表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

306/437

306ー独占欲?

 早速俺は、転移玉を作る。面倒だ。俺、作ってばっかじゃん。

 これって、魔術師団は作れないもんなんかね? 今度シオンに聞いてみよう。


「あ、ねえリュカ。リュカの村にも転移玉置いてこようか?」

「え? 殿下、何故ですか?」

「いや、便利かなぁ? て、思って。」

「いえ、必要ないですよ。有難うございます」

「そうなの?」

「はい。みな獣人ですから。いざと言う時は獣化します」

「なるほど〜」


 そっか。リュカはいらないか……


「リリ、拗ねるでない」

「ユキ、分かっちゃった?」

「ああ。だが、拗ねるのはよくない」

「うん。ごめん」


 ユキさん、凄いなぁ。兄貴みたいだ。


「ねえ、ユキ。久しぶりに乗せてよ。ちょっと走らない?」

「ああ、いいぞ」

「やった!」


 俺は転移玉作成をそっちのけにして、ユキと外に出た。

 

 城の裏側に騎士団や近衛師団の屋内鍛練場や薬草園に畑もある。

 俺が毎朝オクソールと鍛練しているのはこの屋内鍛練場だ。

 その並びに屋外のだだっ広い合同鍛練場がある。そこにユキとリュカと向かう。


「リリ、どうした?」

「ん? ユキ、分かんない。なんかね、ちょっと寂しかった」

「ニルの事か?」

「うん。多分」

「殿下、ニル様は天然ですから。悪気はないですよ」

「リュカ、それも分かってる。リュカも婚姻するんだよね」

「え? 殿下、俺そんな話ありませんよ?」

「いや、いつかはだよ」

「俺より先にオクソール様です」


 ああ、そっか。年齢的にもオクソールが1番先か。あー、オクソールもニルとよく似たとこあるからなぁ。また俺、ビックリさせられるかも。


「リュカ、オクはそんな話あるの?」

「殿下、何言ってんスか。オクソール様がどんだけモテモテか、知らないんですか?」


 マジかよ。知らなかったよ。まあ、モテるだろうとは思っていたけど。


「リュカ、マジ?」

「大マジです」

「リリは少し疎いところがあるな」

「うわ、ユキに言われたくない!」

「ブハハハ!」


 リュカ、爆笑するんじゃねーよ。


「ああ、殿下。でも獣人は人間より長生きだと知ってますか?」

「え? そうなの?」

「はい。ある程度まで成長したら暫く止まります。で、ゆっくり老化するんです。だから、人よりも婚姻は遅いと思います。うちは3歳上の兄もまだ一人ですから」

「そうなんだ。僕知らない事ばっかだ」


 裏の鍛練場に着くと、噂のオクソールがいた。本当だ。こんな所にまで令嬢たちが見学に来ている。

 ここにもいたよ、リア充が!

 オクソールが俺を見つけて走ってくる。


「殿下、どうされました? 鍛練しますか?」


 もう、リア充なのに脳筋だよ。


「しないよ! ユキと走るの。」

「いつでもお相手しますよ?」


 いや、それはいいよ。それより、オクソールさぁ。


「ねえ、オク。オクは婚約者とかいないの?」

「は? 何です? 急に」

「オクソール様、あれです。ニル様の」

「ああ、お聞きになったんですね」


 なんだよ、オクソールも知ってたのかよ。


「私は全くありませんよ。殿下にずっとお仕えしますから」

「なんでよ、婚姻したら外れなきゃいけないの?」

「いえ、そんな事はありません。ああ、殿下。ついでと言っては悪いのですが、シェフは既婚者だとご存知ですか?」


 また、マジかよ。今日はこんな日かよ。


「知らない……」

「シェフの名前は?」

「し、知らない……」

「それでも、シェフは殿下が最優先ですよ」

「……うん」

「ニル殿も、私も、シェフやリュカもそうです。また別物なんですよ」

「うん……」

「殿下、失礼します」


 そう言って、オクソールは俺を抱き上げた。オクソールにこうして抱っこされるのは久しぶりだ。


「大きくなられました。小さかった殿下がこんなに大きく。まだまだ大きくなって頂かないと」

「オク……」


 俺はオクソールの首に抱きついた。


「殿下、辺境伯領で言ってらした事は変わりませんか?」


 オクソールが小さな声で聞いてきた。あれだ。俺が婚姻しないと思うと言った事だ。


「うん」

「そうですか。殿下がそう思われるのも理由があるのでしょう?」

「うん……」


 ごめん、話せないんだ。


「殿下が考えてそう思われるのなら、私はそれも良いと思っております。ですが殿下。私達は殿下のお子を見てみたいです。お世話してみたいと思っておりますよ。

 しかし、それを負担に思われてはいけません。殿下のお気持ちが1番です。

 ニル殿も、シェフもリュカも、どんな事があっても殿下にお仕えします。殿下が大切なのです。

 ですので、ニル殿にとっては殿下にお仕えする事が1番で、ご自分の婚姻は然程重要ではなかったのではないでしょうか?

 ましてや、子供の頃に婚約された事ですから」

「うん。オク、分かった。有難う」


 俺は、恵まれている。本当に。オクソールはよく俺の事を理解してくれている。


「そうだ、殿下。アスラール殿に2番目の子が出来たそうです」

「えッ!? オク、本当に?」

「はい。まだ分かったばかりだそうです」

「えー、産まれたら会いたいなぁ。あー、駄目だ。アウルに会いたくなってきた」

「アハハハ。殿下は本当にアウルース様がお好きで」

「うん! あの子は可愛い。特別なんだ」

「私達にとって、リリアス殿下もそうですよ。特別です」

「オク、有難う」

「はい」

「リリ、走ろう」

「うん! ユキ」


 俺はオクソールにユキに乗せてもらう。


「殿下、お気をつけて。ユキ、頼んだ」

「ああ。大丈夫だ」


 ユキはシュタッと走り出した。

 風を切って走る。ああ、ここが城の裏の鍛練場ではなくて、辺境伯領だったらなぁ。アウルと一緒に乗れるのに。


「リリ、また行こう」

「うん! ユキ、絶対に行くよ! その時はアウルも乗せて走ろう!」

「ああ! 楽しみだ!」


 ユキが何周も走ってくれた。ちょっと俺、凹んでたのかなぁ?

 オクソールと話せて、ユキと走って良かった。少し、吹っ切れたよ。

 うん。大丈夫。頑張るさ。


「殿下ー! 夕食ですよー!」


 シェフが呼んでいる。アハハハ、めちゃ大きな声だ。


「はーーい!!」


 俺も大きな声で返事をする。


「ユキ、有難う! 夕食だって!」

「ああ!」


 今更だけど、シェフの名前を聞こう。シェフの奥さんの事を聞いてみよう。

 俺は皆に大切にしてもらっている。でも、俺だって皆が大切なんだ。だから、知りたいと思う。知っていこうと思う。


 そっか。俺は知らなかった事が寂しかったのか。やだね、なんか独占欲みたいじゃね? やだやだ、気をつけようっと。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ