287ー一緒に遊ぼう
魚介類の種類も5年前と比べて増えている。前は動きが早いから捕りにくいと言ってた、イカやタコも水揚げされている。蛤もある。エビも種類が豊富だ。
「凄い! 俺、見た事ないのばかりだ!」
アースが驚いている。そうだよな、帝都にはまだ流通してないもんな。
「新鮮だからな。焼いて塩やソイをかけるだけでも美味いぞ」
うんうん、そうだよな。
今日はシェフも付いて来ている。港のおじさん達と話しているから、きっと持って帰るつもりだな。
アウルースと俺が手を繋いで、アンシャーリはアースと手を繋いでいる。ちゃんと2人の父親も来てるさ。あとはもちろん、オクソールとリュカだ。ユキもいる。
「リリ殿下、前はアレが出たよな」
「ああ、おっちゃん。アレね」
そんな事言ったらフラグ立ちそうだよ。俺は嫌だからね。
「殿下、アレって?」
「レイ、クラーケンだよ。赤い大きなクラーケン」
「ええッ!?」
「あん時は、次期様とリリ殿下が魔法でアッサリ倒しちまって。美味かったな」
「えッ!? 食べたんですか!?」
「おうよ!」
「ラルク、美味しいんだよ」
「ああ、アレは美味かった」
ユキさん、覚えてたんだね。めちゃ食べてたもんな。
「アウル、大人しいけど疲れた?」
アウルースが首を横にブンブンと振る。どうした?
「リリしゃま、ボキュ知らないのいっぱいでしゅ」
水揚げされている魚を指差して言う。
「そうかな、アウル。食べてるのも沢山あるよ?」
「え! ボキュ食べてましゅか!?」
「うん、お魚食べてるでしょ?」
「おしゃかな……ちがいましゅ」
そう言ってアウルースは小さな長方形を指で描く。あら……? あらら?
「リリアス殿下、アウルは魚1匹丸ごとは見た事ないんですよ」
「アルコース殿、そっか! お魚は切り身しか知らないんだ!」
あー、日本でもいたよ。魚は切り身で泳いでないっての。
「アウル。あの大きいお魚をね、シェフ達が食べやすい様に切っていつも食べてる形にしているんだ。元はあんなのだよ」
「ふぉぉ〜、切って!」
「大きい……!」
アハハハ、もしかしてアンシャーリも知らなかったかな?
「シェフ、しゅごい!」
アハハハ! シェフなんだ!
小さな子って、発想が面白いよな。
さあ、そろそろ浜辺だ。
「アウルとアーシャは浜辺に来た事あるのかな?」
「リリ殿下、初めてです!」
「でしゅ!」
そうなのか? 近くにあるのに。
「今日は浜辺で遊ぼう」
「あい!」
港とは違って、船が停泊していないから、波が打ち寄せているのも水平線もよく見える。
「ふわぁぁーー! リリしゃま! 広いでしゅ!」
そうだよ。世界は広いんだ。アウルースやアンシャーリの知らない事が沢山あるんだ。
俺はアウルースと波打ち際に行く。
「リリしゃま、ジャパーンて! おみじゅ!」
「アウル、海はね普通のお水じゃないんだ。塩っぱいんだよ」
「ひょ! 味しましゅか!?」
「アハハハ! そうか! そう思うんだ。確かに味だけど、塩っぱくて飲めないよ?」
「ひょー!」
「リリ殿下、ここら辺ならいるぞ」
「うん、おっちゃん。有難う。」
さてさて、俺はマジックバッグから秘密兵器を出そうかな。
「はい、アウル。アーシャも」
「リリしゃま? なんでしゅか?」
「これでね、こうして……」
俺は波打ち際を掘って見せる。
「ほら! 貝が出てきた!」
「ホントだ!」
アンシャーリも食いついてくれた。よしよし。
子供でも持ちやすい様に、小型の熊手を作ってもらったんだ。危なくない様にちゃんと先を丸くしてな。
これを使って今日は潮干狩りだ!
「食べれるからね! 沢山とって持って帰って食べよう!」
「あい!」
「はいッ!」
アウルースとアンシャーリが掘り出した。
アースとレイとラルクもリュカに熊手を貰っている。
「リリ殿下、何でも知ってんだな」
「アース、今更だよ」
「レイ、そうだった」
「リリアス殿下、この貝はよくパスタに入っている?」
「そうそう。ラルク、そうだよ。アサリだよ」
「あー! アウル! お前座ったらお尻濡れるだろ!」
「あー、とうしゃま。びしょびしょ」
あーあ、座っちゃったか。
「アウル、おいで!」
俺が呼ぶと、アウルースがトコトコとやってくる。濡れて気持ちが悪いんだろう。変な歩き方をしている。
ドライ。と、ついでにクリーン。シュルンと水気がとんで乾いた。
「よし、気をつけてね。」
「リリしゃま! しゅごい! 魔法でしゅか!?」
「そうだよ。アウルも大きくなったら出来るよ」
「ボキュも!? ボキュもできましゅか!?」
「うん。できるよ」
「とうしゃま、かあしゃま使ってましゅ!ボキュもできるでしゅか!?」
「うん。もっと大きくなったら教えてもらうといいよ」
「今はだめでしゅか?」
「アウルはまだ小さいからね。それより、沢山食べて、遊んで、ちゃんとお昼寝する方が大事だよ」
「あい!」
お利口さんだね。
それから、俺達は沢山アサリをとって、砂浜でトンネルを作ったりして遊んだ。
波を追いかけっこしたりした。恋人同士かよ、てな。太陽に向かって走ってはないぞ。え? 古い? まあ、中身はオッサンだからな。
アウルースとアンシャーリは初めての砂浜で歩きにくそうだった。
レイもだ。アースは運動神経が良いんだろうな。平気な顔をして走っていた。
もう少し大きくなったら、ビーチバレーも良いなぁ。小さくても俺は飛べる! なんてな!
「殿下! 色々焼いたから食べな!」
「はーい! おっちゃん有難うー!」
エビの塩焼き、蛤のソイ焼き、イカの炙ったもの、牡蠣。ご馳走だ。え? 蟹もある。こんな季節に蟹か? これは、タラバかな?
「おっちゃん、この季節に蟹が捕れるの?」
「ああ、この種類のは春と冬に捕れるんだ」
へえ〜、知らなかったよ。
「うんまッ!」
「アース、口ん中いっぱいじゃないか」
「だってレイ! マジ美味いぞ!」
「本当に、焼いただけなのに。美味しいですね」
「ラルク、そうでしょ〜。新鮮だからね。プリップリだ」
「リリしゃま! おいしー!」
「あーあ、アウル。手も口の周りもベタベタだ」
アルコースがアウルースの顔を拭いている。
「とうしゃま! おいしーでしゅ!」
「アーシャ、美味しい?」
「はい! リリ殿下、美味しいです!」
やっぱ、アーシャは食べるの上手だよな。アウルと違って、全然顔が汚れてないぞ。