268ー年相応
「あれだ、話せる魔道具だ」
「兄さま、ピアス型のですか?」
「ああ、それだ」
俺が7歳の時に王国に行った。その時に、インカムをイメージして作った魔道具だ。離れた所にいる人と話ができる。
「えっと……」
俺は腰に付けているマジックバッグをあさる。
「ああ、5個だけありますよ」
「そうか! 持ってるか!」
「兄さま、使いますか?」
「ああ、其々のフロアにいる者と連絡できれば便利だろう? 本当は各フロアにいる者に持たせたいんだ」
「じゃあ、作りますよ。魔石を下さい」
あれ? フレイとデュークが変な顔してる。
「リリ、今から作れるのか?」
「はい、ん〜と……2人に1個位でも良いですか? それ位ならなんとか。いえ、魔石があれば余分に作りましょう。あ、侍女の人達にも手伝って欲しいです。ピアス型に加工しないといけないので。職人さんが1番良いのですが」
「分かった。辺境伯にすぐ要請しよう。デューク、行くぞ」
フレイとデュークが慌ただしく出て行った。
「殿下、ご無理なさらなくても」
「ん? ニル、無理じゃないよ。ボクはね」
「ああ、そうでした。ピアス型に加工する方が手間でしたね」
「ニル、そうそう」
あの時は、ニルと侍女達総動員で加工してもらったんだ。懐かしいな。
「あの時は大変だったね」
「ええ、皆必死でしたね」
「ニル達には感謝だよ」
辺境伯アラウィンの側近ハイクが魔石を持ってきた。
侍女や数人の職人さんも俺の部屋に待機だ。
俺は以前に作ったピアス型の魔道具を見せる。ニルが説明してくれる。
俺は早速、魔石に付与する。
受信する側と、送信する側。2種類の魔石が必要だ。それに、空間魔法と音声を飛ばす魔法を付与する。
「ニル、これ取り敢えず2セットね」
「はい、殿下」
ニルが早速それを持って皆に説明してくれる。
俺は色々魔道具を作っているけど、いつもその影にはニル達侍女の力があるんだ。
ネックレスにしろ、認識票につけるチャームにしろ。いつもニルが手助けしてくれている。
ニルは何でも俺が思った通りに形にしてくれる。器用だね。本当、感謝だよ。
「リリ殿下」
あ、アースとレイにラルクだ。
チビさん二人に捕まっていたが、解放されたか?
「お昼寝タイムですよ」
あー、ラルク。そっか。やっとお昼寝したんだ。
「殿下、これは何の魔道具ですか?」
レイが真っ先に聞いてきた。やっぱ興味あるよな?
「レイ、離れた所にいる人とお話しできる魔道具だよ」
そう言いながら、付与できた魔石をニルに渡す。辺境伯が人数を集めてくれたので、俺が付与したらどんどん魔道具が出来ていく。
「そんな魔道具が出来るんですか!?」
「うん、レイ。ほら、3年前に王国に行ったでしょ。あの時に作って持って行ったんだ。めちゃ便利だった」
「凄いな! リリ殿下!」
「アース、有難う」
アース、分かってる? これは分かったかな?
「リリアス殿下、今回私はお留守番だそうです」
「うん。ラルク、聞いたよ。でも、ラルクの服も届いてるよ」
俺は、ラルクの戦闘服を指差す。
「え!? 私のですか!?」
「うん。父さまとセティが作ってくれたんだって。ボクのと色違いだよ。オクソール達とお揃だ」
ラルクが服を手に取る。
「あー、なんて勿体ない! 私もご一緒したいです!」
「アハハハ、ラルク強いんだってね〜」
「そんな事はありません。オクソール様に、まだまだリリアス殿下には敵わないと言われました」
「そんな事はないよ」
「え、えッ!? リリ殿下って強いのか!?」
「アース、当たり前だろ? 毎日オクソール様と鍛練してるんだから」
「レイ、マジか!?」
なんだよ。強くないよ? だから俺、毎回半分死んでるよ?
「そんな訳ないから。ボクなんて全然強くないからね」
もう、止めてくれよ。マジ、強くないからさ。
「ねえ、ニルさん。実際どうなの?」
「殿下ですか? アース様、この中では1番お強いですよ」
「え……!? リリ殿下、マジで手合わせしよう!」
「だから嫌だよ」
はい、とニルにまた魔石を渡す。
周りで作業してくれている人達がニコニコしてるじゃん。なんか生温かい目で見られてるぜ。
「殿下、あと10セットです」
「うん、ニル分かった。みんなでやると早いね」
それにしても、レイ。ジッと見てるね。しかも近距離でさ。興味あるんだ。うん、分かってるから何も突っ込まないでおくよ。
「あぁ〜、僕も早く付与できる様になりたい」
「レイ、毎日の積み重ねが大事」
「はい、リリ殿下」
「何? 何だよ?」
「アース、お前はいいんだよ」
「なんだよ、レイ。ケチだな」
おいおい、モロ子供じゃねーか。ケチとか言うな。
「殿下、私はやはり留守番ですか?」
あー、もう一人いたよ。気持ちは分かるよ。
「うん。兄さまがそう決めたなら仕方ないよ。諦めて」
「殿下……」
「ラルク、ラルクも毎日の積み重ねが大事」
「はい、殿下。次こそは必ずお供します」
「ラルク、有難う」
いい子だね。本当、皆いい子達だ。
この世界、子供でも責任が付きまとう事が多すぎる。まだまだ遊びが中心でも良い歳なのに。て、俺もか。
「そうだ、リュカ。新しい服もらった?」
「リリアス殿下、戦闘服ですよ。頂きました」
だってこの歳で戦闘服なんて嫌なんだよ。
「チームリリですね」
リュカが思い切りニカッとした。
あれ、ラルクが感動してるよ。まいったぜ。俺もちょっとチームみたい、て思っちゃったじゃん。
「リュカ、止めて。恥ずかしいから」
「でも殿下。あのパターンの戦闘服は俺たちだけですよ? ニルさんとシェフもお揃いですし」
「えッ!? 何!? そんなのあんの!?」
「だからアース。お前はもう黙ってな」
「レイ、お前意味分かってんの?」
「分かってるよ。ラルクが持ってるだろ?」
「あ! ラルク! 見せて! 俺にも見せて!」
「もう、アースはマジうるさい」
アハハハ、レイが本当に嫌がっている。
アースが1番年相応なのかもな。
あれ? そう言えばユキさんいないね? また調理場かな?