340ー待ってたよ
「殿下、目が覚めたらいらっしゃらないのでビックリしましたよ」
「イル、ごめん。急襲だったから」
「あの大きな音ですか? 大丈夫でしたか?」
「イル様、あれは殿下の魔法ですよ」
「え? リュカさん?」
「あの大きな音は殿下の攻撃魔法です」
「…………!!」
あー、ほらリュカ。イルマルが固まったよ。どーすんだよ。
よっこいしょとソファーに座って、俺はりんごジュースを飲む。
「コクン……コクコク」
あー、動いた後のりんごジュースは格別だね。
「激うまッ」
「プハハッ、殿下。寝る前にあまり甘いものをとらない方が良いですよ?」
「だってリュカ。お喉が乾いたの。りんごジュースは激ウマなの」
「アハハハ! 殿下、ご無事で何よりです!」
「キース、ありがとう」
「騎士団が到着して後始末をしています。明日になったらクーファル殿下が来られるので、その頃には大体分かっているでしょう」
「リュカさん、じゃあ今は何も分からないの?」
「そうですね。ただ、男爵の力だけであの人数は集められないでしょう」
「キース、とにかく明日兄さまが来てからだよ。ボクももう寝るし。みんなも寝よう。まだ夜中だ」
「殿下、でも……」
「キース、大丈夫だよ。兄さまなら悪いようにはしない」
「殿下、分かりました」
さあ、寝ようぜ。はいはい、さあ、みんな寝よう。俺はさっさと部屋に戻る。
「殿下、良いんですか?」
「だってリュカ。確実な事はまだ何もないからね」
「まあ、そうですが」
「リュカもおつかれ様。怪我がなくて良かったよ。少しは寝てね」
「はい、ありがとうございます。では、殿下、ラルク様、失礼します」
リュカが部屋を出て行った。きっとまたオクソールの元に行くんだろうな。少しは身体を休めてほしいな。
「殿下、着替えて下さい」
「うん、ラルク」
そして俺は、ラルクにオートで着替えさせられてベッドに入った。
いやぁ、まるでニルみたいだ。助かるわ〜。
翌日、起きたらかなり朝寝坊してしまった。
ラルクは……? 起きてるのか? いないぞ?
「殿下、お目覚めでしたか。すみません、シェフの所に行ってました」
「うん、おはよう。ラルク寝た?」
「はい。寝ましたよ」
なら良いけどさ。ラルクだってまだ子供なんだから。しっかり睡眠はとってほしいよね。
「殿下、軽く食べられますか? また直ぐにお昼になりますが」
「ん〜、少しで良いや。お昼にちゃんと食べるよ」
俺は身支度をしながら答えた。
「はい。お待ち下さい」
ラルクがドアを開けるとそこにはシェフがいた。
こう言うの、久しぶりじゃねーか? ドアの外にシェフが待っているのなんてさ。
「殿下、パンケーキです。小さめにしてます」
「うん、シェフ。ありがとう。ラルクはもう食べたの?」
「はい。頂きました」
シェフが作ってくれた、パンケーキを食べる。
ウマウマだ。りんごジュースも美味いぜ。
「兄さまはいつ頃来るのかなぁ?」
「殿下、もう直ぐだと思いますよ」
「そう?」
「はい。オクソール様が表で待っておられますから」
「そうなんだ。兄さまも早いね。モギュモギュ。ユキは?」
「調理場です」
「また?」
「はい。またです」
その時ちょうどユキがノソノソと部屋に戻ってきた。
「リリ、起きたか」
「うん。ユキずっと食べてたの?」
「そんな訳あるまい」
「ふぅ〜ん」
「そのパンケーキと言うものは美味いな」
「パンケーキ貰ってたの?」
「ああ。シェフが焼いていたからな」
なんだよ、やっぱずっと食べてんじゃん。
「ユキ、太るよ?」
「リリ、何を言うか。我が太る訳なかろう?」
「いやいや、食べてばっかだと普通に太るよ?」
「…………」
まあ、好きにすれば良いけどさ。太いユキヒョウの神獣て、全然カッコよくないよね? と、俺は思うよ?
「…………」
「アハハハ! ユキ、間食をやめて一食の量を少し減らしたらどうですか?」
「ラルク、間食とはオヤツか?」
「そうですね」
「それは駄目だ。シェフの作るオヤツは外せない」
「あー、シェフのオヤツは美味しいもんね〜。でもさぁ、ユキ」
「リリ、何だ?」
「お腹がぷよぷよの神獣って、どうだろう……?」
「ぷ、ぷよ……」
「うん。やっぱさぁ、ユキヒョウだしぃ、神獣なんだしぃ。ぷよぷよはないよね〜」
ぷぷぷ……! ユキ、こんな事言われてどうするかなぁ?
「む……満腹をやめよう」
「え……?」
「腹八分目と言うではないか」
「あぁ……」
「食事もオヤツも満腹を止めて、腹八分目にしよう」
「ユキ、食べないと言う選択肢はないんだね?」
「リリ、シェフの料理は美味い」
「そうだね……」
ユキさん、本当にシェフの料理がお気に入りなんだね。うん。もう、何も言わないよ。まぁでも、昨夜は俺とラルクを乗せて大活躍だったからな、今日はヨシとしよう。
――コンコン
「失礼します。殿下、クーファル殿下がお着きになられましたよ」
「リュカ、ありがとう。行くよ」
クーファルが来たらもう安心だぜ! 俺は、リュカの後をラルクと一緒に付いて行く。ユキも俺の横にいる。
「失礼します。リリアス殿下をお連れしました」
リビングのドアを開けると、そこにはなんと……!
「リリアス殿下、お怪我もない様で安心致しました」
「レピオス! なんだ! 来てくれたの!? どうやって!? レピオス!」
リビングに入ると、クーファルの横に座っているレピオスがいたんだ!
超嬉しい! なんだよ、なんだよ〜! レピオス、来るなら一言言ってくれよぉー! 嬉しいぜ! 思わず走り寄ってしまったよ!
「アハハハ。リリ、落ち着きなさい」
「兄さま! レピオスを呼んでくれたのですか!?」
「ああ。薬草の事もあるからね」
「実は、麻薬のお話を聞いた時に直ぐに来たかったのですが、シャルフローラ様が来ると仰って聞かなかったのです。なんとか説き伏せて諦めて頂きました。それで、少し遅くなってしまいました」
「あー、だって麻薬と言っても薬草だもんね」
「そうなんですよ。どこからか、聞かれたらしくて。本当に困りました」
「どうやって説き伏せたの?」
「はい。説き伏せたと言うか、フレイ殿下が懇々と言い聞かせて下さいました」
「アハハハ! フレイ兄さまが!? 見たかったよ」
「あれはシャルフローラ様の悪い癖ですね。薬草となると見境が無い」
「アハハハ! レピオスまで! 疲れてるじゃん!」
「殿下、そう仰いますがね、本当に大変だったのですよ」
「ありがとう! レピオスが来てくれて嬉しいよ! 本当に心強い!」
「おやおや、こんな老いぼれにそう言って下さるとは、嬉しいです」
「何言ってんの! まだまだレピオスは若いよ! ボクの師匠なんだから、宜しくね!」
「はい、殿下。ありがとうございます」
あー、レピオスのこの安心感よ! 嬉しいねー!
久しぶりの登場、レピオスです。
覚えて頂けているのかちょっと心配。
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