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271ー助っ人テュール

 突然のテュールの登場にビックリしたが、俺は相変わらずオクソールに乗せてもらっている。まだ全然一人で馬に乗れない。なんせ足が鐙に届かないんだから仕方ない。子供用てないのかなぁ。


 邸を出発する時は、またアウルースに大泣きされるかと思ったが大丈夫だった。

 本人が必死で涙を堪えていてくれた。


「リリが行ったらすぐに寝るわよ。今朝はいつもより早くに起きたからもう眠い筈よ。気にしないで。

 それよりもリリ、気をつけてね。心配だわ」


 と、アウルースを抱っこしながらフィオンが言っていた。

 母は動じないんだな。俺の母もだが。


「リリ、無事に戻って来なさい。必ずよ」

「リリアス、待ってるわね」


 俺の母と、皇后様に言われた。母は強し、だな。


「リリアス殿下、どうされました?」

「オク、出る時の事を思い出していたんだよ」

「アウル様ですか?」

「うん、アウルもだけど。姉さまと、母さまと皇后様だよ。母は強いなぁ、て思ってさ」


「リリアス殿下。時々お忘れになる様ですが、殿下はまだ10歳の子供ですから。もっと私共に甘えて頼って下さって良いんです。急いで大人になられる事はありません」


 オクソール、そうだったよ。俺はまだ10歳だったよ。


「オク、有難う。本当だね、忘れてたよ。アハハハ」


 領都の中をカッポカッポゆっくりと進む。まだ朝早いのに領民達が沿道に出てきてくれている。


 ――フレイ殿下ー!

 ――え!? あれはテュール殿下じゃない!?

 ――本当だ! いつ来られたんだ!?

 ――テュール殿下ー!

 

 おお! テュールも超人気じゃん。

 俺が3歳の頃、別邸で寝込んでいた時にヒョコッと可愛らしい顔を出してくれていたテュール。いつもフォルセと一緒だった。

 テュールは少しウェーブのあるブルー掛かった金髪を短髪にしていて、キリッとした紺青色の瞳。身長も大きくなった。兄弟の中で、1番大きいフレイと大差ない。

 大人になって、あの頃の可愛さは薄れていき代わりに精悍さが出てきた。

 そっか、テュールももう21歳か。早いもんだわ。


「殿下、お顔が父親みたいになってます」

「オク、なる訳ないじゃん!」

「ハハハ! どうせテュール殿下の事を思っておられたのでしょう? 早いものだなぁ、みたいに」

「え、オク。何で分かんの?」

「殿下は分かりやすいですから。それに殿下をお守りしてもう8年です」

「そっか。8年か。早いね〜」

「はい。まだまだ無事に大きくなって頂きませんと」

「うん。ちゃんと大人になるよ。ボク長生きするんだ」

「おや、それは宜しいですね」

「でしょぉ? 沢山の甥っ子や姪っ子に囲まれて生活するんだ」

「殿下、ご自分の子供は?」

「あー、考えてないなぁ。多分ボクは婚姻しないよ」

「殿下……!」

「ああ、オク。内緒ね。まだハッキリとそう思っている訳じゃないから」

「はい、殿下」


 ヘヘヘ、ちょっとバラしてしまったな。

 マジで俺はこの世界では婚姻しないと思うよ。

 もちろんこの世界も嫌いじゃない。良くしたいと思ってるさ。


 でも……何年経っても忘れられない。

 前世の家族をさ。まさかこんなに思うとは想像もしなかった。

 寂しい気持ちはもう消化した。二度と会えない事もとっくに理解した。だからなのかな? 余計に大切に思えてしまうんだ。

 前世の妻と息子達が、俺の家族だよ。

 だから、多分婚姻しないと思う。なんて、分からんけどね。

 ほら、俺って意思が弱いからさ。分かんないよ。コロッと誰かを好きになって婚姻しちゃうかも知れないしな。



「殿下、そろそろ森です」

「うん」


 アスラール達と近衛師団はここまでだ。


「お気をつけて!」


 隊員達が皆、片手を胸に持っていき見送ってくれる。この世界での敬礼だな。


「ユキ、また森に来ちゃったね」


 俺の横を行くユキに話す。


「リリ、そうだな」


 そう、ユキを見つけたのもこの森だからな。


「ユキ、懐かしい?」

「いや、我はこの森に住んでいた訳ではない。逃げて来たのだからな」


 お隣の国で、呪詛を込めた銃弾で狙われて河を渡ってきたんだった。


「ああ、そっか」

「しかし、この森に来なければリリには会えなかった。我は死んでいただろう」

「ユキ、人間を怨む?」

「いや、リリと一緒にいて人間も色々だと知った」

「そっか。ユキは偉いね」

「リリ、我は何年生きていると思っている?」

「え? 何年?」

「もう数えるのも面倒な位生きておる」

「ユキ、908歳だな」

「オク! マジ!?」

「はい、殿下」


 オクソール、『精霊の眼』を使いこなしてるじゃん!

 いや、と言うか! ユキさん超長生きじゃん⁉︎


「殿下、神獣に年齢や老と言う概念はありません。不死身ではありませんが」

「オク、そうなんだ!? ユキって凄いね!」

「殿下、今更です」

「あらら……」

「殿下、もう森に入りますよ。少し早く進みます」

「うん、オク」


 俺はしっかりと馬に掴まる。

 風が感じられる程度の早さで進む。森の中なので樹々が邪魔をしてそんなにスピードは出せない。


 どんどん森の奥へ入って行く。

 先頭は領主隊だ。領主隊は全部で30名の選抜隊員が来ている。その半分の15名が先頭にいる。

 次に、騎士団30名の内15名が続く。

 その後が、俺たちだ。フレイ、フレイの側近デューク、テュール、テュールの側近ノア・エルスマン。

 オクソール、俺、ユキ、後ろにリュカとシェフ。それに、アルコースとアルコースの側近ローグだ。  

 1番後ろに、騎士団と領主隊の15名ずつが続く。おっと、その騎士団達の後ろに俺たちがダンジョンに入っている間、結界を張ってその中で馬を守ってくれる領主隊の6名がいる。これ大切。馬をしっかり守ってもらわないとな。


 テュールの側近、ノア・エルスマン。

 一緒に何かをするのは、俺は今日が初めてだ。

 赤茶の癖っ毛を後ろで一つに纏めていて、茶色の瞳だ。しっかりテュールの横に付いている。

 朝、挨拶をしてくれた。彼の弟がフォルセの側近だ。

 側近に付く為に、小さい頃から教育と鍛練を受けている例の然るべき家系だ。


 テュールと側近のノア。何か嬉しそうなんだよ。もしかして魔物を討伐するのが嬉しいのか?

 テュールは、良い機会だとか言ってたし。ダンジョンの攻略を良い機会なんて俺は思えない。討伐だとか戦闘だとかは嫌いだから理解できない。脳筋だぜ。

 俺は平和な元日本人だからな。


 先頭が魔物を討伐し出した。俺も気を引き締めて行こう!


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