294ー贈り物
ここまで読んで頂き有難う御座います!
このお話で第四章はラストです。
皆様に感謝を込めて!
「さあ、リリも一言」
「兄さま……グシュ、無理です……」
俺は泣き顔を隠したくて抱き上げてくれているフレイの首にしがみ付く。
「リリ、堪えなさい。ほら、皆が待ってるわ」
「母さま……グシュ」
くそ、俺はまだまだだ。しっかりしろよ!
「フゥ……」
俺は一度大きく息を吐いた。よしッ!
「みんなー! 有難う! また来るからねー! 一緒に遊ぼうねー! 有難うー!」
俺は思いっきり笑顔で片手を上げて大きく振った。
――リリ殿下!
――リリ殿下!!
――うぉーー!!
「リリ、あなたまた一緒に遊ぼうなんて……それはないわ」
母よ、此処でダメ出しは止めてくれ。
「エヘヘへ」
「さあ、戻ろう」
「はい、兄さま。ニルズ、テティ、またね!」
「ああ! またな!」
「はい! リリアス殿下!」
ニルズ、テティ、俺の大事な人達。また来るからさ。そん時は宜しく頼むよ。
一緒に遊ぼうぜ!!
辺境伯邸の地下の転移門だ。
もう既に、近衛師団と騎士団、アース達は送った。あとは俺たちが転移するだけだ。
「リリしゃま……」
「リリ殿下」
アウルースとアンシャーリが、俺の前でポロポロと涙を流している。
俺はしゃがんで二人を抱き寄せる。
「ああアウル、アーシャ、泣かないで。また来るから。二人共、約束だ。ボクはまた絶対に来るからね。それまでアーシャもアウルも沢山食べて、しっかりお昼寝して、いっぱい笑っていてね」
「リリしゃま、あい。ゔぇッ……」
「リリ殿下、はい! うぅ……」
「まあ、泣き方までアウルはリリにそっくりなのね」
母よ、雰囲気読もうぜ。なんてな。ワザとだろ? 俺が泣き出さない様に気をそらしてくれているんだ。
「フィオン、身体に気をつけるのよ。会えて良かったわ」
皇后もフィオンの手を握って名残惜しそうだ。
「お母様、有難うございます。お母様もお身体に気をつけて下さい。また、いらして下さい」
「ええ有難う。アウル、アーシャ、おばあさまにもお顔を見せてちょうだい」
皇后様が、アウルースとアンシャーリに目線を合わせて話しかける。
「あい、おばーしゃま」
「おばあさま、またいらしてください……ヒック」
「有難う。まあまあ、そんなに泣いたら可愛いお顔が台無しよ? さあ、笑顔で送ってちょうだい」
皇后様が両手でアウルースとアンシャーリを抱き寄せられた。
そうさ、二度と会えない訳じゃない。笑顔でさよならだ。また、来るさ。絶対にな!
「アウル、アーシャ、またね! 元気でね!」
「リリしゃまー!! リリしゃま!」
ああ、抱きついてきちゃったよ。泣かせたくないんだよ。
俺はアウルースを抱きしめる。
「アウル、リリ殿下を困らせるんじゃない。またお会いできる」
アルコースがアウルースを抱き上げて宥めてくれる。
「リリ」
「はい、兄さま」
「辺境伯、世話になった!」
「フレイ殿下、また是非お越し下さい」
「ああ、有難う! アルコース、フィオンを頼む」
「はい、フレイ殿下」
俺は転移門に魔力を流した。
「アウル! アーシャ! またねー!」
俺は手を思い切り振る。俺たちが白い光に包まれる。
「リリしゃまッ! リリしゃまー!! リリ……」
アウルースの声が途中で聞こえなくなり、光が消えるとそこは城の転移門だった。
父とクーファルが出迎えてくれている。
「リリ、泣いてしまったか」
「クーファル兄さま……ヒック」
「リリ、よく我慢したわ」
母が俺を抱きしめてくれる。
「……ゔぅ……ゔぇ……」
「大丈夫よ。気付いたらきっとアウルも泣き止むわ」
「はい、母さま。グシュ」
まだ耳にアウルースの声が残っている。きっと向こうで泣いているんだろうな。
絶対に直ぐに会いに行くぞ! 約束したからな! 贈り物の感想も聞きたいしさ。
ビックリして泣き止んでくれると嬉しいよ、アウル。
――白い光が殿下方を包み込む……光が消えるともうそこには何方もおられなかった。
「リリしゃま! リリしゃまー! リリしゃまー!! とうしゃま! リリしゃまが! リリしゃまがいないー!! ねえ! とうしゃま! リリしゃまぁーー!!」
アウルースが泣き叫び、転移門中央の殿下がいらした場所に行こうとする。
俺はそれを抱き締めて止める。
「アウル……リリ殿下はお城に帰られたんだ」
「うわぁ〜ん! ヒック、いやぁー! リリしゃま!リリしゃまぁー!! ボキュもいきゅ! おしろにいきゅ!!」
「アウル……」
アウルースが、身体を反らして小さな手を振り回しながら無理矢理俺の腕の中から逃れようとする。
「アウル、リリ殿下の……ヒック、言葉をわすれたの?……ヒック」
「あーしゃ……?」
「リリ殿下が、沢山たべて……グシュ……しっかりお昼寝して、いっぱい笑っていてね。て、言ってらしたわ。ヒック……」
「……あい……ゔぅ、ヒック」
「だからね、約束まもらなきゃ……ヒック」
「アーシャ、偉いぞ。アウルも約束守らないとな」
「とーしゃま……グシュ。ゔぇッ」
「さあ、上に行こう」
「あい、とうしゃま……ゔぇ」
俺はアウルースを抱っこしたまま階段を上る。
「とうしゃま……グシュ……樹のところに行きたいでしゅ……ヒック」
「あの樹か?」
「あい……ゔぇ」
アウルースを抱っこしてあの5本の樹に向かって歩く。裏庭の1番奥にある5本の樹。
リリアス殿下が3歳の時に花を咲かせられた光の樹だ。
少しずつ樹が見えてくる……ッ!! ああ、リリアス殿下。あなたは本当に……
「とうしゃま……! リリしゃまがいます。リリしゃまぁぁ……うわぁ〜ん……」
「ああ、アウル。本当だ。リリ殿下だ」
アウルースがこの場所に行くかどうかなんて分からないのに。気付くかどうかも分からないのに。
リリアス殿下、あなたは……なんて……!
アウルースと一緒に見た5本の光の樹は、小さな白い花が樹々を埋め満開に咲いていた。
リリアス殿下にしか、花を咲かす事ができない光の樹だ。
いつの間に、こんな事をされていたのか。
自分が帰って、アウルースやアーシャが寂しくない様にと考えて下さったのだろうか。
あなたは、どれだけ私達に希望と幸せを下さるのか。
「アウル、忘れてはいけないよ。よーく見て覚えておくんだ。
光の皇子様が、花を咲かせて下さった」
「あい……とうしゃま……ヒック。ボキュ、ボキュぜったいにわしゅれましぇん。
うあぁ〜ん……リリしゃま……やくしょくでしゅー!」
5本の樹に満開に咲いた白い花の間を、小さな白い鳥が飛んで行った。
――――私が2歳の時に見た、真っ白な小さな花が満開に咲き乱れる光の樹。
私は一生忘れない。心に刻んである。
「アウル、贈り物だよ。泣かないで。
笑顔でいるんだ。また会えるからね」
お優しい、ピカピカでポカポカな全てが光の様な皇子様を、私はずっとずっと忘れない。
「約束だ、アウル。
また、一緒に遊ぼう!」
一生、忘れない――――
明日の投稿から第五章に入ります。
兄達の日常も少し出てきます。
続けて読んで頂ければ幸いです!
ここまで読んで頂き本当に有難う御座います。
また、リリ達を宜しくお願いします!