263ーダンジョン発見
薬師達と会った後は予定もなく、昼食までの間に裏庭でまたアウルースとアンシャーリと一緒に皆でのんびりとしていた。
アースがオクソールに軽く稽古をつけてもらっているのを、ぼんやり見ている。
「あー! クソッ! 全然敵わねー!」
アースがオクソールに軽くあしらわれている。まあ、そりゃそーだ。敵う訳ないじゃん。
「リリしゃま、だめだめでしゅ」
アウルースがアースを指差して容赦なく言う。
「アウル、そうだね。ダメダメだね」
「本当に、アースは。敵うとでも思っていたのでしょうか?」
「レイ、まったくだ」
皆、横一列に並んで見学だ。俺の両側にアウルースとアンシャーリがいる。リュカとラルクは俺達の後ろに立っている。
「オクソール様は全然本気ではありませんからね」
「リュカさん、当たり前ですよ。オクソール様が本気を出す程じゃないし」
ラルク、お前厳しいね。まあ、オクソールに挑む気持ちだけでも評価しようよ。
しかし……良い陽気だ。ポカポカしている。
「リリしゃまもっとポカポカでしゅ」
え……!? アウルース。何で俺が思っている事が分かった?
「リリアス殿下、声に出てました」
「あ、ラルク。そうなの?」
「はい」
なんだよ。俺、アウルースを鑑定しようかと思ったぜ。
「リリ! 楽しんでるか?」
ポンッとルーが現れた。
「ルー、久しぶりだね」
「ああ。平和そうだな」
「うん」
「リリしゃま、鳥しゃん喋ってましゅ」
アウルースがルーを指差している。あれ? もっと驚くんじゃねーの? 普通はさ。
「ああ、アウル。この鳥さんはね、特別なんだ」
「アウルか。ルーだよ。よろしくね!」
「あい! ルー!」
「アウル様、ルー様です」
「えー? りゃりゅく、ルーしゃま?」
「いや、アウル。ルーでいいよ」
「ほりゃ、ルーでしゅ!」
「鳥さんがどうしてお話できるの?」
「アーシャ、この鳥さんは特別だからだよ。」
「リリ殿下、特別?」
「そう。特別なんだ。ボクのお友達だ。仲良くしてね」
「はい! リリ殿下!」
「あい!」
「ハッハッハ! 良い子達だね〜!」
「ルー、どうしたの? 暫く見なかったね」
急にルーが出てくると、何かあるんじゃないかと思ってしまうな。
「リリ、まあ別に何もない時も来るよ」
「本当に?」
「本当だよ。リリが穏やかなんでな。ちょっと見に来ただけだ。なんて言いたかったんだが……」
「リリアス殿下! オクソール殿!」
「アスラ殿! どうしました!?」
アスラールが慌ててやってきた。どうした? 何かあったのか? オクソールもアースを相手していた手を止めてやってくる。
「ルー様!」
アスラールがルーに気付いて跪こうとした。
「ああ、構わないで」
「ルー様、すみません。リリアス殿下。森を巡回に出ていた兵からの報告で、森の中にダンジョンらしき洞窟を発見したと!」
「ダンジョン!?」
ダンジョンと言えば魔物の巣窟だ。
放っておけば、魔物が溢れ出してきてしまう。早いうちにダンジョンコアを見つけて破壊しなければならない。
スタンピードなどに発展したら、どれ程の被害が出るか分かったもんじゃない。
「ルー! やっぱ何かあるじゃん!」
「あー、まあな。だが、まだ出来たてのダンジョンだ。潰すなら今だよ。幸い、兵力は普段以上にあるだろ? 騎士団も近衛師団も来ている。リリもいるし、フレイ、オクソールにリュカ、シェフもいる。早いうちにさっさとダンジョンコアを見つけて破壊しないとな」
「そんな悠長な! 簡単に言うけど!」
「リリ、簡単さ。リリ達ならね」
ルーが言うならそうなのか?
いや、油断は禁物だ。
「リュカ、あれ使えるな?」
「はい! ルー様!……もちろんです!」
「よし。リリ大丈夫だ」
「ルー、分かったよ。頑張ってみるよ」
「何かあったら直ぐに呼ぶんだよ」
「うん。ルー分かった」
「大丈夫だ。気をつけて行っといで」
そう言ってルーはポンッと消えた。ダンジョンだぜ? 俺も行くの決定かよ。
「ふぇッ! 鳥しゃんいないいない!」
「アウル、母様のところへ行こう」
アスラールがアウルースをひょいと片手で抱き上げた。
「お父様!」
「アーシャ、お前もだ」
もう片方にアンシャーリも抱えた。
あら、慣れたもんだな。
「リリアス殿下! 父の執務室へお願いします! オクソール殿、リュカも頼む!」
「はい! アスラール様! 殿下、行きましょう」
「ああ、リュカ」
「リリアス殿下!」
「ああ、ラルク達も邸に! オク!」
「はい! 殿下、参りましょう」
皆で邸に急ぐ。
選りに選ってダンジョンかよ。
俺まだダンジョンて見た事ないぞ。マジかよ。どーすんだ?
「リリ殿下、大丈夫です。お守りします!それにルー様も大丈夫と仰ってました!」
そうだな、落ち着こう。ルーも大丈夫と言ってた。
「リュカ、有難う」
俺達は急いで邸に戻った。
俺とリュカとオクソールはアラウィンの執務室へ向かう。ラルクとアースとレイには、アウルースとアンシャーリを任せた。
「リリアス殿下、こんな時に申し訳ありません。しかし、お力をお貸し頂きたく」
「アスラ殿、もちろんです。分かってます」
「有難うございます」
アラウィンの執務室に入ると、皆揃っていた。近衛師団団長のティーガルと、領主隊隊長のウルもいる。
「リリ、お前はダンジョンは初めてだな」
「はい、フレイ兄さま。ボク、足手まといになりませんか?」
「何言っている。リリが足手まといになるなら、騎士団全員役に立たない事になるぞ?」
いや、フレイさん。意味不明だよ。
俺は全然強くないからね。戦った事ないからね。実戦経験ないんだよ? そこんとこ、忘れないでほしいな。
「皆さん、領主隊隊長のウルからご説明致します」
アラウィンから紹介されて、領主隊隊長のウルが説明を始めた。
ウルの話によると……
いつも通り、領主隊が森を巡回していた。今日はやけに魔物の数が多かったそうだ。それで不審に思った領主隊は、魔物が出てくる方角を突き止め森の奥を調査したところ洞窟の入り口を見つけた。
領主隊は毎日森を巡回しているが、昨日はなかったらしい。
やはり、ルーが言ってた様に出来てすぐのダンジョンなんだろう。
領主隊が入り口付近を調査したところ、洞窟の中で魔物を倒すと魔物の死体が消えたそうだ。ダンジョン特有の現象だ。
ドロップアイテムを落とす魔物もいたらしい。そうなると、ダンジョン決定だ。
ダンジョンかぁ。俺、マジで経験ないんだぜ? そんなファンタジーはいらないよ。