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278ー妖精の加護

「だからな……ボクはそれからずっと食べてなかったからさ」

「うん。りんごジュース飲む?」

「うん! 飲む!」


 俺はりんごジュースを入れている容器の小さな蓋にりんごジュースを入れてあげる。


「リリ! お前、いい奴だな! 有難うな!」

「うん、いいよー」

「おい、妖精」


 俺の肩にとまり、ルーが妖精に話しかけた。偉そうだな? きっと、ルーの方が偉いんだろうな。


「なんだよ、偉そうに……げッ!? 精霊様!?」


 やっぱり。ルーに気付いた妖精がビックリしてるよ。


「ああ、光の精霊だ。リリに加護を授けている」

「か、か、加護!?」

「ああ、そうだ。お前さ、いくら状態異常に掛かったからって、何でオークエンペラーなんかに捕まってんだよ?」

「だって精霊様! いると思わないじゃないですか!?」

「それでもだよ。いくらエンペラーだと言っても、オーク種に捕まるなんて。ボーッとしてんじゃないよ?」

「すみません……」


 妖精がシュンとしたよ。正座しちゃってるよ。あーあ、かわいそうに。


「リリ、可哀想なんかじゃないよ? 妖精がオーク種なんかに負ける訳ないんだよ。捕まるなんてマヌケすぎる」


 そうなのか? 俺は全然分からないけど。


「リリ、我もそう思う」


 え!? ユキも!? そうなのか。力関係はそんな感じなんだ。


「ユキさん、肉まん食べた?」

「ああ、美味かった」


 それは良かった。どんだけ食べたんだろう?


「この森の妖精の長がいるだろ? そこからこの国の長に話がまわって、妖精女王に救援要請がいって、女王から僕のところに話がきたんだ。僕が加護を授けているリリが丁度近くにいるからってさ。

 お前、戻ったら長にしっかり謝りなよ」

「はい……それはもう、分かってます。有難うございます」


 妖精はルーに平伏した。あーあ、もういいじゃん。助かったんだしさ。


「リリ、良くない」


 はーい。て、言うかその話の内容だとルーは知ってた訳だね。


「リリ、知ってた訳じゃない」


 救援要請が来て、ルーが気配を探ってみたもののヒットしなかったらしい。まさか格下のオーク種に捕まってダンジョンコアにされていたとは思わなかったそうだ。

 

「じゃあ、そのオークエンペラーはなんでいたの?」

「殿下、隣国から来たオークです」

「オク、やっぱりそうなの?」

「はい。見て確認しました」

「他にはもういない?」

「はい、いません。オークの中でもハグレですね」


 へぇ〜、ハグレ? 全然分からんわ。


「まだ、1匹だけで良かったよ」

「ルー、そうなの?」

「リリ、オークは食い意地が張ってるからな。そこら中、食べ散らかすんだよ。森にいる魔物以外の生物まで食われてしまう」

 

 へぇ〜、そうなんだ。


「早く食べな。食べたら僕が長の所まで送ってあげるからさ」


 あら! ルーさん優しいじゃん。


「妖精女王から話が来たからね。仕方ないさ」


 妖精女王なんているのか。全然知らなかったよ。ファンタジーだな。


「誰も知らないだろ? 妖精は気まぐれだし、絶対に人には姿を見せないからね」

「殿下、わたしも『精霊の眼』が無ければ妖精とは信じられませんでした。お伽話でしか知りません」

「じゃあ君はかなり叱られちゃうね」

「リリ、それは仕方ないさ」


 あらら、ただでさえ小さい妖精がより一層小さく見えるよ。

 まあ、仕方ないじゃん。わざとじゃないんだしさ。今はしっかり食べな。元気になって、しっかり怒られな。



「……ケフッ。美味かった! 有難う!」

 

 今、この妖精ゲップしたよな? 可愛いな、おい。


「じゃあ、行くか」

「あ、精霊様! ちょっと待ってください!」


 なんだ? 妖精がヒラヒラと飛んできた。


「リリ、本当に有難う。ボクの命の恩人だ。何かお返ししたいんだけど、ボクは何もないから。だから、せめて今後森に異変があったらリリに伝えるよ」

「え? 本当? 助かるよ。ああ、ボクじゃなくてこの人に伝えてくれる? ボクはずっとここに居る訳じゃないからさ」


 そう言って近くにいたアルコースを引っ張った。アルコースはキョトンとしている。


「へっ? 殿下、俺ですか?」

「え? 誰?」

「ボクと一緒にダンジョンにいたでしょ? この森のある領地を治めている人達なんだ」

「ああ、あの人間の街か?」

「そうだよ。ボクはこっちの街にはいないんだよ」

「そうか、じゃあ仕方ないな。お前、名前は?」


 ――パシッ!


 あ、ルーが妖精を叩いた。


「イテッ!」

「お前、助けてもらって何偉そうにしてんだよ?」

「せ、精霊様、すみません」

「アルコースだ。宜しく頼むよ」


 アルコースが妖精に向かって手を出す。

 いや、握手は無理だろう。


「アルコースか。ボクはフィー。宜しくね」


 フィーがアルコースの指先を両手で掴むと、指に深い緑色の葉の模様が指輪の様に浮かび上がった。そして妖精はヒラヒラと飛び、アルコースの額に小さな手をポンッとついた。

 アルコースの額が一瞬小さく光った。


「おい、お前。良いのかよ。それじゃあ、妖精の加護を与える事になるぞ?」

「はい、精霊様。命を助けてもらったんです。これ位はしないと」

「そうか。じゃあしっかり加護しなよ」

「はい! 精霊様!」


 え……? 加護!?


 ルーが言うには、妖精の加護と言ってもそう大した事はないらしい。

 どこにいても、どれだけ離れていても念話を繋げられるそうだ。妖精が見たものをそのままイメージで伝える事も出来るそうだ。

 まあ、いいじゃん。便利そうだ。


「僕の加護に比べたら、全然大した事ないさ」


 と、言ってルーは胸を張っていた。


「リリ、本当に有難う!」


 フィーはヒラヒラと飛んで俺の指先を掴んだ。アルコースと同じ模様が指輪の様に浮き出た。


「これでリリとも話せる」

「そうなの?」


 俺はマジマジと自分の指に浮き出た模様を見る。


「うん。また森に来たら会おうよ。待ってるからさ」

「うん、有難う」

「じゃあ、いいか? 行くぞ?」

「はい、精霊様」

「リリ、気をつけて戻るんだよ」

「うん、ルー有難う」


 ルーと妖精のフィーは光って消えた。


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