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281ーリリ参戦

「リリしゃま! むいむい!」

「アハハハ! アウル、虫駄目なの?」


 俺達は裏の畑に来ている。

 アウルとアーシャ、レイ、アース、ラルク、オクソールとリュカも一緒だ。

 シェフは喜び勇んで、大きな籠を抱えて野菜を収穫している。


「リリアス殿下! 立派なキャベツです!」

「シェフ、本当だね。ロールキャベツが食べたくなるね」

「殿下、そうですね。今夜は久しぶりにロールキャベツにしましょうか」

「うん、シェフ! 楽しみ!」

「リリ殿下、何だそれ?」

「え? アース、知らない? ロールキャベツ。ミンチ肉をキャベツで包んでコンソメのスープで煮るの。ボクはトマト味が好き」

「ほうほう。リリアス殿下はトマト味と」

 

 シェフが何かブツブツ言ってる。


「此方に来て知らない料理ばかりです。どれも美味しくてビックリです」

「レイ、そうなの?」

「はい。帝都にはない料理ですよ」

「あらら、定番なんだけどな」

「殿下、まだレシピが出回ってないんですよ」

「シェフ、そうなの? 何で?」

「さあ? 私には分かりません」

「あー! またむいむい! いやー!」

「アハハハ! アウル転ぶよ!」


 そりゃあだって、無農薬だもんな。虫はつくよ。


「殿下、以前森の調査の時に作られた虫を駆除する薬液を覚えておられますか?」


 そう言えば、作ったな。


「アスラ殿、作りましたね」

「あれを薄めて使っているのです。ですので、かなり虫の被害はマシになっているのですよ」

「そうなんだ」


 活用してくれていて、嬉しいな。

 城でも庭師が使ってると言ってた。


「ひゃぁー! うにゅうにゅ!」


 うにゅうにゅ!? なんだそれ!?

 アウルが指差す所を見る……あー、確かに。うにゅうにゅしてるわ。


「アウル、これはミミズさんだよ」

「みみじゅしゃん……?」

「そう。このミミズさんはね、土をフカフカにしてお野菜が大きくなる為の栄養分を作ってくれるんだよ。大事な役割があるんだ」

「え? えいよ??」

「んー、アウルはご飯を食べるでしょ? それと一緒だ」

「お野菜のごはん?」

「ん、そんな感じ」


 小さい子に説明するのは難しいな。


「だいじ?」

「そう。大事なんだよ。怖がらずにそっとしておいてあげようね」

「あい!」

「リリアス殿下、先生ですね」

「リュカ、やめて。どう説明すれば良いのか分かんないよ」



 昼食後……アウルースとアンシャーリがお昼寝だと静かだ……いや、別の人達が全然静かじゃなかった。

 また領主隊と騎士団と近衛師団だ。


「リリ殿下、また何かやってますよ?」

「ああ、レイ。まただね。今度は何だろ?」

「リリ殿下! 行こう! 見に行こう!」

「アース、行ってくれば?」

「何で!? 見に行こう!」


 はいはい、行きますよ。もう、元気だよなぁ。レイとアースとラルク、ユキと一緒に裏庭に出る。



「殿下! 来ましたね!」


 リュカ、何でそんなに嬉しそうなんだよ。


「リュカ、今度は何?」

「障害物競走ですね。今、予選をやっていた所です」


 運動会じゃねーんだからさ。


 裏庭に大きな楕円のコースが描かれている。

 最初は、前世のハードルの代わりの様な物が等間隔に数個置いてあって、跳び越えながら走る。

 その次は網をくぐる。くぐり抜けた先には平均台のような物が置いてあってその上を走る。次に板でトンネルの形を作ってあって、その中を四つん這いになって進む。

 最後の100m程は何もない。スピード勝負だ。


「あー、これも初代皇帝?」

「はい、そうです!」


 だよねー。だってモロ障害物競争だもんね。


「よくこんなの用意したね。これは個人戦なの?」

「いえ、リレーします。騎士団、近衛師団、領主隊から5名選抜して対戦です」

「俺もやりたい!」

「アース、またそんな事を言う。僕達なんて、相手にならないだろ?」

「だってレイ、やってみたい!」


 そうだよ、ハンデでも貰わなきゃ無理だよ。そうだハンデだ!


「リュカ、ボク達も参加する!」

「えぇ!? 殿下、無理ですよ! 大人と子供ですよ? しかも騎士団に近衛師団、領主隊ですよ?」

「うん。だからハンデちょうだい」

「ハンデですか?」

「そう。ハンデ」


 と、言う事で走る順番だ。

 騎士団チームは最初はアースの兄のイザーク、騎士団長、シェフ、リュカ、そしてアンカーが当然オクソール。


 近衛師団チームは、隊員3人、獣人のレウス、そしてアンカーはもちろんティーガル・オークランス団長だ。


 領主隊からは隊員4名、アンカーが隊長のウルだ。


 俺達はアース、ラルク、俺、アンカーにユキ。

 レイは絶対に参加したくないらしいので、ハンデで4人にしてもらった。尚且つ、俺達はハードルを半分に減らしてもらい、第1走者のアースが最後の100mを走り出すまで、他のチームはスタートを待ってもらう。

 どうよ、このハンデ! 第1走者の意味が殆どねーよ! ワッハッハー!

 

「殿下、甘いですね。その程度のハンデでは負けません」

「うわ、オク言ったね」

「はい、殿下。当然です」

「ユキ、遠慮しなくて良いからね」

「ああ、分かった。任せておけ」


 ユキさん、ヤル気だね! 目がキラーンて光った気がしたぜ?


「殿下、本当に参加されるのですか!?」

「うん、アルコース殿。やるよ! 勝つからね!」

「アハハハ! 頑張って下さい!」


 あー、絶対に舐めてるな。


「おし! リリ殿下! ラルク! ユキ! 勝つぞ!」


 アース、めちゃヤル気。ぶっつけ本番なのに大丈夫か? まあ、騎士団志望なんだからそこそこいけるだろう。

 てか、俺の方が大丈夫か?



「第1走者、前へ!」


 スターターはアルコースだ。


「アース、お前頑張れよ! 足引っ張るなよ!」

「なんだよ、兄貴! 兄貴こそ頑張れよ!」

「うわッ! 生意気ー!」


 アハハハ、さすが兄弟だ。よく似ている。



 スタートラインに、アースを含む第1走者が並ぶ。


「いいか! アースが100m走り出したらスタートだ。アース、いいか?」

「はい! いつでも!」


 まあ、最初は半分以上1人だしな。


「よーい、スタート!」


 アースが1人走り出した。ハードルを跳び……


 ――バタンッ


「イテッ!」


 跳び……


 ――バタンッ


「イテッ!」


 跳べてねーじゃんよ! 倒してるじゃん!


「アース! 跳び越えるんだぞ! 倒す競技じゃないぞー!」


 ――アハハハ!

 ――頑張れー!


 あーあ、お兄さんに言われてるよ。

 もう皆に相手にされてねーよ。最初からボロボロだ。


「うるさい! 分かってるってーの!」 


 ――バタンッ


「イテッ!」


 アース、言い返す余裕があるなら跳び越えようぜ。


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