょっと良い事言っちゃっただろ? 言っちゃったよ。
「これ、ボクのシェフがルティーナ嬢の為に作ったマカロンて言う新しい菓子なの。まだ帝国の誰も食べた事ないんだよ。ピンクで可愛いでしょ? 食べて。とっても美味しいから!」
「まあ! そうなんですか!?」
そうなんだよ〜! ルティーナ嬢が食いついてくれたよ。
確か卵白を使ったんだよな〜て、程度のフンワリした内容でここまで完成させるシェフは凄いんだぜ。
俺は本当はスィートアップルパイが1番好きなんだけどな。
「まあ! 軽いのにモチッとしていて美味しいです!」
「でしょ〜!」
良い感じだ。この二人が幸せになってくれる事を祈るよ。
「本当に……殿下が仰る通りです。好きなのに、我慢するのは辛いです。いつもより鍛練して疲れて誤魔化しても、駄目でした。諦めようとすればする程、何であんな男と婚姻するんだよ、て思ってしまいました。こんな事ならと後悔しました。
その上、あんな婚約破棄なんかされて。俺は何を我慢していたんだ? て、落ち込みました。だから、我慢するのは止めました。俺は、ルティーナと婚姻したい。一緒にいたいです。誰にも渡したくない」
おや、ラブラブじゃねーか。よく諦めようなんて思ったな。
「僕もハル兄が良いよ」
「そうね。ルティーナが幸せになる事が1番だわ。ね、あなた」
「ああ。すまん」
伯爵、立場ねーな。仕方ないさ。やらかしちまったもんな。しかも、特大のやつをさ。
「私はもう外で酒を呑むのは止めるよ」
「ロウエル伯爵、ルティーナ嬢、今ほど贅沢は出来ないかも知れません。この先、良い時ばかりではないでしょう。
しかし、息子は生涯ルティーナ嬢だけを大切にすると思います。なんせ、子供の頃からずっとですから。
本当に、いくら交流があったからとは言え、まさかあの伯爵家の子息とは夢にも思いませんでした。怪しい噂がありましたから」
「え? 子爵、そうなの?」
「はい。突然金回りが良くなって派手になりましたから」
「ロウエル伯爵、駄目だね」
「リリアス殿下、もう勘弁して下さい」
「アハハハ。でも、おめでとう! 二人で幸せになってね!」
「殿下! 有難う御座います!」
「殿下、必ず幸せになります!」
うん、うん。良かったよ。
「妹にも散々叱られました」
「ああ〜、ターナは言うだろうな」
ハルコスの下に妹がいるらしい。エスターナ・ビリューザ。12才。通称ターナ。
このハルコスの妹と、セルジャンの妹マーリエ・ビスマスと、キースの弟リンドが同級生らしい。
成績も、3人で学年の1番から3番だそうだ。よく出来た弟妹だよ。
しかも、女の子2人がしっかり者らしい。なんだよ、リンドの奴。お前は両手に花状態なのかよ。許せんな。
「ターナの方がしっかりしてるもの」
あらら、ハルコス言われてるよ? どうすんの?
「うちは女性の方が強いので。ハハハ」
あらら、子爵はもう諦めちゃってるよ。
「女の子は口が達者ですから」
「あー、そう言えばそうかも。父さまより、母さま。母さまより皇后様かな」
「陛下がそうなのですか!?」
「あ、言っちゃった」
「アハハハ! リリアス殿下は本当に可愛らしい。天使ですな!」
「えぇー! 伯爵、止めてください。どこがですか!」
「父上、殿下は自覚がないんですよ。時々、ボケボケになりますし。掴めません」
「まあ! こんなに何もかも可愛らしいのに!」
「ルティ、可愛いは駄目」
俺はまだ短い人差し指を立てて横にプルプルと振る。
「殿下、駄目なのですか?」
「うん。フレイ兄さまもクーファル兄さまも、最近じゃあテュール兄さま迄カッコいいって、言われてるし。フォルセ兄さまは別格で妖精さんだし。ボクは1番チビだから、いつまで経っても可愛いなんだ」
「可愛いも褒め言葉ですよ?」
「イル、でも駄目。ボクはカッコいいが良いの」
「アハハハ! カッコいいが良いのですか!」
「アハハハ! なんと!」
伯爵も子爵も笑うんじゃねーよ。結構深刻だよ? 1番末っ子の悩みだよ。
「ご兄弟仲が良くて、リリアス殿下は兄殿下方に可愛がられておられるのですな」
可愛がってくれてるのは有難い。それは感謝だ。だけど、それとこれとは別さ。
「そう言えば、殿下。今回はお手柄だったそうで」
ビリューザ子爵が突然俺に振ってきたよ。
「お手柄? 別に大した事してないよ?」
俺はマカロンを食べる。うまッ! よくこのクオリティの物を作ったよ。
俺は卵白と食感と中にクリームを挟む位しか言ってないぞ? シェフはやっぱ天才。
「もう、噂になってますよ? 殿下をお守りしている真っ白の神獣に乗って、特大の攻撃魔法で撃退されたと。オクソール様や殿下の護衛の方達も、とんでもなくお強かったと」
「えー!? 誰か見てたの!?」
「さあ? どうでしょう?」
「殿下、ユキですか?」
「うん、イル。確かにユキに乗ってたんだ。だってボクはまだチビだから、オク達に付いて行けないもん」
「やはり、神獣が!?」
「ビリューザ子爵、そうだよ。ユキヒョウの神獣でユキて言うの」
「まあ! ユキちゃん強いのですね!?」
ルティーナ嬢、そうなんだよ。ユキは超強いんだ。
「殿下、そう言えばユキは?」
「ああ、イル。多分ね、シェフの所だよ。きっとマカロンを大量に食べているんだと思うよ」
「神獣が菓子をですか?」
「子爵、そうなんだ。ユキはシェフの菓子も料理も大好きなんだ。そんなに食べてたら太っちゃうよ、て言っても聞かないんだ」
「神獣が太りますか?」
「もうね、そう思う位食べるの。お腹がプクプクの神獣なんて見てらんないよね?」
「アハハハ! プクプクですか!?」
マジさ。本当さ。凄い食べるからな。
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すみません。
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