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292/442

292ー勝利

「本当にリリのシェフは凄いわね。あの身のこなし、シェフなのに。信じられないわ」

「母さま、シェフはオク相手に毎日鍛練してますからね」

「そうだったわ。リリのあの事件からまた本格的に鍛練を始めたのだったわね。心強いわ」


 シェフの手元が目で追えない位早い。これでみんなブースト無しだもんな。シェフなんてブースト無しであの高さのバック宙だぜ。隊員達の頭の上で回転している。隊員達の身体能力はどーなってんだ?


「殿下の事件とは、湖のですか?」

「ラルク、そうだよ。あれからボクに付いてくれている人達は皆、何かしら鍛練してるんだ。レピオスもね」

「凄い……負けてられません」


 ラルク、頑張れ。期待してるぜ。でもまずは自分の身を守ってくれよ。

 それにしても、リュカは本当に転けなくなった。前はこの競技でも転けてたのに、ピョンピョン飛び跳ねる様に素早く躱している。



 ――ピピーー!!


 アスラールが終了の笛を吹いた。


「手首の紙風船が残っている者だけ立って、後はしゃがんでくれ!」


 あらら。領主隊、どーした? 1人しか残ってないぞ? しかも片手の紙風船しか残っていない。

 近衛師団は団長と例のキンイロジャッカルの獣人の隊員が残っていた。やっぱ獣人は身体能力が違うよな。

 アースの兄は残念ながら、破られてしゃがんでいた。

 騎士団は、もちろんオクソール、リュカ、シェフ、フレイが両手共残っていて、デュークと隊長が片手のみ残っている。

 フレイ、凄いじゃん! あれで皇子だぜ? てか、皇太子だぜ。

 

「騎士団の勝利! よって、今回の対戦は騎士団の勝利!!」


 ――おおぉーー!!!!

 ――くそー! まただ!

 ――はえーよ!

 ――マジかよー!


 アハハハ、みんな悔しいんだな!

 フレイが前に出てきた。


「皆、よく頑張った!

 騎士団、よくやった! 連勝記録更新だ!

 近衛師団、初めてなのによく奮闘した!

 領主隊、まだまだやれるぞ! 頑張れ! 鍛練あるのみだ!

 皆、隊は違えど帝国の守護神である事には変わりない! 皆の双肩に掛かっている! 帝国を頼んだぞ!!」


 ――ははッ!!


 全ての隊員がフレイに向かって手を胸の前にやり最敬礼した。

 フレイさん、流石だね。カッコいいよ! 綺麗にまとめたな!

 紛れもない皇帝の資質、てやつだな。

 そう言えば、忘れてたけど近衛師団はこんな対戦しないんだな。初めてだったのか。それにしてはよく頑張った。


 ――おおぉーー!!!!


 もう、雄叫びだね。圧倒されるよ。


「カッケーッ!! 俺、絶対に騎士団入るぜッ!!」

「アハハハ! アース、頑張れ!」

「ああ、リリ殿下!」

「フレイ殿下、満足気ね。参戦するのはフレイ殿下だけなのよね」

「母さま、やっぱり?」

「ええ。クーファル殿下が参戦する訳ないじゃない。でも、テュール殿下が配属されたらきっと参戦されるわね」

「そうですね。わざわざ転移して来てまでダンジョン攻略に参加する位ですから」

「リリ、本当だわ。立派な脳筋だわ」


 母、ホント酷い……


「さあ! お昼だ! バーベキューだよ! みんなー! いっぱい食べてねー!」

「てねー!」


 ――おー!

 ――リリ殿下ー!

 ――アハハハ! 食い気ですか!


 アウルはしっかり合いの手忘れないね。


「リリ、もう貴方は恥ずかしいわ」

「え? だって母さま、お腹が空きました」

「しゅきました!」

「アウルは可愛いわね〜。ユキ、護衛ありがとう」

「これ位構わぬ」


 あ、ずりーな。母に首筋を撫でてもらって目を細めてるよ。でも、ユキさん有難うね。


「さあ! 皆さん沢山食べて下さい! たっぷり用意してますよ!」


 シェフ、早着替えだよ。もうエプロンつけてるぜ。前もそうだったよな。


 前庭にバーベキューが用意される。

 肉も魚介類も焼かれ、オニギリ、グラタンやシチューもドドンッと出されて並べられる。

 観戦していた領民達も、ワァッと食べ始める。


「リリしゃま! お肉! おににり!」

「アウル、アーシャ、貰いに行こう!」

「あい!」

「はい! リリ殿下!」

「腹減ったよー!」

「アース、食べ過ぎんなよ」

「レイ、分かってるさ」

「ハハハハ、凄い量ですね」

「ラルクも行こう! 母さま! 行きましょう!」


 皆で簡易に設置されたテーブルセットに向かう。

 

「リリ殿下! すみません、ずっと見て頂いて」


 アスラールがやって来た。アルコースもいる。アウルースをアルコースに預ける。アンシャーリもだ。小さいからな、抱っこしてもらわないと危ない。


「いえ、全然。楽しかったですよ」

「ありがとうございます」

「とうしゃま! ボキュ、リリしゃまと食べりゅ。下りょしてくだしゃい!」

「アウル、人が多いから危ない。座るまで父様が連れて行くよ。それからリリ殿下と一緒に食べなさい」

「あい! リリしゃまのとなり!」

「アウル! あたしもリリ殿下の隣よ!」

「えー! アーシャはアーシュでしゅ!」


 おやアウル、よく見てるね。


「リリ殿下とアース様の隣!」


 お、おお。やっぱ女子はたくましいな。


 座ると、シェフやニル達が色々盛って持ってきてくれた。


「殿下、りんごジュースです」

「ニル、ありがとう。ユキにもね」

「ああ。すまぬ」

「ユキ、有難う。沢山食べて」

「リリ、我は肉がいいぞ」

「はいはい、ユキどうぞ。ユキ用にブロックで焼いておきました」

「シェフ、すまぬ」

「いえ、とんでもないですよ。まだありますからね」


 ユキ、どんだけ食べるんだよ。その肉の塊、1kgはあるよな? もっとか? よく分からん。


「リリ!」


 フレイとデュークがやって来た。フレイさん、得意気だよ。


「フレイ兄さま! お疲れ様でした!」

「ハッハッハ! 大勝利だ!」

「はい! 見事でした!」

「だろぉ? 第1騎士団は俺が特訓してるからな!」


 マジかよ。俺なら絶対に嫌だね。


「フレイ殿下、お見事でしたわ」

「エイル様、有難うございます」

「兄さま、デュークも座って! 食べましょう!」


 よく考えると、こんなに身分差別のある世界で、皇族と貴族と平民が同じ場所で同じ物を食べるのはきっと他の国ではありえない事なんだろうな。

 王国に行ってからそれがよく分かるよ。


 王国で城を襲撃された後、父の部屋に集まって皆で普通に食事をした時に王国の王子2人が驚いていた。

 俺は当たり前の事だった。皇帝である父も母もクーファルも、一緒に行った者達も当たり前の事だった。

 オクソールとリュカなんて、さっさと床に座ってユキと一緒に食べてたからな。


 でもそれを見て王国の第2王子は泣いたんだ。羨ましいと。別世界だと。自分も中に入りたかったと。

 俺はそれを知ってから余計に、こうして食べられる国で良かったと思うよ。

 同じ日本人だった初代皇帝さん。あんたの功績だ。有難う。感謝するよ。


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