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323ーソニア

「リリ! 久しぶりだね!」

「ルー、どうしたの?」

「リリが心配で出てきたんだ」

「ルー、大丈夫。もう兄さまに沢山甘えたから」

「そうか」

「ルー様、リリ」


 ん? クーファル何だ? と、周りを見ると村長やお爺さん達が固まっている。


「あー。ルー、お願い」

「ああ、初めてだったな。僕は光の精霊でルーだ。リリに加護を授けている」

「精霊様……!!」


 村長達が一斉に頭を下げた。


「ああ、止めて。僕はそう言うの嫌なんだ」

「精霊様! お初にお目に掛かります。この村の長をしております、ヴォルク・アネイラと申します!」

「リュカの父親だね。リュカはよくやっているよ。リリと良いコンビだ」

「有難うございます!」

「アハハハ、リュカよく似ているな!」

「ルー様。俺、親父みたいに脳筋じゃないです」

「何言ってんだ。リュカも充分脳筋だろ?」

「えー!? マジですか!?」

「リュカ、精霊様にそんな口をきいて!」

「ああ、村長良いんだ。もうリュカとは何年も前から知ってるからな。リリをよく守ってくれている」

「こんな息子でもお役にたっているのでしたら、嬉しい事です」

「リュカはよく学んだし、強くなった。よく努力しているよ」

「リュカが……!」

「祖父ちゃん! 何だよ! そんな驚く事じゃないだろ?」

「いや、ちゃらんぽらんなリュカがなぁ、と思ったんだ」

「えぇー!」


 リュカ、ちゃらんぽらんだったのかよ。


「ソニア!!」


 その時、ご両親とラルクに付き添われてソニアが入ってきた。

 ルーが俺の肩にとまりにくる。まずは、静観するつもりなのだろう。


「ソニア、寝ていなくて良いのか?」


 リュカが声をかける。


「リリアス殿下、リュカさん。ソニアさんがどうしても謝りたいと言うので」

「ラルク、付いていてくれたんだってね。有難う」

「リリアス殿下、ご無事で良かったです」

「ラルク、有難う。ソニア、上がって座って。まだ体が辛いんでしょ? 無理しちゃ駄目だ」

「そうだ。ソニア、座りなさい」


 村長がそう言うと、ソニアが両親と一緒にリビングに上がり手をつき頭を下げた。


「リリアス殿下、リュカ、村長、皆さん。私の軽はずみな行動でご迷惑をお掛けしました。本当に……本当に大変申し訳ありません!」

「ソニア、もう二度とフラフラと出歩くんじゃない」

「はい、村長。もう二度としません」

「クーファル殿下、リリアス殿下、村長。娘がお騒がせして、大変ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。よく、言い聞かせました。それに本人も反省してます。お助け頂いて有難うございました」

「無事で良かった。ソニア、もう少し遅かったらお前はもっと傷つく事になっていた。そうなる前に助けて頂いて良かった」


 村長の言う通りだ。本当に良かったよ。あの男爵に手篭めになんてされていたら、どれだけ傷付いたか分からない。


「リリ、無事なのは良かったんだが。ハッキリしなければいけない事もある」

「ルー?」


 俺の肩にいるルーが話しだした。静観するんじゃなかったのかよ。


「僕は光の精霊だ。リリに加護を授けている。今回の事で一つ言っておきたい事がある」


 なんだよ、やっぱ何かあって出てきたんだ。


「ソニア、君は7年前の事をずっと引きずっていたな?」


 ソニアもご両親も、突然白い鳥が話し出したもんだから驚いている。


「ルー、白い鳥さんが突然喋り出すと驚くよ?」

「リリ、だから自己紹介したじゃないか」


 まあ、そうだけどさ。


「ソニア、本当に光の精霊なんだ。ルーて言うの。驚かないで、話してみてほしいな」


 ソニアは黙って頷き、ポツリポツリと話し出した。


 7年前、村人が奴隷商に拐われた事件の事だ。

 知らなかったとは言え、自分が村に商人を案内した。自分がもっと用心すれば、あんな事にはならなかった。

 そう、ずっと自分を責めていたと。


 奴隷商に捕まって牢に入れられた時に、純血種とそうでない者とに分けられた。

 純血種は価値が違う。希少だから高値で売れる。と、牢を見張っている人間が話しているのを聞いた。

 それが、13歳だったソニアの心にショックを与えた。それまで何も思わなかった。自分は違うんだ。リュカやセレスとは違うんだ。劣るのだと。


 騎士団がやってきて、助け出された。リュカが大怪我をしながら助けを呼んでくれたらしい事を知った。


 ――さすが純血種だな!

 ――村長の息子だしな!


 そんな、大して意味のない大人の軽口が余計にソニアの心を突き刺した。


 ――リュカが、皇子殿下に付いて行くらしい。

 ――リュカは村の誇りだな!

 ――さすが純血種だ!


 リュカが村を出ると聞いた。やはり純血種は違うんだと、ソニアは思った。

 いよいよ、リュカが皇子殿下に付いて城に向かうと村に挨拶に戻ってきた。

 今、リュカと話しておかないと次はいつ話せるか分からない。ソニアはリュカを探した。

 見つけたリュカは、セレーネといた。ソニアには見せた事がない様な笑顔のリュカがいた。

 リュカの手がセレーネの手を取っていた。

 私なんて、純血種でもない。セレーネみたいに村の役に立てない。綺麗じゃない。髪の色も瞳の色も違う。

 私なんて……そう思い出すと、リュカに会えなかった。

 

 ソニアは泣きながら、そう話した。この子はちょっと傷つきやすいだけなんだよ。

 女の子だから、気にしてしまう事もあるだろうけど。

 1人で考えて心に持ち続けるのは、ソニアには難しすぎたんだろうな。どんどん素直になれなくなって行ったのだろう。

 そうしたら悪循環だ。余計に自分を責める。また素直になれなくなる。どんどん皆と距離ができる。


「あの事が自分1人ではどうしようもなくて、勇気もなくて、皆から距離をとったの?」


 リュカのお婆さんがソニアに聞いた。

 ソニアは黙ってコクンと頷いた。


「ソニア、私はお前達が小さな頃からずっと口酸っぱく言ってきたはずだ。拗ねるな、捻くれるな、嫉妬するなとな。その様な心持ちの者は決して良い事はないと。忘れたか?

 どうして話してくれなかった? どうして相談してくれなかった? 村の子供は皆、私達の孫だと思って接してきたのに、残念だ」


 そうだな、お爺さんはリュカにもそう言っていた。その考えがあるからリュカは真っ直ぐ育ったんだと思った。


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