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322/442

322ー翌日

 1階に行くと、ソールが来てくれていた。


「リリアス殿下、お疲れ様でした」

「ソール、後はお願い。残っている使用人達の話しを聞いてあげて欲しい」

「はい、お任せ下さい」


 邸にいたごろつき達は皆護送用の馬車に乗せられていた。気絶したままの者もいる。

 ソニアはリュカが一緒に馬で連れて帰るらしい。まだソニアは気が付いていない。

 邸の処理を指示してから、ソールが話を聞くそうだ。

 

 俺はオクソールの馬に乗せられて、ソニアを抱えたリュカ、フォカ、シェフ、ユキとまだ明け切らない薄明かりの中を村に戻った。



 目を覚ますと知らない天井が見えた。


「殿下、お目覚めですか?」

「……ニル」

「はい。リュカの家です。昨夜はオクソール様が」


 ああ、そうか。馬で寝てしまったんだ。


「リリ……大丈夫か?」


 あれ? クーファルだ。どうして?


「先程からクーファル殿下が心配されて」


 そうか……また、心配かけたな。


「リリ」


 クーファルが、まだ起きようとしない俺の髪を優しく撫でる。


「兄さま……」


 駄目だ。勝手に涙が流れ出す。


「リリが泣く事ではない。リリは助けたんだ。リリにだって無理な事はあるんだ。自分を責めてはいけないよ」

「兄さま……ゔぇ、ゔぇ。兄さま! ゔぇ〜! ヒック、ゔぇ〜!」

「リリ……済まない。またリリに辛い役目をさせてしまった」


 俺は、クーファルに抱きついて声を出して泣いてしまった。

 俺が何か出来る訳じゃない。分かっているが、自分の気持ちに整理がつかない。

 クーファルはずっと俺を抱きしめていてくれた。リュカが聞いているとは気付かずに、俺は暫く泣いた。



「殿下……」

「リュカ、こんな所でどうした?……この声は、殿下は泣いておられるのか」

「親父。殿下は悪くないのに。何故こんな思いを……!」

「殿下は責任感がお強いのだろう。しかし、まだあんなに子供なのに」

「殿下はもっとお小さい頃からそうだ。3歳の時だって、自分のせいだと言って泣いておられた。あんな思いをしてほしくなくて、俺はお守りすると決めたのに。

 まただ。また、俺は何も出来なかった。クソッ!」

「リュカ、お前も理解しないといけない。世の中にはどうしようもない事もあるんだ。割り切るしかない事もあるんだ。お前が殿下と同じ様に悔しがっていてどうする?」

「親父……」

「笑っていろ。お前らしく、能天気に笑っているんだ」

「そんな事……」

「出来ないか? それでも笑え。それが、殿下のお心を癒す事になるんだ。お守りする事になるんだ。そう思って笑え」

「親父……分かった……!」



「ヒック……グシュ……」

「リリ、落ち着いたか?」

「はい……兄さま。すみません」

「謝る事はない。まさか、こんな事件に突き当たるとは誰も予測できなかった。また、リリに辛い思いをさせてしまったね。兄様の配慮が足らなかった。ごめんよ」

「ヒック……兄さま……悪くないです」

「リリも悪くない」

「兄さま……ヒック……グシュ」

「ソニアが無事で良かった。リリには辛い思いをさせてしまったが、今回の事で一つの町が救われたんだ。それは大変な事なんだ。リリが泣いていたら、救われた町の人達が喜べないよ?」

「はい……兄さま」

「リュカや村長が心配しているよ」

「はい。兄さま、ありがとうございます」

「リリ……」


 また俺はクーファルに抱きしめられた。


「さあ、皆に顔を見せてあげなさい」


 俺は、ニルに手伝ってもらい着替えて身支度を済ませた。


「ふぅ〜……」

「リリアス殿下」

「ニル、大丈夫」


 心配かけてはいけない。いつまでも泣いていても何も良い事はない。切り替えないとな。

 俺は、皆が待つリビングに向かう為、部屋を出た。


「殿下!」


 リュカがとんできた。心配そうな顔をしている。リュカの方が泣きそうな顔をしている。すまないな、有難う。


「リュカ、大丈夫だよ。ありがとう」

「殿下……皆待ってます」

「うん。ソニアはどう?」

「はい、気がつきました。まだ、身体が怠い様で休んでいます」

「そう。無事で良かった」

「殿下、ありがとうございます」

「ボクだけじゃない。みんなで力を合わせたからだよ」


 リビングに入っていくと、村長やお爺さん達皆がいた。


「殿下、こちらに」

「リュカ、ありがとう。ニル」

「はい、りんごジュースです」


 俺はりんごジュースを飲む。大丈夫だ。ちゃんと美味しい。味も分かる。


「殿下、ソニアを助けて頂いてありがとうございます!」


 村長がそう言って頭を下げた。フォカやリュカ、皆が頭を下げている。


「村長、皆さん、止めて下さい。ボクだけではないです。村の人達や、リュカやフォカの力もあります。とにかく、無事で良かったです」

「今回の事で、ソニアも懲りたでしょう。また、殿下に助けて頂きました。感謝しております。本当に有難う御座います」

「もう村長やめて下さい」


 そこへ、シェフがヒョコッと顔を出した。


「殿下! お腹が空いてませんか? 殿下のお好きなミルク粥をお作りしました!」


 シェフ、有難い。救われるよ。


「うん。シェフ有難う! 食べるよ!」

「はい! お持ちします!」

「ニル、我もりんごジュースを」

「はい。ユキ待って下さい」


 ニルが器を貰いに立つ。


「リリ、もう昼過ぎだ。よく寝れたかな?」

「はい、兄さま。ボクそんなに寝てましたか?」

「ああ。オクソールが抱いて帰ってきたからね。懐かしいよ」

「本当ですね。前はよくオクに抱かれて寝てしまってました」


「親父!」


 フォカが慌てて玄関から入ってきた。


「リリアス殿下! お目覚めですか! 良かった!」

「フォカ、ありがとう」

「フォカ、どうした?」

「親父! 猪だ! 猪が罠に掛かった! リリアス殿下! 今夜は猪鍋食べて下さい!」


 俺のミルク粥を持って来ていたシェフが動きを止めた。


「フォカ、猪か!?」

「ああ、シェフ! まだ生きてる! 見るか?」

「ああ! もちろん! 殿下、ちょっと行ってきます!」


 シェフは、さっさとミルク粥をニルに渡してフォカと一緒に出て行った。


「シェフは相変わらずだね」

「はい、兄さま。さすがシェフです」

「リリアス殿下、熱いですよ」

「うん。ニル、ありがとう」


 ニルに貰いミルク粥を食べる。シェフのミルク粥は優しい。ホッとする。

 ユキがまたデカイ器でりんごジュースを飲んでいる。それは丼か? 丼なのか!?


「あれ? ニル、ラルクは?」

「はい。ソニアを見に行ってます」

「そうなの?」

「はい」

「リリ。ラルクもね、何も出来なかったと自分を責めているんだ。せめて、これ以上リリを煩わせたくないと言ってね」

「兄さま、そんなラルクはまだ……」

「リリより1歳上なだけだよ。リリもまだ子供だ」

「兄さま」


 突然、ポンッとルーが現れた。


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