334ー同級生
「殿下、見えてきましたよ!」
リュカが大声で言った。馬車を走らせて2日目にやっと目的の村が見えて来た。
「リュカ、だから殿下て呼んだら駄目だって」
俺は御者席にいるリュカの横に顔を出す。
「あ、そうでした。リリ様」
「プハハ。なんだか懐かしいよね」
「そうですね。もう3年前ですね」
「ねー。王子達はどうしてるんだろ」
「現王を補佐して頑張っておられるそうですよ。第2王子殿下は王国中を飛び回って、国民に狩を教えたり農地改良をされていると聞きました」
「そうなんだ。リュカ何で知ってるの?」
「セティ様が会議で話しておられました」
「会議?」
「はい。側近に護衛や従者、侍女達の会議です」
「へえ〜、そんなのあるんだ」
「ありますよ。定例会議が月1で。報告会は週1です」
ほお〜、知らなかったぜ。
「セティが頭なの?」
「そりゃそうです。皇帝陛下の側近ですから。でも……」
「でも、何?」
「まあ、然るべき家系の方々ばかりなので。親戚の集まりみたいな感じです」
「あら、リュカは大丈夫なの?」
「何がですか?」
「リュカは然るべき家系じゃないじゃん」
「ああ、俺は賑やかしみたいなもんスね。毎回いじられてます」
「アハハハ。良いじゃん。可愛がられてるんだね。良かったね」
「はい。皆さん良い方ばかりです。セティ様は怖いですが」
「あー、セティはボクでもちょっと怖い」
「殿……リリ様がですか?」
リュカ、こんな話をしていて言い直すも何もないと思うんだが。
「セティはさ、何してるか分かんないでしょ? どこまでセティの手が及んでるかも分かんないし。それがちょっと怖い」
「ああ、分かります。そこですよね。何でそんな事知ってるんだ? て、事ありますからね」
「そうそう」
「坊ちゃん、リュカ。着きますよ!」
シェフが大きな声で言った。
「シェフ! 坊ちゃんは嫌!」
さあ、村に入るぞ。まず、どこから見るんだろう?
俺達の幌馬車は、前を行くイルマルとセルジャンの馬車の後をついて行く。2人の乗っている馬車にはイルマルの伯爵家の紋章入りだ。
一目で貴族の馬車だと分かる。
馬車は村の中を進む。どこに行くんだ?
村の中央を過ぎて、1番奥に村長の家だろう大きな家が見えた。その手前を横にそれて行く。
「ねえ、リュカ。あの1番奥の家って、村長の家だよね?」
「普通はそうですね。男爵はこの村にはいないでしょう」
「だよね。治めていると言っても、きっと帝都に住んでるよね?」
「そうですね。しかし、この規模の村に男爵いりますか?」
リュカがそう言うのも尤もだ。リュカの村の方が規模は大きい。
リュカの村とは違って、この村の家は帝国のよくある家だ。
鉱石をレンガの様に加工してある物を積み上げて建てる。
「思っていたより一軒一軒が広いね」
「まあ、田舎ですから」
なるほど。前世でもそうだったな。土地が余っているからな。
「あ、リリ様。止まりますよ」
おお、着いたか。しかし、何の打ち合わせもしていなかったな。マジで、大丈夫か?
「リリ様、到着しました」
「うん、オク有難う。ラルク、降りよう。ユキおいで」
俺は小さくなっているユキを抱っこして馬車を降りる。イルマルとセルジャンがやって来たよ。
「リリ様、僕達の同級生の家です。事情も話してあります」
「イル、『様』は駄目」
「しかし、それはちょっと……」
「だってボクは商人の息子だからね。貴族のイル達よりも身分が低いの。それに歳も下だし」
「イル、仕方ない。リリ、村の中でだけそう呼ぶよ」
「うん、セル」
話していると、家の中からイルマル達の同級生だろう少年が出てきた。
「イル! セル! よく来たな!」
「キース、世話になるよ!」
「ああ、遠慮せず何日でもいてくれて良いぞ! さあ、取り敢えず皆さん入って下さい」
案内されて、後をついて入る。リビングらしき部屋に通されると、ご両親と弟らしき少年が迎えてくれた。
「紹介します。親父のグラバスです。母のシャーリー、弟のリンドです」
「初めまして、イルマルです」
「セルジャンです。宜しくお願いします。こちらは、今回協力してもらっている帝都の商人の息子さんでリリです」
「初めまして、リリです。大勢で押しかけてすみません。ボクの世話係のラルクです。護衛のオクと御者のリュカ、それにシェフ、ペットのユキです。宜しくお願いします」
「まあまあ! なんて可愛らしいんでしょう!」
「母さん! いきなりそれかよ!」
「だってキース、お人形みたいだわ! リリちゃんはいくつかしら?」
ブホッ! リリちゃんだってよ! こそばゆいぞ! リュカ、笑うんじゃねーぞ!
「ボクは10歳です。ラルクが一つ上の11歳です」
「お世話になります」
ラルクがお辞儀をした。
「世話係がいる位なら、帝都でも大店なんだな?」
お父さん、突っ込むのは止めてくれ!
「まあ、そこそこです」
「ねえ、シェフて何?」
弟よ。突っ込むな。
「私はリリ様が生まれた時からシェフをしております。滞在中はお任せ下さい。帝都の珍しい料理を振る舞いますよ!」
「おぉー! 母さん、帝都の料理だって!」
「まあ、楽しみだわ!」
「早速ですが、調理場を教えて頂いても宜しいですか?」
「はいはい、こちらです。ご案内しますわ。」
母親とシェフが部屋を出て行った。
「10歳だと初等部か?」
キースが聞いてきた。そんな打ち合わせしてねーよ。
「いえ、リリ様と私は通ってないのですよ」
「え〜、貴族っぽい。ネコちゃんかわいい!」
弟、お前はさっきから突っ込むな。ユキに夢中だな。ネコじゃなくて、ユキヒョウだけどな。
「商人はあちこちに出掛けますから。常に帝都にいる訳ではないので」
「そうなんだ。大変なんだな」
兄貴は単純で良かったよ。
「キースとは初等部から一緒で、学費免除制度で高等部に進学したヤツなんだ」
セルジャンがいきなり話題をキースに変えた。助かるよ。
「凄い。頭良いんだ」
「姉ちゃんが、セルの邸の庭師と婚姻したんだ。それで手続きとか全部やってくれて、帝都の初等部に行けた。せっかくチャンスを貰ったんだから、しっかり勉強しないとな」
「僕も兄ちゃんみたいに高等部に行くんだ!」
「凄いね。頑張って」
「うん。高等部には通うの?」
「うん、通うよ」
「じゃあ、ラルクと会うかもね」
弟、ワザとじゃないにしろ際どいとこを突いてくるな。会ったらバレるじゃん。
「さあ、皆さん。お昼にしませんか?」
シェフ、良いタイミングだよ! 助かったよ。
「シェフさん、凄いのよ! マジックバッグを持ってるの! それにね、とっても美味しいの!」
お母さん、味見したね? シェフの料理は超美味しいからね。
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