274ー最下層を目指して
――キュイ〜ンッ!!
「おぉー!! リュカもか!」
「兄さま、そっち駄目ですよ! 罠がありますよ!」
「え? おお、悪い」
俺はまた土魔法で罠を作動させる。今度は天井から岩の槍が降ってきた。
サクサクと先に進む。このエリアのクマさん達もあまり強くない。
「次がエリアボスです」
「はい! お任せ下さい!」
騎士団と領主隊が扉を開けて入って行く。
やっぱ、エリアボスもクマさんだった。大きな大きな大きなクマさん。
一瞬でサヨナラだったけど。
クマさんのお肉と皮がドロップアイテムだった。とても美味しいらしい。皮は防具に使えるそうだ。
あれ? ここでこそ蜂蜜じゃね? 超有名な黄色いクマさん、蜂蜜持ってるじゃん?
ほら、フィギュアスケートの大会で沢山リンクに投げ込まれる、誰かさんの好きな黄色いクマさんだよ。
「ここでもう30階ですね」
「ああ、先に進もう。リリ、見えるか?」
そうなんだよ。やっぱ、オクソールが言ってた通り先があった。
「フレイ兄さま、見えますよ。まだ先があります」
ちょっと待てよ……
「オク、見てほしいな」
「殿下、何ですか?」
「次のフロア。何か引っかかるんだ」
俺は、下におりる階段の先を指差す。
「殿下……あと5階層ですね。次のエリアは魔法攻撃が効きませんね」
やっぱりか……
「よし、やっと出番がありそうだな。テュール」
「はい、兄上」
じゃあ、俺は最後尾で……
「て、リリ。どこ行くんだよ。サッサと行くぞ」
はい、分かりました。
「ここまで頼むぞ!」
――はいッ!!
アルコースが残る隊員達に声をかけた。
さあ、最後のエリアだ。気を引き締めて行こう!
31階層からは、ゴーレムのオンパレードだった。獣のゴーレムもいるんだね、知らなかったぜ。
オクソールが見た通り、魔法耐性があって魔法攻撃が役に立たない。
そこで、張り切ったのがフレイとテュールだ。
――ガキーン!!
――ドゴーンッ!!
「あー、兄さま達凄いや」
「ええ、本当に」
「シェフも行ったよ」
「ああ、はい。側近の方々もなかなかですね」
「オク、行かないの?」
「必要ないでしょう」
「……確かに」
フレイとテュールとシェフ、兄達の側近二人で、ガンガン倒していく。ゴーレム? それは大きなオモチャですか? て、感じだ。
「魔力耐性はありますが、そう強くないですね」
「オク、そうなの? でも、みんなの剣はミスリルだよ?」
「まあ、そうですね」
「リリ! 次はどっちだ!?」
「フレイ兄さま、右です! 曲がったら止まって下さい! 先に罠を解除します!」
「おうッ! 分かった!」
俺達はフレイとテュールとシェフが倒した後始末だ。
ドロップアイテムを回収しながら進む。
ゴーレムて、やっぱ金属をドロップするんだ。知らなかったぜ。
「ね、オク。ミスリルも落とすかな?」
「ああ、この弱さだと無理でしょう」
「そうなの?」
「はい、同じゴーレムでも、もっとレベルの高いゴーレムでないと無理でしょう」
そっか。そうなのか。ちょっと期待したのにな。
「フレイ殿下! ストップです!」
側近のデュークが咄嗟に引っ張ってフレイを止めてくれた。危ない、罠に突っ込むところだった。
「もう、兄さま。罠があると言ったのに」
「リリ、すまない。ついな」
俺はサッサと罠を解除する。地面に手をついて土魔法で揺らす。
――ゴゴゴゴドゴーーンッ!!
上下から岩の槍が降ってきた。これ、マジで殺す気だよな。超怖い……!
「マジかよ……」
「ね、フレイ兄さま、言ったでしょう?」
「ああ、気をつけるよ」
「兄さま、真っ直ぐ行ったら階段があります!」
「よしッ!」
皆で階段を下りる。
「あらッ……!」
スライムさんがいっぱいだった。しかも巨大だ。
『ボクは悪いスライムじゃないよ』て、言ってくれないかなぁ。
俺、スライム大好きだぜ。マジで。ヴェル○ラさん大好きよ。漫画が好きでアニメも好きで、原作まで読んだからな。て、何の話だよ。
さて、斬れるかな? 風魔法を付与した剣で斬ってみる。
――キュインッ!!
――ザシュッ!!
「あ、斬れた……」
ちょっといいかも……
――キュインッ!!
――ザシュッ!!
――キュインッキュイン!!
――ザシュザシュッ!!………………
「おい! リリ! お前一人で倒してんじゃねーよ!!」
「え……!?」
フレイに言われて周りを見ると、巨大なスライムさんが全滅していた。ドロップアイテムなのか、核と魔石が沢山落ちている。
「あらら……」
「あらら……じゃねーよ!」
「アハハハ! リリ! 凄いな!」
「テュール兄さま、つい……」
「本当にもう、これのどこが弱いんですか……」
「リュカ、だって相手はスライムさんだし」
「殿下、だからって何体倒してんですか」
「え……分かんない」
「さあ、次に行きましょう」
「うん、シェフ。そうしよう」
さあ、行こうぜ。あと3階層だ。
「いいか、リリ。次は兄様達に任せろよ?」
「はい、フレイ兄さま」
「兄上、良いじゃないですか。アハハハ」
「テュール、しかし俺達の出番がないだろ?」
「あ、兄さま。階段ですよ」
俺達は次の階層に向かう階段を下りる。
「ぎょえぇぇーー!!」
俺は頭を抱えて座り込みながら叫んだ。
「アハハハ!」
フレイ、何で笑ってんだよ!
「無理! 無理! 無理ー!!」
あー、マジ無理だ!
――ザシュッ!!
――ザンッ!!
次の階層は5年前に森に繁殖していた、あの蛙の大きいのがいっぱいだった。ジャイアントトードて言うらしい。
森にいたのは普通のトードでそれより大きなジャイアントトードだ。キモッ! キモーッ!! キモさも倍増だ!
俺は無理だ! ビジュアル的に無理!
あのヌメッとしていてブニブニした質感に、所々にあるイボイボ、それに色。何? 土色? ウゲー! 全部無理だ!
フレイとテュールが側近達と一緒に次々と斬って行く。
一体、何匹いるんだ? キモッ!