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337ーボケボケ?

「ごめんなさい」


 俺は潔く頭を下げる。いや、潔くもないか。すっとぼけていたし。


「いやいや、殿下。止めて下さい」

「だってキース、迷惑かけちゃった」

「そんな事ないですよ! シェフさんにとっても美味しい料理をご馳走様してもらいましたしね」


 お母さんはシェフの料理で釣られたか?


「リリ……」

「ユキ、何?」

「リリ、頼む」

「あー、はいはい」


 キースの弟がユキに抱きついて離れない。


「キース、お願い」

「あぁ? リンド、離れろ」

「いや」

「リンド」

「だから、いや」

「リンド、離れなさい」


 お母さんが言った。


「だってお母さん! 超フワモフなんだよ! 極上だよ! しかも良い匂いがするんだよ!」

「え? そうなの?」

「うん!」


 駄目だ。増えたよ。お母さんまでユキに抱きついちゃったよ。


「あー、ユキ。もう少し良いでしょ?」

「リリ……仕方ない」


 どこに行ってもユキさんは人気者だね。


「リリ、それは違う」


 ユキにまで突っ込まれたよ。


「で? 何でその第5皇子のリリアス殿下がいるんだ?」

「えっと……興味?」

「なんでだよ!」


 キースったら、ツッコミが激しいね。


「殿下、私から」

「うん、オク。お願い」


 オクソールがここ迄来る間の流れを説明してくれた。

 たまたま、イルマルの領地の鉱山に調査に来ていた事。

 そして、イルマルの家のロウエル伯爵邸にお世話になっている時に、姉の話を聞いた事。

 そこに、イルマルとセルジャンが帰ってきてこの村に調べに行くと言うから付いてきた事。


「で、何でわざわざ付いて来たんスか? リリアス殿下」


 キースのリリアス殿下と言う部分に怒りを感じるのは何故だ?


「え、だから……興味?」

「いや、殿下。それだと理解できないでしょう!」

「リュカ、そう?」

「そうッスよ。何でここでボケボケなんスか!?」

「え? ボク、ボケてないよ?」


 だって一言で言うと興味なんだから仕方ないじゃん。


「だから、イルマル様のお姉さんの婚約破棄が理不尽だとか。男爵が直ぐに編入の学費を払えたのがおかしいとかあるじゃないスか!?」

「ああ、それ? そうだね」

「それを言って下さいよ!」

「ブハハハ! リリアス殿下ていつもこんなんスか?」

「キース様、いつもじゃないです。いつもはとても聡明な方なんです。ただ、時々ボケると言うか」

「うわ、ラルクまでそんな事言う!?」

「まあ、事実ですし」

「あ、ラルク。もしかして、また自分だけ置いてかれたから怒ってる?」

「まさか! 殿下、私はそんな事を根に持ったりなんてしませんよ! そうですよ。またまた私だけ蚊帳の外だったなんて思ってませんよ」


 あら、これは思ってるよね?


「キース、それでどうなんだ? どうしてお前達は襲われたんだ?」


 そう! そうだよ、お父さん! そこだよ!


「リリアス殿下、何でですか?」

「え? キース、分かってないの?」


 マジかよ。俺、説明するよ。

 襲われる前に俺はキースにあの花の事を説明した。

 あの花は麻薬だ。それを分かっていて、男爵は収穫して行った。その上、もっと育てろと言った。

 と、言う事はだ。男爵はあの花で儲けたんだ。

 しかし、麻薬だ。公にはできない。そんな花が咲いている場所に少年とは言え花の話をしている者達が現れた。

 バレたらヤバイとでも思ったんだろう。若しくは、見張りをさせていたのかも知れない。

 口封じに動いたんだ。たかが、村人だ。自分の利益の為には躊躇しなかったんだろう。


「と、言う事だと思うんだ」

「リリアス殿下、賢いんだな」


 キース、じゃあ今迄君は俺の事をどう思っていたのかな? ん?


「いや、ボケボケ皇子だと。アハハハ」


 アハハハ、じゃねーよ!


「殿下、じゃあこっちの男爵があっちの男爵に売ってた、て事ですか?」


 リュカ、こっちとかあっちとか何だよ。スゲー残念な感じするぜ?


「リュカ、それはまだ分からない。でも、可能性は高いよね」

「待って下さい。殿下、じゃあ実際に被害者がいるんですか?」

「キース、そうなんだ。こっちに来る迄の町でね」

「それは、嫌ですね。俺達の村で収穫した花がとなると」


 でも、知らなかったんだし。仕方ないさ。


「リュカ、でもあっちの男爵てそんなにお金持ってたの?」

「殿下、だからクーファル殿下が仰ってたじゃないですか。税に上乗せして横領していたって」

「ああ、そっか」

「やっぱ、ボケボケじゃないッスか」

「キース、酷いね」

「殿下、ザントス男爵が麻薬を取引していたとなると、どうなるのですか?」

「うん、イル。まあ、確実に男爵位は剥奪されるだろうね。父さまも兄さまもそう言う事には厳しいから」

「じゃあ、あの男爵令嬢は?」

「平民だね。と、言うか。男爵に任せていたペブルス伯爵も何らかのお咎めはあるだろう。だから、婚約どころではなくなると思う。ザントス男爵家はもう終わりだよ」

「それで、姉にはもうちょっかい出さないと思いますか?」

「それどころではなくなるだろうね。まあ、ペブルス伯爵がザントス男爵の麻薬売買と無関係ならの話だけど」

「殿下、どう言う事ですか?」

「セル、もしもペブルス伯爵も一枚噛んでいたのだとしたら、伯爵も爵位を剥奪されると言う事だよ」

「え!? そうなったらこの村はどうなるんですか?」

「キース、新しい領主が決まるだろうね」

「それはどんな方に?」

「そうだな。例えば、領地を持たない伯爵なりが決まるか……若しくは両隣の領地に吸収されるか、じゃないかな?」

「隣は……イルんとことセルんとこ?」

「キース、そうなるな」

「どっちにしろ、しっかり捜査してからだよ。その間は皇家の預かりになるかな? 分かんないや」

「そっか……」


 それよりもだ。


「先に目先の危機を回避しなきゃ」

「殿下、どう言う事ですか?」

「イル、まだ狙われていると言う事だよ」

「殿下、クーファル殿下がこっちに来られるそうです」

「オク、そうなの?」

「はい。今、連絡がありました。明日の朝イルマル様の家を出られるそうです。騎士団は半数が先行して既にこちらに向かっているそうです」

「そっか。兄さまが来てくれるのなら安心だ」


 それにしても、騎士団を出すのが早いな。これは、クーファルが読んでいたと言う事か。


「え? えぇ!? クーファル殿下ですか!?」

「まあ! どうしましょう!」


 お母さん、目がキラキラし出したよ?


「母さん、何だよ?」

「だって、クーファル殿下よ! 一度はお目に掛かりたいじゃない!」


 あー、はいはい。クーファルは婚約しても人気があるんだね。


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