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32/442

32ー寂しかった

 翌日、突然すぎて俺は凄いビックリした!


「リリ……!!」

「……! かーさま!?」


 思わず飛びついちゃったよ。こんな時は3歳児の感情が暴走するね。参ったよ。超美人じゃん! めっちゃ良い匂いするじゃん! それにあったかい!


 俺の母、エイル・ド・アーサヘイム 第3側妃だ。俺と同じ光属性を持っている。翡翠色の瞳にフワフワした翠掛かった金髪。俺の髪が翠ぽいのも、瞳の翡翠色も母親譲りだ。


「かーさま! かーさまぁー!!」

「リリ、一人でよく頑張ったわ。お母様直ぐに来てあげられなくてごめんなさい。リリ、ごめんなさいね」

「かーさま……! うぇ……ヒクッ……ビェ……かーさまー! うわーん!」


 なんか最近、俺泣いてばっかだぜ。よく涙出るよ。


「リリ、ほら邸に入ろう」

「とーさま!」


 そう言って父に抱き上げられた。

 親父まで来ちまったぜ。ルーは一体どんな報告をしたんだ?


「……! ゔぇーー!! ヒクッヒクッ……あ゛ぁーーん……ヒクッ……!」


 泣きまくりだな、おい。号泣だ。仕方ねーじゃん、俺まだ3歳だ。


「……あらあら、リリ」


 母親まで泣いちゃったよ。どーすんだよ。



 はい、お決まりのコースだ。俺、3歳児。泣き疲れて寝ちまったよ。マジで。勘弁してくれよー。


「……ふわぁ〜……」

「リリ、起きた?」

「……かーさま……!」


 また抱きついてしまった。目が覚めて母がいたらそりゃ抱きつくよ。ずっと一人だったんだから。


「あらあら、リリどうしたの?」

「かーさま。もう一人はいやです。ボクお城に帰ります。もうお城かりゃ出ません。帰ります」

「……リリ」

「かーさま」

「今、お父様とフレイ殿下が最後の調整をなさっているわ。この件に決着が付いたら一緒に帰りましょう。母様も一緒にここに居るわ。リリ、よく我慢したわね。よく頑張ったわ。辛かったわね。ごめんなさいね。お父様もお母様もリリにこんな思いをさせてしまって、ごめんなさい」

「……かーさま」

「楽しい筈のお泊まりだったのに。ごめんなさいね」

「……かーさま、あやまりゃないで下さい。楽しかったです。テューにーさまとフォリュにーさまと、たくさん遊びました」

「そう。お二人と」

「はい。ニリュもオクもリェピオスもシェフもみんなみんな良くしてくりぇます。ボクが我儘なんです。ボクのせいです。知りゃない人達がボクのせいで酷い目に合ってりゅ。だかりゃボクはもうお城かりゃ出ません」

「……リリ」

「リリ、それは違うよ」


 いつの間にか父がドアのところに立っていた。


「とーさま…… 」

「それはリリが悪いのではないよ。リリのせいでもない。リリの我儘でもない。そんな酷い事を考える奴等が悪いんだ。父様と兄様はそいつらを捕まえに来た。今迄してきた事に責任を取ってもらう。悪い事をしたら罰を受けてもらわなきゃね。リリはそんな我慢をしなくていいんだ。リリに辛い思いをさせてごめんよ。リリごめん。許してくれるかい?」


 父は俺の側に来て頭を撫でる。


「とーさまはわりゅくないです!」

「リリも悪くないよ? 悪くないのにリリばかりが我慢する必要はない。リリは自由にしていいんだ」

「……とーさま。でもまた……」

「何があってもリリは自由でいいんだ。好きな事をして、好きな物を食べて、好きな所にいればいい。そう出来る様に応援するのが、父様と母様の仕事だ。もうこんな思いはさせない。約束するよ。リリ、ごめんよ」

「……とーさま」

「さあ、リリ。シェフが待ってるわ。食堂に行きましょう。今日はフレイ殿下もご一緒だから、皆で夕食を頂きましょう」


 夕食! そんなに寝てたのかよ? 俺、寝過ぎじゃね?


「はい、かーさま」

「よし、行こう」


 そう言って父は俺を抱き上げ歩き出した。そうか、今日は俺一人じゃないから食堂なんだ。俺一人で食べるんじゃないんだな。やっぱ食事は皆と食べる方がいいよ。一人の食事はもうウンザリだ。



「殿下! お待ちしてました!」

「シェフ、今日はみんな一緒だよ! おねがいねッ!」

「はい! 殿下!」

「リリはシェフとも仲良しなのね」

「はい、かーさま。シェフがボクを気にしてくりぇて。シェフのお陰で一人で食べりゅ食事も寂しくなくなりました」

「リリ…… 」

「今日はみんな一緒で嬉しいです!」

「リリ、待ってたぞ!」

「にーさま!」


 父に下ろしてもらって、兄のところへ走る。兄はヒョイッと抱き上げてくれた。


「リリ! さっさと片付けて一緒に帰ろうな!」

「はい! にーさま!」

「ほら、お前達座りなさい。」

「はーい!」


 俺は母の横に座った。と、言うか子供用の少し高い椅子に、ニルに座らせてもらった。


「エヘヘ」


 俺は嬉しくて、いつもより沢山食べた。父や母や兄と沢山話した。

 そうか、俺は寂しかったんだ。今迄意識してなかったけど、寂しかったんだ。実の姉に殺されかけて、悲しかったんだ。

 中身は55歳のオッサンだから、大概の事は平気だと思ってた。違うんだな…… この世界では、俺はまだ3歳児のリリアスなんだ。


「エヘヘ…… 」


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