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307/442

307ー魔力量

 出発までの間に、俺は転移玉を60個作った。1日10個平均で頑張った。大いに褒めてほしい。

 転移玉は防御系を魔石に付与した魔道具と違って手間が掛かるんだよ。

 マジックバッグと同じで、空間魔法と時間魔法なんだけど人を安全に場所を移動させなければならない。そこが、面倒なんだ。

 数個まとめて作る事ができない。1個ずつ丁寧にだ。

 転移玉を作っていると、シオンが黙ってジッと見ている。

 シオンは俺の魔法の師匠だ。魔術師団副師団長シオン・マグルス。シオンだったら作れないか?


「ねえ、シオン」

「なんですか?」

「シオンは作れないかな? 転移玉」

「…………」

「え? シオン?」

「殿下、誰もが殿下と同じ様に出来ると思ってはいけません」

「はい?」

「こんなに魔力量が必要な物を作れるのは、そうはおりませんよ?」

「で、シオンは?」

「私なら、1日1個が限界です」

「え、マジ?」

「大マジです」


 うん。藪蛇になりそうだから止めておこう。


「殿下、それ1日に何個作っているんですか?」

「え、10個……かな?」

「で、それは1日10個しか作れない? それとも……まあ1日10個位にしておこう。どっちですか?」

「えっと……10個位にしておこう?」

「ほら、殿下の魔力量は化け物級ですか?」


 シオン、その言い方はどうだろう? いや、黙っておこう。


「失礼しました。決して悪気はなく」

「え、分かってるよ?」


 なんだ? シオン、どうした?


「そうですか、なら良いんです」


 え? マジ、どうした? 今日は変だよ?


「あの……」

「シオン、どうしたの?」

「極秘事項を聞きました」

「極秘? シオン、何それ」

「クーファル殿下が……例の取り憑かれそうになった話です」

「ああ。聞いたんだ」

「はい。魔術師団も心の持ち様を再考すべきだと、キツくお叱りを受けました」

「なるほど」


 シオンの話では、魔術師団も男社会なんだそうだ。騎士団の様に身体を鍛える事はしていなくても、魔法に関してはある意味脳筋と言えるらしい。

 ついつい部下への言葉もキツくなりがちで、それが女性にとっては厳しいのではないかと。

 研究が佳境に入ると、余裕もなくなって余計にそうなるらしい。

 確かに、取り憑かれた彼女も研究職だったな。

 まあ、男社会とはね。一昔も二昔も前の日本かね? て、感じか。いや、現代日本でも女性が管理職になるのは厳しい。

 それで、意識して改善しようとしているんだと。

 まあ、それは良い事なんじゃないか?


「でも、シオン。あれは偶々だからね。不可抗力て事もあると思うよ?」

「殿下、そう言って下さると有難いです! 何もよりにもよって、魔術師団の人間に取り憑く事ないじゃないですか! 書庫には、他の部署の者も行く筈です! なのに何で、魔術師団だったのか!」

「まあ、シオン。落ち着いて」

「殿下、失礼しました」

「あれでしょ? そこそこの魔力量が欲しかったんでしょ?」

「殿下、彼女の魔力量はごくごく普通です。むしろ、彼女は普通より少ないかもしれません!」


 え? そうなの? 俺、それは知らないよ? いや、逆にそれで魔術師団に入ったのは凄くないか?


「まあ、殿下の様にとんでもなく多いと逆に取り憑くのは無理なんでしょうが」


 なるほど、そうなんだ。


「魔術師団の者に取り憑いたばかりか、クーファル殿下に取り憑こうなど以ての外!」


 ああ、はいはい。


「ルー様が来て下さったからなんとかなったものの。あの時は殿下もいらっしゃらなかったとか!」


 うん、そうだね。俺は辺境伯領に行ってたからね。


「もう一人の女性が光属性魔法をそこそこ使えたから良かったものの!」


 ん? 何だって?


「シオン、ミリアーナ嬢は低位の光属性魔法しか使えないよ?」

「は? 低位ですか? ミリアーナ嬢とは、お相手の令嬢ですか?」

「うん、そうだよ。彼女はヒール程度しか使えない筈だ。だから、クーファル兄さまが魔力を流して手助けしたと聞いたよ?」

「はぁ!? 魔力を流して手助け!? 殿下、何ですか、それは!」


 え? シオン、知らなかったの? 俺、墓穴掘った?

 仕方ない、シオンに説明したよ。

 クーファルが魔力をミリアーナに流して補助したと。


「何ですか、その斜め上の発想は! 流石、殿下の兄君です!」


 意味分かんねー。


「ほら、前に剣に付与したりしてたじゃない? あれから思いついた、てクーファル兄さまが言ってたよ」

「マジですか!? 人にも付与出来ると言う事ですか!?」


 まあ『付与』とは与える事だから間違ってはいない。


「付与と言うか、補助と言うか……ね」

「ね、じゃありません。そこを詳しく聞いておいて下さらないと!」


 あら、それはすまないね。


「じゃあ、シオン。実際にやってみる?」

「は?」

「だからさ、ボクがシオンに魔力を流すからそれをシオンが実際に使えるか実験してみる?」

「殿下! 是非に!」


 ああ、分かったから手を握るのは止めてくれ。

 と、言う事で俺達はまたまた騎士団の鍛練場に来ている。


「おや殿下、鍛練なさいますか?」


 またオクソールだよ。この間は世話になったね。でもさ、人の顔を見る度に鍛練て言うのは止めようぜ。


「オク、しないよ。シオンもいるでしょ?」

「シオン殿、お久しぶりですね」

「はい、オクソール様。お邪魔して申し訳ありません。少し、実験をしたいので宜しいでしょうか?」

「構いませんよ。今度は何をされるのですか?」


 あら、オクソール。興味津々だね。

 で、シオンが説明しましたよ。実際に人に魔力を流して、それを使えるかどうか実験してみたいとね。


「それなら、殿下。魔力量の少ない者がする方が良くありませんか? シオン殿より私の方が良くありませんか?」


 ん? 何でそうなる?


「殿下、オクソール殿と、私と魔力量を見て頂いても宜しいですか?」

「あ、じゃあ俺も入れて下さい!」


 リュカ、何で出てくるんだよ。余計にややこしくなるじゃねーか。


「殿下」

「シオン、分かったよ」


 仕方ない。鑑定するさ。


「……え、嘘」

「殿下、どうされました?」

「オク、リュカ、シオンの順だ」

「は?」


 シオンが、固まった。


「殿下、それは何の順ですか?」

「シオン、残念ながら魔力量の多い順だね」


 あー、シオンが項垂れたよ。

 オクソール、その顔だと分かってて言ったな。だって、オクソールは『精霊の眼』を持ってるから見れるもんな。

 オクソールさんよ、何考えてんだ?


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