表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/442

30ー解呪

 ルーがいないなら仕方ない。俺はなにもできないしな。


「じゃあ、るーが戻りゅまで待つ?」

「その……殿下。試してみては頂けませんか?」


 俺が!? 俺なのか!?


「ボクにできりゅ訳ないよ?」

「レピオス殿が言うには殿下しかいないと」


 えー、嘘だぁー。マジで俺は出来る気がしないぜ?


「殿下、その目は?」

「だってボクできないよ?」

「まあ、レピオス殿に、話を聞いてみられたら如何ですか?」

「わかったよ。リェピオスはどこ?」

「ドアの外に……」


 なんじゃそりゃ!? 入ってこいよ!


「リェピオス、入って」


 レピオスがオズオズと入ってきた。


「殿下、失礼致します」

「なんで入ってこないかなぁ?」

「申し訳ありません」

「いいけど。リェピオス、ボクにできりゅの?」

「はい、ルー様がおられないとなると、殿下しかおられないかと」

「えー、ボク全然できりゅ気がしない」

「それは、どうしてでしょう?」

「だってそんな魔法自体を知りゃないよ?」

「……と言う事は……殿下はまだルー様から解呪を教わってらっしゃらないと?」


 解呪? なんだそれ? 解く呪いと書くあの解呪か?


「かいじゅ? 知りゃないよ?」

「「………… 」」

「オクソール殿」

「ええ、レピオス殿」

「殿下、参りましょう」

「リェピオス、どこに?」

「解呪にです。きっと大丈夫です。私が詠唱をお教え致します」

「そんなんで、できりゅの?」

「多分…… 」


 おーい! レピオス! 大丈夫かよ!? 今、思いっきり目を逸らしたよな!

 仕方ないなー。試してみるだけでも、やってみるか。


「分かったよ。どこ? 連りぇてって」

「はい、殿下」



 さて、やって来たよ。邸の1階奥にある一室にさ。そこに集められた侵入者達。

 昨夜の侵入者てこんなに居たんだ。知らなかった。送り込んできたヤツは馬鹿じゃねーの!? 総勢20人。一人も殺さず、よく捕らえたな。邸のみんな凄いよ。やっぱ、強いんだね。

 俺、ちょっと引いちゃったよ。平和で安全な国、日本人だからね。元だけど。


「リェピオス、どうすんの?」

「はい、他の魔法を使う時と同じです。詠唱が違うだけです」


 俺はさ、その詠唱てヤツが1番ネックな訳よ。言わないけど。恥ずかしいから。なんせ『ら行』があれだから。それこそ呪い級だからな。

 みんな服脱いでスタンバってくれてるけど、申し訳ない。ご期待には添えないと思うんだ。そりゃそんな物騒な物、取れるものなら取ってやりたいけどさぁ。ま、とにかくだな。


「リェピオス、教えてくりぇりゅ?」

「はい、ディスエンチャントです」


 はい、きたよ。ほら長いじゃん。俺に言える訳ないじゃん。


「でいす……でぃす……え……ん?? ん? なんて?」

「殿下、ディスエンチャント」


 んー、やってみるか。片手を出して…………


『ディスエンチャント』


 ――パキン……!


 何かが割れる音がした。


 俺の1番近くにいた男の胸から、おぞましい魔道具が壊れて落ちた。一体どうやって嵌め込まれていたんだ?


「えっ……」

「やはり! 殿下、素晴らしい!」


 マジで!? 出来ちゃったのか!? 俺、心の中で呟いただけだぜ?


「殿下、お願いします」


 あと19人。19回も繰り返すのか? マジで? まとめて出来ないもんなのか? 全部まとめてさ。そんな怖いもんとってやる! 今度は両手で……


『ディスエンチャント』


 ――パキン……

 ――パキン……

 ――パキパキパキン…………………!


「……!!」

「殿下! なんとっ!! 」


 あー……はい。出来ちゃったよ。残り19人の胸から魔道具が壊れて落ちた。3歳児の俺、スゲーな。ビックリだぜ。


「殿下、なんともないですか? ふらついたりは?」


 レピオスが心配してくる。


「え? なんともないよ?」

「普通は魔力切れを起こしてもおかしくないのですよ!」


 まあ、大樹に花を咲かせた位だからね……て、花咲か爺さんかよ。平気さ。全くなんともないよ。


「この人達は、こりぇでもう、だいじょぶなの?」

「恐らくは大丈夫です」


 恐らく……て、何だよ。あやふやだな。確認しよーぜ。俺は、1番最初に魔道具が壊れた男に声を掛けた。


「ねえ、君。ボクはリリ。名前を教えてくりぇりゅ?」

「……俺は……ウル」

「そう。剣を持ってたみたいだけど、剣が得意なの?」

「いや、弓の方が得意だ。弓で狩猟をして生計を立てていたから」

「そうなんだ。なりゃどうしてこんな事をしてりゅの?」

「妻と娘を人質に取られて。魔道具を付けられて抵抗出来なくて仕方なく……すまない」


 うん、解呪は大丈夫そうだ。しかし、人質て……


「誰にさせりゃりぇてりゅの?」

「……?」


 あーもうほら、『ら行』だよ。


「誰に命令されたんだ?」


 オクソール有難う。


「……ファーギル・レイズマン子爵だ」


 ??……誰?


「殿下、例の逃亡している子爵です。そして、第1側妃様の母方の実家に当たります」


 はぁ!? なんだそれ? 此処に来てまた第1側妃かよ。


「もしかして、関係ありゅのかな?」

「かも知れません」


 どんだけしつこいんだ。此処までくると、もう執念だな。


「ねえ、ウル。もしかしてまだ人質にとられたままなの?」

「はい」

「他のみんなもそうなの?」


 俺は見渡して聞いた。20人全員が頷いた。

 何かめっちゃ腹立ってきたぞ。力いっぱい拳を握ってしまった。ダメだ、冷静になれ。


「オク、みんなの話を聞いてあげて。人質がいる場所も分かりゅなりゃ聞いて。ボク、部屋に戻りゅよ」

「殿下、怒っても仕方ありません。お気を鎮めて下さい」


 クソッ、オクにバレてるじゃねーか。


「分かってりゅ!」


 ムカつくぜ! クソッ!


「ニリュ、戻るよ」


 俺は足早に部屋を出た。見ていられなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ