275ーラスボス
「殿下、蛙嫌いなんスか?」
「リュカ、別に好きでも嫌いでもないけどコレはキモ過ぎる!」
「あー、シェフも凄いッスね」
「リュカとオクは行かないの?」
「私達は、殿下をお守りするのが最優先なので」
「オク。ありがと。うげッ!」
そこら中、デカイ蛙の死骸だらけだ。早く消えて欲しいわ。
「しかし、こんな低階層でこのランクの魔物とは……弱すぎますね」
「オク、そうなの?」
「はい。まだ上の階層の方が強い魔物がいましたよ。まあ、大きくはなってますが」
「え、どう言う事?」
「さあ、分かりません」
普通は、下層に行けば行くほど出てくる魔物は強くなるはずだ。
確かに、弱すぎるよな。まあ、数と大きさだけはとんでもないけどさ。
「よしッ! 終わったぞ!」
ダンジョンの良いとこは死骸が消える事だ。あの巨大な蛙の死骸を大量に持って帰るなんて、考えただけでもゾッとするぜ。
ドロップアイテムは、蛙の油と皮だった。大量にあるぞ。水を弾くらしいから、雨具に良いな。
次の階層へ下りる。
「ビックヴァイパーだ」
フレイよ、何? 何だそれ? 目の前にはマムシの様な……巨大な蛇か?
「殿下、毒を持ってますよ!」
「え、リュカ。そうなの!?」
「はい! しかも、普通のより巨大です!」
あー、やっぱ大きいんだ。巨大シリーズ決定だぜ。きっと次の階層もデカイのが出てくるぜ。
――ザギュンッ!!
――ドサッドサッ!!
「うわ、テュール兄さま凄い」
「あれは、毒霧を吐きます。だからその前にやっつけてしまわないと」
「なるほど」
お、シェフも行った。またフレイとテュールとシェフで次から次へと斬り倒して行く。
「アルコース殿、どうしました?」
「殿下、いえ。皆さん凄すぎて……ハハハ」
え? もしかして、引いてる?
あ、ドロップアイテムが落ちてる。毒かよ! まんまじゃねーか! いらねーよ! 皮も落ちてた。うん、こっちの方がまだマシだ。マジックバッグに丁度いいや。
「さ、次に行きましょう」
「オク、次で最後だね」
「ええ、その筈です。魔物が少し強くなりましたね」
そうなのか? でもあの3人は軽く斬っていたよ?
皆で下層へ下りる。最後の階層へ向かう。
「オク、これは?」
「グレートタートルですね」
「デカイね。やっぱ大きいシリーズだよね」
「シリーズですか……クフフ」
「で、この大きい亀さんは何するの?」
「踏まれます」
あら、そう……まんまじゃん。
「時々、毒を吐きます。丸くなって突進して来ます。しかし、何よりあの甲羅が硬いので剣が通りません。氷属性魔法が効きます」
「オク……兄さま達斬ってるよ?」
「斬ってますね」
「剣が通らないんじゃないの?」
「はい、その筈ですが」
テュールとシェフが剣に氷魔法を付与して斬り倒していた。勿論、側近の二人もだ。あの二人は兄さま達が脳筋だから大変だろうな。
フレイは雷だ。アルコースも剣に水魔法を付与して斬っている。
剣がどうとか以前の問題だ。ミスリルなのも大きいのだろう。しかし、剣に魔法を付与するとこんなに違うものなのか。
巨大な亀が沢山いたのに、あっという間に討伐してしまった。
この巨大な亀、ドロップアイテムで鉱石を落とす。時々、ミスリルも落とすらしい。
「殿下! ミスリルありましたよ!」
「アルコース殿、やった! アハハハ!」
アルコース、討伐よりドロップアイテムを拾うのが中心になってるじゃん。いいのか?
「兄さま! 扉です!」
「殿下、あの奥ですね」
「うん、オク」
フロアの最奥に大きな扉が現れた。
「オク、リュカ、シェフ、ユキ、行こう!」
さて、ラスボスは何が出るのか。
「リリ、行くぞ」
「はい、フレイ兄さま」
フレイが両手で扉を開ける。
広い部屋の両側、天井付近にジャイアントスパイダーが奥までびっしりと並んでいる。その名の通り、大きな大きな蜘蛛だ。
こいつは最初のエリアボスで出てきたビックスパイダーのもっと大きい版だ。さっきのデカイ亀さんもいる。
最奥に、ラスボスらしき奴がいた。
オークエンペラー。オークの中でも上位種だ。デカイし、そこそこ強い。で、オークだが少し賢い。状態異常を使う。
こいつがダンジョンコアを守っている。
「あー、ちょいウザイのが出てきたな」
「ええ、兄上」
「リリ! 蜘蛛と亀を任せてもいいか!?」
「はい! フレイ兄さま! シェフ! 兄さま達の方へ行って!」
「はい! 殿下!」
シェフがフレイとテュールの方へ走って行く。
「オク、様子を見て兄さま達の方へ行ってね」
「しかし、殿下」
「大丈夫、リュカと、ユキがいるから」
「リュカ、出し惜しみせず使うんだぞ」
「オクソール様、分かってます!」
「リリ、我に乗れ」
「うん、ユキ。お願いね」
「殿下、無茶はなさいません様」
「アルコース殿、大丈夫です。アルコース殿も気をつけて!」
「有難うございます!」
「殿下、行きますよ」
「うん、オク、リュカ」
俺はユキに乗って、天井付近にいるジャイアントスパイダー目掛けて飛んだ。
「兄さま! オークエンペラーの後ろにコアがあります!」
「おうッ! 分かった!」
フレイ、テュール、シェフもオークエンペラー目掛けて走る。
フレイとテュールの側近達も後を追う。
――キュイーンッ!!
――ザシュ! ザシュッ!!
俺が攻撃するのと同時にオクソールとリュカもジャイアントスパイダー目掛けて斬撃を飛ばした。ユキは片っ端から後ろ足で蜘蛛と亀を下に蹴り落としている。
――ギュイン!!
――キュイーン!!
――ザシュ! ザシュッ!!
アルコースも斬りつける。
――ズザンッ!!
――ザシュ!!
リュカが俺達をマルチプルガードで守る。
ジャイアントスパイダーが糸を吐き出して攻撃してくるが、リュカのマルチプルガードで防御されて届かない。
マルチプルガード、いいなぁ。無敵じゃねーか。