338ー敵襲
「そんな事より、村の薬草が原因なんだろ? それが、どうなるかだよ」
「キース、勘違いしたら駄目だ。あれは薬草なんだ。ちゃんと、薬効があってそれが必要な人達もいるんだ。今迄通り、花を廃棄して葉だけ売っていれば良い事なんだ。それを悪用する奴が悪いんだ。何でもそうだよ。使い方だ」
「うわ……皇子っぽい」
いや、ぽいじゃなくて皇子だよ!
「てか、オクソールさん。今連絡があったって何スか?」
キース、本当スルーしてくれよ。よく気が付く子だよ。
「殿下が、離れた場所にいる人と話せる魔道具を作られて、それを皆付けているんですよ。それで、連絡がありました」
「そんなのあんの!? 殿下、見せて!」
「キース、ボク付けてないもん。作っただけ」
「はぁ!?」
「だからね、作っただけ。オクとリュカとシェフが耳にピアスを付けてるでしょ? あれが、魔道具なの」
りんごジュースを飲もう。俺は、またマジックバッグからりんごジュースを出した。
「コクコクコク……」
「殿下、さっきからそれ何スか?」
「キース、普通のりんごジュースだよ。飲む?」
「いや、いらないッス」
なんだよー。いらないのかよ。
「ねえねえ、リリ殿下。僕はりんごジュース欲しい」
「そう? じゃあリンドにはあげる」
「ありがとう!」
なんかさ、リンドって幼くないか? 俺より年上だぞ。
「殿下、ポヤポヤしてますがこう見えてリンドは成績優秀なんです」
「イル、そうなの?」
「はい。この兄弟は本当にムカつく位成績が良いんです」
そりゃあ、学費免除制度が利用できる位だもんな。スゲーな。
「キース、お姉さんも賢いの?」
「いや、姉貴は母さんみたいな感じでフワフワしてる。高等部も行ってないし」
「へえ、じゃあ2人はお父さん似?」
「そうッスね。親父は村で1番ですから」
スゲーじゃん!
「殿下、夕食にしませんか?」
シェフ、良いタイミングだよ。
「うん、シェフ! お腹空いた!」
「はい! では皆様、夕食にしましょう!」
皆で和やかに夕食を食べた。
イルマルとセルジャン、キースは怖い思いをしたけど、大丈夫そうだ。
そして、俺も一部屋もらってラルクと一緒に寝る用意をする。
「ラルクと一緒に寝るなんて初めてだね」
「はい、恐れ多いです」
「なんでだよ、気にしないでいいよ」
――コンコン
「殿下、宜しいですか?」
「うん、オク。何か分かった?」
「いえ、殿下が仰っていた様に雇われただけですね」
オクソールが言っているのは、今日の昼間に襲ってきた奴等の事だ。
「そうか」
「あの花が咲いている場所に来る不審な人物がいたら、蹴散らせと言われていた様です」
それで、俺達が襲われたのか。
「オク、でもまだ背後が分からないよね?」
「はい。男爵なのか、伯爵なのか」
「うん。また来ると思う?」
「はい。来るでしょう。今日の事で強硬手段に出る可能性もあります。どうやら、離れた所に連絡役の者がいたらしいです」
なんだよ、コエーな。
「騎士団がかなり早く移動しています」
「そうなんだ」
「夜半には到着するでしょう」
「じゃあ、それまでどうするかだね」
俺はあれからずっとサーチを展開している。
「まだ異変はありませんか?」
「うん。大丈夫」
「念の為、リュカとシェフが小川の近辺に潜んでます。殿下とラルク殿はユキの側を離れない様にして下さい」
「分かった」
「私はこの家の近辺を注意しておきます。で、殿下」
「うん、何?」
「まだ、この魔道具の予備はありますか?」
オクソールが耳につけているピアスを指差す。
「うん、あるよ」
「では、ラルク殿へ」
「分かった」
俺はマジックバッグから魔道具を出してラルクに渡す。
「魔力を込めたら話せるからね」
「はい、分かりました」
ラルクがピアスをつける。俺もピアスの穴開けよっかなぁ。
「今夜来るとは限りませんから、殿下はお休み下さい」
「うん。オク、ありがとう」
オクソールが部屋を出て行った。
何もなければ良いけどな。しかし、それは楽観的過ぎる気がする。
俺の予感は的中した。
まだほんの数時間でも寝れただけマシか。
『リリ! 来るぞ!』
俺は、ユキの念話で目が覚めた。
「ラルク、来るよ! オクに魔道具で知らせて!」
「はい! 殿下!」
俺とラルクとユキは皆を起こさない様に静かに家を出た。
サーチを展開する。結構な人数が村に向かって来ている。
オクソールは既に小川に向かっているな。俺達も向かう。
「殿下、オクソール様が言ってらした強硬手段ですか?」
「そうだろうね。あの花が群生している小川に向かっている」
焼き払って証拠を隠滅するつもりなのだろう。
「でもなぁ……」
「殿下、どうされました?」
「うん。男爵はさぁ、令嬢の学費もない位だったんでしょ? いくら麻薬で儲けたとしても、こんなに人を雇える程お金があったのかなぁ? て、思ってさ」
「では、伯爵も関係していると?」
「そう考える方が自然だよね?」
小川が見えてきた。
リュカとシェフがずっと先で賊を迎え撃っている。
花が咲いている場所まで来させ無い為だろう。
サーチに反応があった。クソッ! どんだけいるんだよ!
「オク! 小川の対岸からも来るよ!」
「はい! 分かりました!」
とにかく、騎士団が到着するまでこの人数で迎え撃つしかない。
「ユキ! ラルク様! 殿下の側を離れないで下さい!」
「任せろ」
「オクソール様! 分かりました! 必ずお守りします!」
とりあえず、俺はシールドを展開する。
もう少しだ。もう少し近くに来い!
「殿下、見えてきましたね」
「うん。やっぱ花を焼くつもりみたいだ」
小さく見えてきた賊は皆、火矢を持っていた。
「ラルク、小川の対岸の敵に近付かない様に3人に言って」
「はい!」
俺は待つ。まだだ。まだまだ引き付ける。
そうして、人影がハッキリと肉眼で見える様になった頃。
俺は両手を、小川の対岸に向ける。
『ウォーターストーム』
大雨の嵐が賊を襲った。よし、これで火は消した。
「オクー! いいよー!」
「了解です!」
オクソールがびしょ濡れの賊へと向かって突っ込んで行った!
「ユキ! 行くよ!」
「ああ!」
「ラルク! 乗って!」
「はい!」
ユキは俺とラルクを乗せて、小川を一気に飛び越えてオクソールの後を追った。
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