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265ーレイリに手ほどき

「レイリ、呼び出してごめんね」

「いえ、リリアス殿下。ダンジョンの件ですか?」


 ああ、そっか。悪かったかな、薬師達も忙しいだろう。


「レイリ、ごめん。忙しいよね?」

「いえ、ポーション類は余分に充分な量を作ってありますので、忙しくはありません」


 おや。本当に5年前とえらい違いだ。前は遅れていたんだからな。ま、ケイアの所為だけど。


「そう? じゃあ、少しやってみて欲しい事があって。まず、レイリ。鑑定してもいい?」

「はい、どうぞ……て、え? いや、は? 殿下、鑑定ですか?」


 なんだ、やっぱ嫌か? 俺の周りは嫌がる人がいなかったからさ。


「殿下、鑑定とは……あの鑑定ですか?」

「え? そうだけど?」


 他にも鑑定があるのか? 俺知らないよ?


「そんな……! 鑑定のスキルなんて見た事ありませんよ! どうぞ! 私で宜しければ幾らでも鑑定して下さい! あ〜、ワクワクします!」


 ん? 何? そっち? あれれ? 俺、鑑定使えるってレイリには言ってなかったっけ? レピオスも言ってなかったっけ?

 確か5年前に試験を受けに来た皆が作ったポーションを鑑定して……あ、そっか。レイリ達の前では鑑定してなかったか? そっか? ん〜、分からんからまぁいいや。


「じゃあ、レイリ。そこに座って」

「はい! リリアス殿下!」


 まあ、別に座らなくても鑑定は出来るんだけどさ。鑑定の後の事もあるからね。


『鑑定』


 あー、はいはい。なるほど。なんでかなぁ? そっか。そう言えば5年前の面接で、魔法が特別得意な訳でもないと言ってたっけ。


「レイリ、両手を出して」

「はい……?」


 俺が両手を出すと、レイリは手を重ねた。

 少しずつ、リュカの時の様にゆっくりと探る。ああ、やっぱり。詰まりがあると言うか蓋みたいになってるから、魔力が全身に行き渡りにくいんだ。

 なんでだろ? 時々いるよな、こうなってる人が。原因が知りたいよな?

 ちょっと調べてみるのもいいかな?


「あ……殿下、何を……⁉︎」

「分かる? レイリの魔力を流したんだ。今まで魔力操作が苦手だったんでしょ? 何故か詰まりがあって、蓋みたいになっていた部分があったから魔力が上手く流れなかったんだよ。今、通したからね。もう大丈夫だよ」


 俺はレイリの手を離す。

 レイリは手をグッパしている。ハハハ……面白い。


「でね、レイリに試して欲しい事があるんだ」

 

 ――コンコン


「リリアス殿下、お持ちしました」


 ハイクが剣帯につけるポーチを持って入ってきた。

 そう、マジックバッグにするポーチだ。


「ハイク、有難う」

「いえ、殿下。宜しくお願いします。レイリ、どうしたんだ?」

「ハイク様、私は殿下に呼ばれて」

「ああ、ハイク。これからレイリにマジックバッグを作ってもらおうと思って呼んだんだ」

「レイリがマジックバッグをですか? いや、殿下。レイリは魔法が苦手では?」

「苦手な訳じゃないんだ。それに、もう大丈夫だよ」

「は? 殿下?」

「まあ、見てて」

「殿下! 私にマジックバッグなど作れる筈がありません!」


 マジックバッグと聞いて、レイリは弱気になる。なんでだよ。やってみなきゃ分からんだろうが。


「レイリ、魔力量は充分だ。魔力操作ももう出来る。大丈夫だ」


 大丈夫だと俺は真っ直ぐにレイリの目を見た。


「……殿下、分かりました。教えて下さい」


 よし。いいぞ。腹を括ったな。

 俺はレイリに空間魔法と、時間停止を教えながらマジックバッグを作った。1個目はお手本だ。次はレイリだ。


「レイリ、ゆっくりだよ。急ぐと容量が小さくなっちゃう事があるんだ。急がなくていい。ゆっくり、丁寧に」

「はい、殿下……」


 レイリが慎重に魔力を流して行く。

 うん、やはり魔力操作は完璧だ。途中で詰まっているあの状態でもハイポーションを作っていたんだ。その方が凄いよ。ああ、だから魔力量が増えたのかな? レイリは俺が思った以上に魔力量が多かった。

 魔力を循環させる道筋の詰まりを取り除いた今のレイリにはマジックバッグだって楽勝な筈。


「殿下、どうでしょう?」

「うん。じゃあ鑑定するね」

『鑑定』

「うん。大丈夫、ちゃんと出来ているよ。容量は……そうだな。この部屋半分位かな。初めてだからね」


 俺が作るマジックバッグの1/3位だな。それでも充分だ。

 まあ、そのうち慣れれば容量も増えるだろう。


「ハイク、これでいつでもマジックバッグが作れるね」

「殿下! 有難うございます! 早速、アラウィン様に報告しなければ! 失礼致します!」

「アハハハ、行っちゃった」

「殿下、有難うございます。魔力操作がこんなにスムーズに出来るなんて……以前とは全く違います」


 うんうん。良かったよ。


「レイリ、数を熟してね。使えば使う程、少ない魔力量で容量の大きな物を作れる様になるよ」

「なるほど。殿下が作られると、どれ位の容量の物になるのですか?」

「そうだな、ボクだとこの部屋1個半位かな」

「……!! そんなに!?」


 だって、魔力量も違うし、なにより俺は5歳の時から作ってるからね。そりゃ、今初めて作ったレイリとは容量が違って当たり前だ。

 

「レイリ、魔力切れに注意してね」

「ああ、そうですね。分かりました。殿下、私は何故詰まっていたのでしょう?」

「なんでだろ? リュカもそうだったんだ。時々、そんな人がいるみたいなんだ。しかも同じ様な場所だった。ちょっと、時間があったら調べてみたいな」


 そんな話をしていたら、リュカが話に入ってきた。


「殿下、実は心当たりがあるんです」


 なんだと!? リュカの話を聞くと……

 リュカは、俺が保護する前に奴隷商の邸の牢に入れられていた。その時に手に拘束具をつけられ、魔法を封じる魔道具をつけられていたそうだ。

 脱出する時に力任せに其れらを壊して逃げた。その後、俺に発見されて助かり暫く高熱が続いた。


「その時じゃないかと思うんです。だから、魔法を封じる魔道具の影響か、高熱を出した影響ではないかと。それまで、魔力を操作するのは抵抗なくやってましたから」

「なるほど。じゃあ、もしかしてその時一緒に捕まっていた人達も、リュカと同じ様になっているかも知れないね」

「そうかも知れません」


 リュカ、何故今までその事を言わなかったのかな?


「殿下……!それなら私、思い当たります!」

「レイリ、そうなの?」


 て、言うかさぁ。何でみんな気づかないのかな?

 


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