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311/442

311ーリュカの村

「殿下、到着しました」


 外からオクソールの声がする。よし、降りるぞ!

 

「オク、有難う」


 オクソールに降ろしてもらう。ユキが横についている。

 馬車を降りた途端に一斉に声が上がった。


 ――せーの!!


 ――クーファル殿下! リリアス殿下! ようこそお越し下さいました!

 

 そして、村人から大きな歓迎の拍手が上がる。村人が口々に声を掛けてくれる。


 ――クーファル殿下! カッコいい!

 ――リリアス殿下! 可愛い〜!

 ――リュカー! お帰りー!


 ビックリしたぜ! 凄い歓迎だ。有難い事だ。クーファルが軽く手を振り村人の声に応える。

 そんな村の中を、俺はクーファルの後ろをオクソールに先導されてリュカの家まで歩く。

 リュカはもう父親らしき村長と話している。


「クーファル殿下、リリアス殿下、紹介します。私の父で村長のヴォルク・アネイラです。副長で兄のフォカ・アネイラ、母のメルテ・アネイラです」


 おお、家族揃っての出迎えじゃん。村人も沢山出て来ている。


「お初にお目に掛かります。ヴォルク・アネイラです。わざわざお立ち寄り頂き有難う御座います」


 リュカのお父さんでこの狼獣人の村の村長、ヴォルク・アネイラ。

 ガタイも良くて身長も高いワイルドな人だ。

 リュカと同じ青み掛かったダークシルバーの髪だ。ウルフカットの様な肩位の長さの髪を上の方だけ後ろで一つに結んでいる。金色の様なアンバーの瞳のウルフアイもリュカと同じだ。リュカはお父さん似なんだね。

 この雰囲気は誰かに似ている。見た目じゃなくて、雰囲気がな。誰だっけ?


「私はクーファルだ。歓迎してくれて有難う」

「初めまして、リリアスです。お目に掛かれて嬉しいです!」

「クーファル殿下、ようこそお越し下さった! おお! リリアス殿下! よく来られた! お会いしたかったんだ! リュカが世話になって、騎士にまでして頂いて!ご迷惑を掛けておりませんか!?」


 あ、誰に似てるか分かった。ニルズだ。おっちゃんだ!


「村長、リュカの努力です! リュカは本当に頑張ってます!」

「ワハハハ! リュカが頑張ってますか! 少しでもお役に立っているなら出した甲斐があったってもんです!」


 もう決定だよ。おっちゃんPart2だよ。でもさすがに村長をおっちゃんとは呼べない。残念だ。


「もう、親父。もう少し言葉に気をつけてくれよ」

「リュカ、何言ってんだ! 取り繕っても仕方ないだろうが!」

「アハハハ! そうだよ! リュカ、全然良いよ!」

「リリアス殿下、すみません」


「もうこの人は誰にもこんな感じで申し訳ありません。リュカの母のメルテ・アネイラです。本当にようこそお越し下さいました」


 下町の面倒見の良い叔母さんて感じのリュカのお母さん、メルテ・アネイラ。

 茶色掛かったダークシルバーの髪で、ゆるいウェーブのロングヘアを片方に持ってきて一つに編んでいる。

 金色の様なアンバーのウルフアイはリュカと同じだ。


「兄のフォカ・アネイラです。お待ちしておりました。さあ、どうぞ中にお入り下さい。宜しければ後ほど村をご案内しましょう」


 村長を一回り小さくした感じのリュカのお兄さん、フォカ・アネイラ。

 茶色掛かったダークシルバーの髪は母親と同じだ。少し癖のあるロングヘアを後ろで束ねている。

 瞳の色は家族皆一緒なんだな。


 リュカの実家らしい家に案内される。

 道の両側に、村人達が並んで出迎えてくれている間を歩いて行く。リュカは恥ずかしそうだ。

 リュカが言ってた様に凄い歓迎だった。大歓迎だ。これをリュカは予想していたんだな。


 少し村を見ただけだが、樹々に囲まれた場所にある為か家はみな木造だった。

 避暑地のロッジの様だ。そうだ、ログハウスだ。どの家も玄関のある正面が大きな三角屋根になっている。

 家と家の間が広くとられていて、木々や花を植えてある。村を囲む防御壁がないせいか、開放感のある村だ。


 リュカの家に到着して、木で出来た大きめの引き戸になっている扉の玄関を入ると土間があった。そのまま裏に出られる様だ。天井は吹き抜けになっていて、立派な梁が通っている。


「クーファル殿下、リリアス殿下。すみません、此処で靴を脱いで下さい。」

 おお、靴を脱いで上がるのか。懐かしいな。俺、この家好きだな。日本を思い出す。


 靴を脱いで上がると、リビングだ。土間を挟んで反対側がキッチンとダイニングだ。

 俺達はリビングに通され、ローソファーに座る。木でできた低めのリビングテーブル。ああ、正座や胡座が似合いそうだ。


「帝都にある家とは少し違いますでしょう? 足を楽になさって下さい」


 お母さんが気を遣ってくれる。

 メイドさんらしき女性がお茶を出してくれる。ティーカップではなく、湯呑みと言う方が近い。これは紅茶じゃないな。なんだ?


「ハーブティーなんですよ。私達は紅茶よりハーブティーの方が普段から飲むんです。お口に合いますでしょうか?」


 リュカのお母さんが説明してくれる。


「いただきます」


 俺は早速口をつける。ハーブティー? ハーブティーなのか? これは、ハーブティーと言うよりも日本によくある健康茶ぽくないか? ほんのりルイボスティーぽい風味もある。


「美味しい」

「うん、美味しいね」

「兄さま、ホッコリしますよね」

「まあ! 有難うございます! お茶菓子もどうぞ。これは近くで採れる胡桃で作ったものです。甘いですよ」


 おおー! 胡桃かぁ! ペースト状になっていて、胡桃餡みたいじゃん!

 小さな木のフォークを入れてみる。ん?これ、このモチモチ感! 懐かしい! 胡桃餅か⁉︎


「リリ! これは美味い!」

「ユキ、もう食べたの?」

「どうぞ食べて下さい! 沢山ありますからね!」


 そう言って、リュカのお母さんはユキにおかわりを用意してくれる。


「かたじけない」

「神獣様ですね。お会いできて嬉しいです」

「リュカはいつもよくやっているぞ。安心するといい」


 ユキさん、めちゃ上から目線だね。上司みたいだぜ。


「美味しい! 兄さま、これモッチモチですよ! リュカ、これめちゃ美味しい! お母さん、是非シェフに作り方を教えて頂けないですか!?」


 あ、お母さんなんて呼んでしまったぜ。


「もちろん構いませんよ。リリアス殿下、お気に召して頂けましたか?」

「はい! とっても美味しいです!」


 マジ、懐かしい! 餅じゃあないんだけどな。白玉て感じだ。でも、今迄こんなのは無かったからな。嬉しい! 餡子やきな粉があれば完璧だ!


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