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269ー前夜

 魔道具も全部作り終えて、皆で夕食だ。


「リリしゃま、何してましたか?……モグモグ」


 アウルースだ。食べながら一生懸命聞いてくる。


「ボクはずっとご用事があったんだ。今日はアウルと遊べなかったね」

「あい……でも、リリしゃま忙しい、我慢でしゅ」


 なんて聞き分けの良い! お利口さんだ!


「アウル、ずっとリリしゃままだかな? て、言ってたじゃない」

「アーシャ、言ったらだめ!……モグモグモグ……リリしゃまといたいの! 仕方ないの!」

「ほら、アウル。ちゃんとお口に物がなくなってから喋りなさい。こぼしてるわ」

「あい、かあさま」

「アウル、ご用事が済んだらたくさん遊ぼうね。それまでごめんね」

「リリしゃま! だいじょぶでしゅ! ボキュ、待ってましゅ!」

「リリ殿下! あたしも待ってます!」

「うん、二人共良い子だね」

「皆様、この後最終確認を」

「ああ、辺境伯。分かった」


 フレイが返事をして、俺を見る。大丈夫だよ。全部用意できたよ。と、頷く。



 夕食後、応接室に移動する。

 メンバーは、辺境伯アラウィン、アスラール、アルコース、其々の側近、領主隊隊長ウル。

 フレイ、デューク、近衛師団団長ティーガル、オクソール、リュカ、シェフ、ユキ、それに俺だ。


「ケフッ……」


 ユキさん、やっぱ食べてたんだね。ゲップしてるよ。どんだけ食べたんだ?


 部屋の隅には、ニルとラルクも控えている。

 このメンバーの中で、辺境伯アラウィンとアスラール、近衛師団団長ティーガルはダンジョン攻略には参加しない。


 アスラールは近衛師団と領主隊の一部隊と一緒に森の入口前に待機。もしも、魔物が森から出てきた時は討伐する。

 アスラールと近衛師団団長ティーガルが指揮をとる。


 辺境伯アラウィンは邸に待機だ。もちろん領主隊も配置する。

 何かあった時には速やかに城に救援を求める。最後の砦だ。

 父の魔力で騎士団を転移できる様、俺は転移門に魔力をこめた魔石を余分に配置、転移門自体にも目一杯魔力を込めておいた。城の方でも父が魔力を込めてくれている筈だ。


「明日の最終確認をしたいと思います」


 アスラールが話し出した。もうすっかり次期辺境伯が板についている。アスラールの側近セインがピアス型の魔道具を皆に配る。


「今、お配りしているのは、フレイ殿下の要請でリリアス殿下が急遽作成して下さいました。ピアス型の魔道具です。魔力を流すと離れた所にいる人と会話ができます」


 前に来た時にも魔道具を作ったから、皆すんなり受け入れてるな……と、思ったら違ったよ。

 近衛師団団長のティーガルがピアス型の魔道具を手にビックリしている。

 そっか、近衛師団は慣れてないか。防御の魔石を持ってるのになぁ。

 オクソールが近衛師団団長のティーガルに説明してくれている。

 あ、そうだ。忘れてた……リュカを見る。


「あの、ボクからもう一つ魔道具を。マジックバッグに入っていたので、皆さんにお持ち頂こうと思います」


 リュカが皆に配ってくれる。


「殿下、これは?」

「アルコース殿。転移玉とボクは呼んでます。行きたい所を思いながら魔力を込めて下さい。その場所に転移できます。1個で大人3人は転移できます。但し、行った事がある場所じゃないと駄目です。それと簡易的な物なので、1度転移すればもう使えません」

「ダンジョン脱出に良いな」

「はい、兄さま。数があったので、其々人数を考えて配布して頂けたらと思って」

「実際に使った事はあるのか?」

「はい、兄さま。リュカが」

「リュカ、どうだった?」

「はい、フレイ殿下。あの時は大人二人を抱えて転移しました。行きたい場所を思い浮かべながら魔力を込めていくと、必要量になれば勝手に転移してくれます。便利です」

「なるほど」


 フレイが手に取って見ている。


 ダンジョンの最深部にあるダンジョンコアを目指す計画は変わりなかった。

 俺達はとにかく最深部を目指す。

 魔物討伐は各フロアを担当する隊員達に任せて最深部を目指す。途中、10階層ごとにフロアボスが居るそうだ。

 それも俺達は無視だ。フロアボスを倒さないと、次の階層には行けないので倒すのを待つ。フロアボス程度には領主隊も騎士団も負けはしない。

 そうして、俺達はダンジョンコアを守っているダンジョンボスがいるフロアの最下層を目指して進む。

 

 元々ダンジョンは、魔力を多く持つ魔物や魔石等がコアの元となる。そこに魔物の死骸が積み重なると澱みができダンジョンとなる。

 ダンジョンコアがダンジョン自体の階層を作り魔物をも生み出す。

 なので、ダンジョンコアを壊してさえしまえば、もうダンジョンから魔物が溢れ出してスタンピードをおこす事はなくなる。

 すぐにダンジョン内の魔物がいなくなる訳ではない。数年かけて徐々に少なくなり、放っておいても最終的にはゼロになる。コアを破壊されたダンジョンに出る魔物はそう強くなく、数年は冒険者達の稼ぎ場になるだろう。ドロップアイテムもちゃんと出るからな。

 そして、魔物がいなくなった後のダンジョンからは、貴重な鉱石が採れたりする。

 最終的には、また何年もかけてダンジョンの入り口も崩れ、ダンジョン自体がなくなる。


 しかし、ダンジョンコアを破壊しないで何年も放っておくと、どんどんダンジョンの階層が深くなり下層に行けば行く程魔物も強くなる。

 最下層になかなか辿り着けなくなり、ダンジョンコアも破壊できなくなる。魔物も強くなり増殖する。そしてスタンピードが起こってしまう。


 そうなる前に、ダンジョンは見つけ次第コアを破壊するのが鉄則だ。

 今回のダンジョンは30階層と予想される。出来て間もないダンジョンは、大抵30階層だ。魔物もまだそう強くない。

 早く発見出来て良かった。領主隊が毎日しっかり巡回してくれているお陰だな。


「では、皆様。明日の朝出発致します。宜しくお願い致します」


 アスラールの言葉で、お開きになった。


 もうアウルースとアンシャーリは寝てるよなぁ。

 少しだけでも遊びたかったなぁ。


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