329ーロウエル鉱山の調査
いつも読んで頂きありがとうございます!
鉱山の調査が本格的に始まります。
当然、すんなりとは行きません。
リリも少し成長しています。
では、どーぞ!
「リリ、どうかな?」
「はい、兄さま。かなりの埋蔵量です。ミスリルだけじゃなく、他の鉱石も多いですね。それと兄さま、ここもやはり光源は火ですね」
「そうだね。まずはそこだね」
「はい。通気口は大丈夫そうです」
「リリ、まだ奥に行くのかな?」
「はい。1番奥まで見ておきたいです」
俺とクーファルはもう慣れたものだ。
初めて、鉱山に入るラルクはキョロキョロしている。
「殿下、火が何か問題なのですか?」
「ラルク、そうなんだ。爆発の原因になる場合があるから」
「リリアス殿下、坑道の光源も駄目なのですか?」
責任者のノゴスが聞いてきた。
「ノゴス、以前爆発騒ぎがあったのを知らないかな?」
「存じております。たしか、王国の連中が犯人だったと」
「そうなんだけど。爆弾でなくても、爆発の原因になる事があるんだ」
ノゴスとラルクに粉塵爆発を簡単に説明する。
「そんな恐ろしい事が。では、どうすれば良いのでしょう?」
俺は同行している調査員達を呼ぶ。
「替えの物を持ってきているんだ。魔石で光を出す」
調査員がマジックバッグから見本で一つ取り出して見せる。
俺は、それを既設の火を使っている物と交換してもらう様に説明する。
これは無料配布していると言う事。もし壊れたり、増やしたかったら実費で作ってもらわないといけない事。最初だけ国から支給していると説明する。
既に調査員達が設置している光源の数を数えている。
そして、魔石だから定期的に魔力を補充する必要がある。
「殿下、この鉱山には光属性を持つ者が2名程しかおりません。2名共、医療室におりますが、そう強い光属性ではないのです」
多分、ヒールで治療しているのだろう。やはり、光源の魔石と言うと単純に光属性と思うんだな。ただの思い込みだ。
「光属性である必要はないよ。何でも大丈夫だ」
「リリアス殿下、そうなのですか?」
「うん。ボクがそう作ったから」
そうさ。これも俺の内職の一つだ。
毎日毎日、チマチマと。3cm程の魔石に付与していた。もう数百個作ったね。
本当、俺を褒めてほしい。まぁ、後は魔術師団に引き継いだけどさ。
「リリ、最奥だ」
「はい、兄さま」
「リリアス殿下、どうでしょう?」
伯爵が不安気に、少し期待を含みながら聞いてきた。
「うん。この鉱山は埋蔵量のほんの少ししか採掘していない。まだまだ全然掘れていない」
「それは、ミスリルだけではなく。と、言う事ですか?」
「うん。地図に記入しておいたから、また検討すると良いよ。で、ミスリルだけど……」
俺は最奥の左側の壁を見つめる。
「オク、ここが1番近いよね?」
「はい、殿下。そうですね。他は届いていません」
「だよね。ちょっと兄さまもみんなも下がってくれるかな? えっと後ろに10歩位かな。リュカ、お願い」
「はい、殿下」
リュカが、マルチプルガードを展開してくれる。で、俺は最奥の岩盤の左側に手をつき土属性魔法を一面に流し岩盤を崩す。
「なんとッ!?」
伯爵が驚いている。が、無視だ。この鉱山は本当にあまり採掘していないんだ。ミスリルの鉱脈まで少しある。続けて岩盤を崩していく。
崩した岩が俺の方に飛んでくるが平気さ。リュカのマルチプルガードがあるからな。超便利だ。
「そろそろ良いかな」
「殿下、充分です」
「うん。オク、有難う」
俺は最奥から離れて手を翳す。
『アースショット』
――ドドドド……ッ!!
ガラガラと壁が崩れた。
「リュカ、もう良いよ」
マルチプルガードを解除する。
「兄さま、伯爵。この見えているのがミスリル鉱脈です」
伯爵が、今俺が崩した壁を手で触り見ている。
「殿下、この一面全部ですか?」
「うん。そこだけじゃないんだ。まだまだあるけど、坑道から遠くて今は無理。それも地図に記入してあるから」
ほら。と、俺は伯爵に地図を見せると、クーファルと伯爵は覗き込む。
「こんなにですか!?」
「リリ、かなりあるね。それ以外もまだまだ掘れていないのか」
「兄さま、そうなんです。ここは規模が大きいです。伯爵の代では到底採掘しきれません。いったい何代かかるか」
「リリアス殿下。この鉱山は鉄鉱石だけだと思っておりましたが、この記入して下さった地図を見ると金もあるのですね?」
「そう。鉄鉱石しか出なかったのは、単純に鉄鉱石の鉱脈を辿って採掘していたからだよ。他が全然掘れてない。伯爵、凄いね。安泰だ。アハハ」
「リリアス殿下! 有難うございます!」
「水を差して悪いが、伯爵。安全第一だ。採掘を最優先してはいけない」
「はい、クーファル殿下。もちろんですとも。人命が最優先です」
お、分かってるじゃん。良いねー。
地図を調査員に渡して俺の役目は終了だ。
俺は、りんごジュースが飲みたい。マジックバッグから出そうとすると、リュカに止められた。
「殿下、もう少し我慢です」
「えー、リュカ。駄目?」
「もう少しだけです。ここを出てからですよ」
「はーい……」
飲みたい……俺は今飲みたい。
「殿下」
「リュカ、分かったって」
「何でそんな事だけ10歳なんスか?」
「え? ボク全体的に10歳だよ?」
「はいはい。意味が分かりません」
「リュカ、ホント最近ニルに似てきたよね?」
「マジッスか? それは嬉しいです」
「リュカさん、殿下は褒めていないと思いますよ?」
「え? ラルク様、そうですか?」
「リリ、出よう」
「はい! 兄さま!」
やった! 早く出ようぜ!
「ゴク……コクン……プハッ」
鉱山を出て、事務所の建屋に戻ってきてた。最初に通された応接室の様な部屋だ。
女の人が紅茶を出してくれたが、俺はマジックバッグから出してりんごジュースを飲んでいる。せっかくお茶を出してくれたのにごめんよ。でも、後で飲むからね。
「殿下、一気飲みは止めましょう」
「ああ、美味しい! コク……激うま」
「もう駄目ですよ。ニル様見てますよ」
「え? リュカ。マジ?」
「マジです」
ほら、とリュカが指差す方を見ると、しっかりニルが見ていた。
「あー、ヤバイ」
「プハハハ」
「リュカ、そう言う事は早く言ってよね」
「最初から一気飲みは駄目ですと言ってるじゃないですか」
そうだけどさ。違うじゃん? ニルが見てるとは思わないじゃん?
まあ、いいや。俺はマジックバッグにりんごジュースをしまった。