342ー一夜明けて
「実は殿下。私達はセルジャン様のお祖父様にお仕えしておりました」
「そうだったの?」
「はい。私は元々この村の出身なのですが、子供の頃からお側に置いて下さり色々教えて頂き学園にも通わせて頂きました。妻は大奥様に仕えておりました。私達が婚姻してキースが産まれた頃に私の父が病に倒れたので、村に戻って参りました。
セルジャン様とキースは、乳兄弟になりますが2人が赤ちゃんの頃にこちらに戻ってきたので、学園で偶然仲良くなったと聞いて驚いておりました」
「あー、それでお姉さんもセルジャンの家に?」
「はい。そうです。セルジャン様の妹君のマーリエ様のお世話をしております」
なんだ、そうなのか。それなら納得だ。
「マーリエはいつも2番なんだよ」
「リンド、2番て?」
「リリアス殿下、成績だよ。いつも2番。それに、凄いしっかりしてるんだ。いつも色々お世話してくれる」
「へえ、優秀なんだね」
「1番は僕だよ」
「あら。凄いね」
自慢かよ、自慢なのかよ! しかも、いつも女子に世話してもらってるってか。小さいのに、リア充かよ。
「リリ、私は午後から村長に話をしに行くけどリリはどうする?」
村長かぁ。俺が行く必要はないよな?
「レピオスはどうするの?」
「私は、薬草を見に行こうと思っております」
「じゃあ、ボクはレピオスと行く」
「もう危険はないと思うが気をつけなさい。念の為、リュカとユキと一緒にいるんだよ」
「はい。分かりました」
「じゃあ、俺案内するよ」
「キース、ありがとう」
「俺達も行くよ。もうイルの姉さんの事も解決だろうしな」
「ああ、セル。伯爵家も男爵家も終わりだって言うし」
「イル、セル、そうだね。何か凄い事になってしまったけど」
「リリアス殿下、自業自得だよ」
「セル、そうだね」
本当に、自業自得だ。馬鹿な事をしたもんだ。目先の金に目が眩んだのかね。人の命を何だと思っているんだ。
あ、何か腹が立ってきたぞ。
「リリ、言っただろう? 気持ちを掛ける必要はないよ」
「はい、兄さま。そうでした」
食事を終えて、一度部屋に戻る。レピオスも一緒だ。
「レピオス様! 来られたのですか」
「ラルク殿もご無事で良かったです」
「はい、ありがとうございます」
「昨夜はラルク殿もご一緒だったとか」
「はい。初めて殿下の魔法を間近で見ました。とんでもないですね」
なんだよ、ラルク。昨夜は全然そんな感じじゃなかっただろ?
「殿下は飛び抜けてらっしゃいますからね」
「はい。本当に」
なんだよ、2人して。俺は普通だよ?
「失礼します。殿下、行きましょう」
「うん、キースお願いね」
「殿下、私もご一緒します」
「うん、ラルク。ユキ、行くよ」
「ああ」
腹八分目にするとか言っていたクセに、満足そうに寝そべっていたユキがのっそりと身体を起こした。
キースと、イル、セルの案内で薬草を見に小川に向かう。リュカも一緒だ。
昨夜は夜中だったからな。あの後、どうなってるかなぁ?
「ユキ、お昼美味しかった?」
「ああ、リリ。シェフの料理は何でも美味い」
「うん。美味しいね。お腹いっぱいになった?」
「ああ。満足だ」
「ユキ。腹八分目にするとか言ってなかった?」
「そうだったか?」
あらら、シラを切ってるよ。
「殿下、ユキはカッコいいですね」
「イル、そうでしょ?しかも超強いんだよ」
「ユキヒョウでしたか?」
「うん。イル、そうだよ。ユキヒョウの神獣だよ」
「スゲーな。ユキヒョウを見るの初めてだけど、神獣も見たの初めてだ」
まあ、そういないよな。俺だってユキが初めてだ。
「男爵が関わらなければ平和な長閑な村だったのでしょうね」
「レピオス、そうだね」
昨夜の事で、騎士団が後処理で動いている事もあって、村の中はまだ少し騒然としている。
村人達もあまり外には出てきていない。
「この村は、他の薬草や花も育てているんです。あのアカザと言う薬草は人工的に育てる事はできませんが、自然の育成を助ける事はできるんです。ですから、それを管理しながら他の薬草や花も育てています。
それを売った利益で税を払い、生活しています。自分達が食べる分位の小麦や野菜は育てています。特に裕福と言う訳ではありませんが、困っている訳でもなく満ち足りていると俺は思っています」
「キース、そうなんだ」
「はい。うちの両親の様に貴族に仕えている者もいます。勉強をしたかったらできる環境に進めますし、村長や大人達は俺達の意志を尊重してくれます。あのザントス男爵が来るまでは本当に平和だったんです」
馬鹿な貴族のせいで、平和な村を騒がせた。本当に何をやってるんだよ。
「殿下、あの小川の辺りですか?」
レピオスが前方に見えてきた小川を指す。
「そうだよ。あの一帯全部なんだ」
昨日の昼間は赤紫の花が咲き乱れていたが、昨夜暴れたせいで花が散ってしまって殆どない。
「これは……見たらシャルフローラ様が飛び上がって大喜びなさるでしょうな」
「レピオス、そうでしょ? こんなに群生しているのは珍しいよね?」
「はい。余程ここの土と気候に相性が良いんでしょうね」
「キース、この小川沿いによく自生してるの?」
「そんな事はありません。この辺ではここだけです。後は、もっと上流だと親父が言ってました」
へぇ〜、レピオスが言った様に相性が良いんだろうな。
「この地で咲いて、種が落ちてまたこの地に咲いて。普通は土が痩せたりするのですが、茎と花をそのまま土に返す事で土も痩せず循環しているのでしょう」
なるほどね。自然は偉大だって事だね。よく分からんが。
「リリ、サーチを」
「え? ユキどうしたの?」
「殿下、とにかくサーチして下さい」
「リュカ、分かった」
俺は、サーチを広げる。
何だ? 単騎か? ほんの数人か? 急いで移動してくる馬があるな。
「リュカ、馬がこっちに来る。ほんの数人だけど」
「分かりました。皆さん私の後ろにいて下さい」
そしてリュカはマルチプルガードを展開する。
遠くに小さく見えてきた。3人か? 馬でこっちに向かってくる。
「クソッ! どうなっているんだ!? あれだけの人数だったんだぞ! 何で焼き払っていないんだ! 花もないじゃないか!」
あー、こいつは昨夜の襲撃犯の親玉か?
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久しぶりにレピオスを出演させられてちょっと嬉しい。
ルーの出番が全然ないので、思案中です。
精霊なのに。とっても重要なのに。どうしよう。