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336/437

336ーバレちゃった

 昔からの言い伝えは馬鹿にできない。今回もそうだ。

 もしも、焼却処分をしていたら花の成分が村中に広がって中毒を起こしていたかも知れない。

 ソニアが捕まっていた地下の女性達の様にな。


「キース、男爵はその花をどうするとか言ってなかったのかな?」

「リリ、気になるのか? 親父なら知ってるかも知れない。俺はその時はもう高等部の寮に入っていたからな」


 そうか。戻って聞いてみるか。


「リリ、この花が何なんだ?」

「セル、この薬草は葉に薬効成分があるんだ。だけど、花と茎は麻薬なんだ。茎には媚薬の効果があって、花には幻覚作用がある。乾燥させて焚くか吸入するんだ」

「リリ、本当か!?」

「うん、キース。間違いないよ。この独特の赤紫の花の色が特徴なんだ」

「マジか!? じゃあ何か? 男爵は麻薬を売っていたのか!?」


 そうなるな。それだと、すぐに編入費用を払えただろう。


「リリ様! 皆様! 伏せて下さい!」


 オクソールが突然叫んだ!


「みんな! 伏せて!」


 俺は側にいたキースを引っ張りながら地面に伏せた。

 瞬間、矢が地面に突き刺さった!


「オク!」

「はい! 追跡します! リュカ! 頼んだ!」

「はい!」


 オクが返事をしながら自分の耳を触った。


「リュカ! みんなを安全な場所へ!」

「はい! リリ様も! ユキ!」

「任せろ」


 ユキが元の大きさに戻って、俺をヒョイと背中に乗せ走り出した。

 リュカがイルマルとセルジャン、キースを引っ張り起こして走り出す。


「え!? えぇッ!? どうなってんだ!?」

「キース! 早く逃げるんだ!」

「セル! キース! 早く!」

「イル! いいから走れ!」


 また、何処からか矢が飛んできた。


『シールド』


 矢はシールドに当たって落ちる。

 まだいるのか? サーチで確認する。いたぞ、木の上か!


『エアーシュート』


 俺はユキの背中から狙いを定めて空気の弾丸を飛ばす。

 ドサッと人が落ちる音がした。


「リュカ! マルチプルガード!」

「やってます!」


 その時だ!


「坊ちゃん!」

「シェフ!」


 シェフが剣を片手に走ってきた!


「シェフ! あの木の所!」

「了解です!」


 シェフが俺が言った木の下まで走る。


「走って! 村の中まで走って!」


 俺は声を上げる!


「うわー!! 何なんだー!!」

「いいからキース、走れ!」

「セル! リュカさん!」

「イル様、大丈夫です! シールド張ってます! 慌てず走って下さい!」

「リュカさん! リリ様が!」

「大丈夫です! ユキがいます! 殿下! サーチは!?」

「やってる! まだあと1人いる!」

「どこですか!?」

「小川の側!」


 リュカも俺も走りながら確認する。


「行きます! 殿下!」

「リュカ! こっちは大丈夫!」

「ユキ! 頼んだ!」

「任せろ!」


 リュカが反転して小川に走って行く。


「走って! みんな! 走って!」


 村の中をサーチする。まだいるな。


「イル、セル、キース! そこ右だ!」

「はい!」


 3人を右に逸れさせて、俺は前を見る。


「ユキ、いるよ!」

「ああ、分かっている」


 ユキは俺を背中に乗せているのに、そのまま高くジャンプした。見つけた!


『エアーシュート』


 俺は正面の木の上に潜んでいた賊を目掛けて空気の弾丸を射つ。


「グアッ!」


『アースバインド』


「ユキ、3人の所に戻って!」

「リリ、あと1人だ。」

「うん!」


 ユキが走る3人に追いつく。


「リリ様!」

「セル! そのままキースの家に向かって!」

「分かりました!」


 俺はユキに乗ったまま3人を追い越し左に曲がって走る。


「リリ、行くぞ」

「うん」


 ユキがまたジャンプして植垣を越えた。


『エアーシュート』

「グゥッ!」

『アースバインド』


「ユキ、もういないよ。大丈夫だ」

「ああ。リリ、こいつらは何だ?」


 俺は鑑定で見てみる。


「雇われかな? 元冒険者かな?」

「殿下! ご無事ですか!?」


 キースの家の前で待っていると、シェフとリュカが1人ずつ男を担いで走ってきた。よく大の大人を担いで走れるな。スゲーよ。


「リュカ、シェフ、大丈夫。村の中にもいたんだ。バインドしてある」

「了解です! 回収します!」


 シェフが担いでいた男をドサッと下ろして、俺が指差した方へ戻って行く。


「リリ様!」

 オクが男を1人担いで戻ってきた。


「オク! 大丈夫!?」

「はい! リリ様もご無事で!」

「うん、平気。オクがシェフを呼んでくれたの?」

「はい。まだ数人いる様な気配がしたので」

「うん。オクが耳を触る合図をしてくれたから分かったよ」



「で、どう言う事だ? 殿下、て何だよ?」


 俺達はキースの家のリビングで、腕組みをして立つキースに尋問されている。


「え? 何の事かなぁ〜? ね、リュカ。コクン」


 俺はりんごジュースを飲んで誤魔化す。


「はい。何でしょうね?」


 リュカが逃げる時に「殿下!」て叫んでしまったのを、キースは聞き逃さなかったらしい。

 とりあえず、リュカと2人ですっとぼけてみる。

 変な汗がダラダラ出るぜ。目が泳いでいる自覚があるしな。こんな時でもりんごジュースは美味しい。うまッ!


「コクン……ゴク」

「白々しいから。俺、ハッキリ聞いたからな!」

「何の事かなぁ〜……」

「リリ」


 いや、マジで。リュカよぉ。あんな状況で咄嗟にだから責められないけどさぁ。リュカさんよぉ。ジトッとリュカを見る。


「いやいや、俺分かんないッス」

「それだけじゃないだろ? リリ、それは何だ?」


 キースが、俺の横でお行儀良く前足を揃えてお座りをしている大きいままのユキを指差す。


「えっと……ネコちゃん?」

「なんでだよ! どこがだよ! ヒョウじゃんか! いや、それより何でヒョウが喋るんだよ!」


 キースの両親と弟が遠巻きに見ている。


「ねえ、お母さん。あれ、ネコちゃん?」

「ねえ、リンド。大きいわね」

「そんな訳ないだろ!」


 うん、キースはツッコミ体質らしいな。いや、お母さんにリンドよ。余りにもボケボケじゃねーか?


「殿下、もう無理ですね」

「オク、そう?」

「はい」

「あらら」

「もう宜しいですか?」

「うん、オク。仕方ないね」

「皆様、お忍びだったもので身分を偽っていて申し訳ありません。キースが気付いていると思いますが、こちらは帝国第5皇子のリリアス殿下に有らせられます」

「やっぱな」


 キース、やっぱ分かってたよね。


「ええー!!」


 弟くんよ、分かってる?


「皇子殿下!?」


 はい、お母さん。そうなんですよ。


「……!!」


 お父さん、何か言って!

 「有らせられます」て、なんかさぁ……どっかの黄門様みたいになってねーか? 超ハズい!


「ユキはユキヒョウの神獣でリリアス殿下を守護しています。私は、オクソールと申します。殿下の護衛です。リュカは殿下の護衛兼従者、ラルクは側近候補、シェフは殿下の専属シェフです」

「マジかよ! オクソールさん、てあの獅子の!?」

「はい、キースの言う通り獅子の獣人です。リュカは狼獣人です」


 その時、キースの弟が動いた。


「ユキちゃんかわいい!」


 ユキにポフンと抱きついた。凄いね、この子はある意味大物だよ。


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