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314ー畑と魔力

 そのうち、家が少なくなり代わりに畑が広がりだした。畑の周りにも花が咲いている。畑にはトマト、キュウリ、インゲン、ズッキーニ。豊かな畑だ。


「畑の周りに咲いている黄色やオレンジ、ピンクの花がナスタチウムです。害虫避けになります。もう花の時期が過ぎてしまって残り少ないですが白い小さな花が、エルダーフラワーです。万能ハーブですね。シロップを作ったりもします。殿下、どうですか? なかなかのもんでしょう?」

「はい! 驚きました!」


 スゲーな。エルダーフラワーは有名だな。花関係はサッパリ分からん俺でも知っている。

 ナスタチウムて、何だ? 金蓮花か? 分からん。害虫避けになったり良い効果を生み出す植物をコンパニオンプランツとか言ったか。これも前世の母親は詳しかったが。

 俺はハーブでも、薬湯に使う物位しか知らん。


「花等の植物や野菜や穀物を研究している者がいるのです。 良く出来た物同士を交配させて品種改良するのだそうです」

「それは、大変な時間が掛かりますね」

「はい。ご存知でしたか。それを根気よく何年もかけて改良する者がいるのです。お陰で食事が豊かになりました。ああ、いました。あの娘です」


 お爺さんが指した方を見ると一人の女性が作業していた。


「殿下、俺の幼馴染です」

「リュカ、そうなの?」

「はい。昔から花や植物が好きで。また持っている属性も土と水なんです」

「それは打って付けじゃない」

「はい。でも本人は光が欲しかったそうですよ」

「リュカ、それはどうして?」

「なんでも、光属性の魔力を付与すると良く育つそうです」

「へぇ〜、そう言ってた?」

「はい。俺は詳しく知りませんが」


 ふぅ〜ん。ほぉ〜ん。


「殿下、ご紹介させてください。セレーネ!」


 そう呼ばれた女性はこちらに歩いてきた。


「あら。リュカじゃない。久しぶりね」

「セレーネ、元気か?」

「ええ。もちろんよ。あら、なんか逞しくなった? リュカ、こちらはもしかして?」

「ああ。リリアス殿下だ」

「こんにちは、ボクはリリです」

「やっぱ出た」

「リュカ、そう言うとこだよ? お爺さんが言ってた、直ぐにふざけると言うのはさ」

「でも殿下、反応しないと寂しいでしょう?」

「うん、まぁね。かなりね」

「まあ、ウフフ。お初にお目に掛かります。セレーネ・クリテアと申します」


 うん。優しそうなお姉さんだ。さっきの煩いのとはエライ違いだよ。


 セレーネ・クリテアと名乗ったリュカの幼馴染。

 ダークシルバーの髪にリュカと同じ金色の様なアンバーの瞳のウルフアイだ。

 ストレートの髪が陽に光ってキレイだよ。うん、綺麗なお姉さんは好きですよ。


「村の中にお花が沢山あるんですね」

「はい。趣味だったのですが、実益も兼ねる様になってしまいました。あの、リリアス殿下は光属性魔法をお持ちですよね」

「はい。ああ、植物に魔力を付与する事ですか?」

「そうなんです! もしよろしければ、試して頂けませんか?」

「これ、セレーネ」

「祖父ちゃん、大丈夫。リリ殿下はきっと興味を持って下さってるから。ね、殿下」


 リュカが少し自慢気にニッコリとして俺を見る。


「リュカ、先に言われるとボクやる気なくなっちゃうよ?」

「えッ!? また、殿下。意地悪言わないで下さいよ」

「いや、本当に」

「殿下、お願いしますよ!」

「うん。勿論やるけどね」

「フフフ。本当に仲良しなんですね。リュカ、良かったわね」

「ああ。俺はリリ殿下にお仕えできて幸せだ」


 おい、リュカ。そんな事言ったら照れるじゃねーか。


「なんだリリ。照れているのか。堂々としていれば良い」

「まあ! もしかして、神獣様ですか!?」

「セレーネ、ユキヒョウの神獣でユキだ」

「リュカ、あなた偉そうだわ」

「え? なんでだよ?」

「だって神獣様なのよ? 何て神々しい!」


 あらら、お目々がキラキラしてるよ。これはきっとこの後……


「可愛い!」


 やっぱりだ。もうこの展開慣れたよね〜。

 セレーネはユキにポプンと抱きついた。


「リリ、我も流石に分かった」


 アハハハ! ユキさん、慣れちゃってるよ。


「なんて手触りの良い! シットリとしていながら、フワモフ感もしっかりあって……ああ、良い匂いもします〜!」

「これ! セレーネ!」

「……あ、お爺様すみません」


 そう言ってセレーネがユキから離れた。

 ユキの手触りをここまでレポした人は初めてだな。面白い。


「リリアス殿下の側近候補のラルク様だ」

「お初にお目に掛かります。ラルクです」

「まあ! 何てしっかりした! はじめまして、宜しくお願いします。リュカ、見習いなさい!」

「俺だって、ちゃんとやってるよ!」

「ええ、リュカさんは頼りになりますよ」

「そんな、ラルク様。リュカを持ち上げなくても良いんですよ?」

「セレーネ、もう良いよ」


 なんだよ仲が良いんだな。でもちょっとリュカは尻にしかれてるか?


「セレーネさん」

「殿下、セレーネで構いませんよ」


 あら、そうかい?


「じゃあ、セレーネ。何したら良いの?」

「はい。こちら一帯に光属性の魔力を付与して頂きたいのです!」

「うん。分かった」


 俺は両手を広げる。セレーネが言った一帯に満遍なく行き渡る様に魔力を放出した。

 すると、その一帯に芽が出ていた植物がキラキラと光り出した。


「素晴らしいです。殿下! 私は土と水しか持っていないので。殿下の光属性は素晴らしいです。今迄見た中でも、全然違います。こんなに光ったのは初めてです!」


 そうか。じゃあ、次は俺の要望をきいてもらおうかな。


「セレーネ、鑑定してもいいかな?」

「殿下、何するんスか?」


 まあまあ、リュカ。ちょっと見てて。


「はい! あの鑑定ですね! どうぞいくらでも!」


 いや、1回で良いんだけどさ。じゃあ、遠慮なく。 


『鑑定』


 ああ、はいはい。なるほどね。確かに土と水だね。でも、魔力量は多い方じゃね?

 いや、リュカの方が多いか。使ってるからかな?


「リュカ、もしかして魔力量を増やそうとしてる?」

「え? 俺ッスか? してますけど。悔しいんで」

「何が悔しいの?」

「だって、オクソール様に負けてますから」


 意味分かんねー。オクソールに張り合ってどうすんだよ。


「セレーネ、別のところに土属性の魔力を付与してみて」

「殿下、何度も試しましたけど光属性の様には……」

「ああ、うん。ちょっと試してみてよ」

「セレーネ」

「はい。お爺様やってみます」


 リュカの爺ちゃんて、スゲー信頼されてる? 威厳? 俺にはないわー。まぁ、まだ10歳だからな。


 セレーネが少し場所を移動して、魔力を付与する。

 もちろん、俺は鑑定してるよ。


「セレーネ、また移動して次は水属性でお願い」

「はい、殿下」


 セレーネがまた少し移動して、魔力を付与する。うん、よし。

 


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