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309/442

309ー北へ出発

騎士団の人数の変更と、調査員を同行させる内容を加えました。

「いやいや、殿下。笑い事ではありませんよ。今のリュカの実験で、出来る者と出来ない者がいる事が分かりました。

 クーファル殿下が令嬢にされた時は偶々上手くいったから良かったものの、もし失敗していたらと思うとゾッとしますよ」

「シオン、そっか。本当だね」

「これは、誰もが出来る訳ではないと報告しないといけませんね。リュカのお陰です」

「えぇー、俺全然嬉しくないです」

「リュカ、何でそんなにヒールしたかったの?」

「だって殿下、シオン様みたいに実験がきっかけでヒールを使える様になったら良いなぁと思ったんです」

「だから、何で? ボクがいるじゃん」

「もしもです。そんな事にはさせませんが、もしも殿下にヒールが必要になったら誰が殿下にヒールするんですか? 俺が使えたら良いなぁと思ったんです」


 リュカ、お前はなんて健気な事を言ってくれるんだよ。俺は嬉しいよ。


「リュカ、もしもそうなったらユキもルー様もいらっしゃる」

「オクソール様、ユキも使えるんですか?」

「当然だろ。光の神の使いなのだから」


 マジかよ。知らなかった。ユキもヒール出来るんだ。


「殿下、本当に今更ですよ?」

「オク、だってユキさんは普段そんな風に見えないじゃない?」


 リュカも無言で、コクコクと頷いている。


「殿下、ユキを鑑定なさった事は?」

「ない」


 ないよ、そんな必要なかったもん。


「ですから、殿下。とにかく使ってみると仰っていたではないですか」


 あー、忘れてたよねー。反省。


「オクソール様は出来るんですか?」

「リュカ、何をだ?」

「だから、ヒールですよ」

「オク、やってみる?」

「私はリュカと一緒で出来ないと思います」

「オクソール様、それは何故ですか?」

「シオン殿。ご存知でしょうが、私は剣で生きてきました。魔法は本当に基本しか知りません」

「オク、まあやってみたら?」

「殿下がそう仰るなら」


 よし。俺はオクソールなら出来そうな気がするんだよね。

 オクソールの手を握り魔力を流す。オクソールは自分に向けて詠唱した。


「ヒール」


 白い光がオクソールの頭から順に足先まで流れていった。また違った表れ方だな。


「出来るじゃん」

「殿下、どうしてでしょう?」

「オクは妖精の眼を貰ってからずっと使う事を意識してきたでしょ? 

 ルーの力を借りれるとは言っても、自分の力よりずっと大きなスキルだ。それを毎日意識して使ってきた。だからだと思うよ。それこそ、日々の積み重ねだよ。凄いよ、オク」

「なるほど」

「えー! 俺もルー様から頂いて使ってたのにー! 何かオクソール様羨ましいんですけど!」


 リュカ、気持ちはよく分かる。オクソールは何でも出来るからな。


「殿下、効果はどうなんでしょう?」

「オク、今はボクが魔力を流していたから、充分に効果はあるよ」

「そうですか。では……ヒール」


 オクソールが自分の魔力だけでヒールを掛けようとした。

 オクソールの手元で白い光が弾けた。


「オク、凄いや」

「殿下、できてませんよ?」

「ううん。手元が光ったでしょ? 精霊の眼と同じ様に意識して使っていれば、もっと使える様になるんじゃないかな?」

「殿下! 素晴らしい! オクソール様は才能だけでなく、努力の方なのですね!」

 

 当然じゃないか。あのオクソールのシゴキを見たら分かるよ。

 オクソールは勿論才能に恵まれている。だが、それだけではない。努力を積み重ねる事のできる人なんだ。カッコいい!


「ボクが何よりも信頼できる、自慢の護衛だ」

「うわっ、超羨ましい!」

「何言ってんの、リュカもだよ」

「で、で、殿下!」


 また、リュカ。キラキラした目をして。リュカは可愛いのぉ〜!


「今日は大変参考になりましたよ。殿下、有難う御座います」

「え、シオンが優しい」

「ですから殿下、気をつけていると言ったでしょう?」

「ああ、そうだったね。シオンも転移玉作ってみたら? きっと、オクみたいに今より出来る様になるよ」

「そうですね。オクソール様を見ていると、そう思いますね」

「うん。オクは凄いよ」




 さて、出発の日になった。

 俺はクーファルと騎士団の待つ広場にリュカとニルと向かう。

 父と母に挨拶をしていたら、俺が1番遅くなってしまった。


「ニル、今回は遠いし道のりが険しいかも知れないからお留守番していてもいいのに」

「殿下、何を仰います。私は殿下から離れませんよ。ついて行きます」

「ニル、無理しないでね」


 と、言うのも、最後に行く予定になっている山脈に入ったところにある鉱山には、途中から馬車は使えない。

 手前にある町から馬に乗り換える事になる。ニルは馬も乗れるけどさ。今回女性はニルだけだし、やっぱ心配なんだよ。

 俺はまたオクソールに乗せてもらうしね。何だったらユキに乗ってもいいし。


「殿下、ニル様は大丈夫です。ニル様よりラルク様の方が俺は心配ですよ」

「リュカ、そうだった」


 そう、今回からラルクも同行するんだ。まだ11歳だぜ? 大丈夫かよ。


「殿下は10歳ですけど」

「リュカ、分かってるよ。でもさ、ボクはまだラルクより慣れてるでしょ?」

「そうですね、色々行きましたね」

「うん。本当に。今回はリュカの村にも行けるし、楽しみだよ」

「殿下、止めて下さい。マジ、不安なんですから」

「ハハハ、喜んでおられるんだよ。いいじゃない。リュカのお父様が村長だっけ?」

「はい、兄が副長です」

「そっか。大事な息子さんをボクが預かっているんだよね」

「殿下、俺はずっと殿下にお仕えしますよ」

「リュカ、有難う」


 さあ、今回はどんな旅になるのかね。できれば何事もなく、平和に道程を進みたいね。

 もう、トラブルとかは嫌だよ。


「リリ、待ってたよ」

「クーファル兄さま、すみません。遅くなりました」


 広場には、クーファルの第2騎士団から選抜された24名の隊員が整列していた。

 何度見ても、お揃いの騎士団の隊服で整列しているとカッコいい。

 アースが憧れるのも無理ない。


 今回も、当然オクソールとシェフも同行する。

 俺はニルと、ラルクとユキと一緒に馬車だ。途中までクーファルも馬車で行くらしい。

 それと、今回は鉱山を担当する部署の調査員5名も同行する。

 まずは、帝都の少し北にある別邸を目指す。3歳の時に暫く滞在していた、俺が突き落とされたあの湖の近くの別邸だ。

 ここで、一泊してからリュカの村に向かう。リュカの村は楽しみだ。


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