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260ー何気ない日常が幸せ

今日は次話の投稿が遅くなりそうなので、今のうちに1話あげておきます。

宜しくお願いします!

「あれ? リュカ、シェフは?」

「ああ、もうとっくに厨房に戻りましたよ。殿下の夕食を! と言ってました」


 はぁ〜、シェフはブレないね。有難いね。俺達も邸に向かって歩く。


「ユキ、スゲーな! もう途中から言葉が出なかったよ!」

「アース、ボクもだよ。全然ユキが何をしたのか分からなかった。アウルはご機嫌だね」

「あい! レイしゃま! ユキしゃん、しゅごいでしゅ!」


 アウルースはユキに乗ってずっと旗をパタパタしている。


「リリアス殿下、窓から母君が見てらっしゃいますよ」

「え? ラルクどこ?」


 俺は、ラルクに言われて邸の窓を見上げる。あ、いたいた。母も皇后もフィオンも揃って見ている。


「アウル、あそこに母さまがいるよ」

「え? かあしゃま?」


 俺が指差す方をアウルースが見上げる。


「あ! かあしゃまー!!」


 パタパタと旗を振る。

 フィオンが満面の笑顔で手を振り返す。


「母さまー! 皇后さまー!」


 俺も手を振る。

 母も皇后も手を振り返してくれる。


「皆さん、見てらしたのですね」

「ラルク、あれだけ騒げばね。殿下方がお越しになって、騎士団が来ると領主隊は生き生きしてますからね。次は何をしようかと考えているのではないでしょうか?」

「あ、アスラ殿。ボク思い出しちゃった」


 そうだよ。騎士団が来たらさぁ。


「リリアス殿下、何です?」

「あれだよ、恒例の。また対戦やるつもりなのかな?」

「あー。殿下、どうでしょう? 今回は短いですからね」

「ね、どうするんだろね」

「リリ、あれか? あの遠征した時の恒例のか?」


 いつの間にか、フレイとデュークがすぐ後ろにいた。


「フレイ兄さま、そうです。アレです」

「あー、アレなぁ。今回は近衛師団がいるからな」

「ん? いたら駄目なんですか?」

「いや、人数が合わないだろ?」


 なんだよ、そっちかよ。もう、やる気じゃん。今回は俺のお休みなんだぜ? 分かってる? フレイ兄さんよ。


 邸に入ると、シェフが待っていた。


「さあ、皆さま! 夕食にしましょう!」

「あーい!」

「アハハハ。アウル、良いお返事だ!」

「リリアス殿下、今日は残念でした」

「シェフ、でも凄かったよ! ビックリした!」

「あい! フワ〜ッて! グインて!」


 アウルースが一生懸命身振り手振りで話す。


「アハハハ、そうですか? 有難うございます」

「シェフ、アレは風魔法なんだろ?」

「はい、アスラール様。そうです」

「私も風属性なんだ。出来るだろうか?」

「もちろん! アスラール様の身体能力だと直ぐにできますよ!」

「そうか? 鍛練するよ!」

「はい! さあさあ、お食事に致しましょう」

「あーい!」

 


 皆で食堂に入る。すぐ後から辺境伯達や母達が入ってきた。勢揃いだ。

 アウルースとアーシャが子供用の椅子に座らせてもらっている。首元に食べこぼしの汚れ防止の為のナフキンをかけてもらっている。

 順に夕食が出てくる。今日はクリームシチューだ。


「フフフフ……」

「リリ、どうしたの?」

「母さま、アウルとアーシャを見ていると懐かしいです」

「ああ、そうね。リリもああして食べていたわね」

「はい、母さま」

「リリアスはお口を拭きなさいと言っても、どうせ汚れるから最後に拭きますと言うのよ」

「皇后さま。ボクは皇后さまにもそんな事を言ってましたか?」


 俺って皇后様になんて生意気な事を言ってんだよ!


「ええ。でも私はリリアスの可愛らしいお顔が汚れるのが気になってしまって」

「フフフフ、皇后様。そうでしたわね」

「ええ、エイル。ついつい手を出してしまって。よくクーファルに叱られたわ」

「え? クーファル兄さまですか?」

「そうよ。リリアスが自分でしようとする気持ちより先に手を出したら駄目だと言ってね。あの子はリリアスを育てているつもりだったのかしら?」

「フフフフ、クーファル殿下はリリにベッタリでしたね」

「あら、エイル。クーファルだけじゃないわ。兄弟みんなよ」

「そうでしたわ。フフフフ」


 ん〜、俺が覚えてない事を言われるとな、ちょい恥ずかしいよな。


「シェフ、いただきます! あ、エビのクリームコロッケもある! こっちはフライ?」

「はい、リリアス殿下。今日のお昼にニルズが捕りたてのエビとホタテを持ってきてくれたので」

「おー! 美味しそう」

「ええ、美味しいですよ」

「シェフ! シェフ! こりぇ! しゅごいおいしー!」


 あーあ、アウルースのお口の周りがベトベトだ。


「アハハハ、アウル様。有難うございます」

「アウル、お口の周りがベトベトだよ」

「リリしゃま、いいんでしゅ。最後に拭きましゅ」

「……!」

「ウフフフ。リリアスそっくりね」

「リリ、言われたわね」

「皇后様、母さま。ボク、ビックリしました」

「本当ね、リリが小さい時と同じ事を言うんだから」

「フィオン姉さま、驚きました」


 本当に驚いたよ。今、皇后様と母に言われていたところだったから余計にさ。


「でしょ? どうしてかしらね」

「アウル、駄目よ。ちゃんと拭きなさい!」

「アーシャ、いいの」

「駄目よ、お行儀悪いわ」

「あい……」

「アハハハ! 皇后様、母さま、アーシャはまるでフィオン姉さまですね!」

「シェフ、このコロッケは絶品だな!」

「フレイ殿下、有難うございます!」

「あい! じぇっぴん!」

「アハハハ、アウル。絶品だね」

「あい! リリしゃま!」

 

「リリ、幸せね」

「はい、母さま」

「ええ、幸せだわ」

「ああ、幸せだな」

「皇后様、フレイ兄さま。本当に」


 辺境伯夫人のアリンナ様がしみじみと言う……


「5年前、リリアス殿下やクーファル殿下、フィオンが来て下さったから、この日々があります。皆様のお陰ですわ」

「お義母様、それだけではありませんわ。お義母様やこの家の皆が耐えたからです」


 ああ。フィオンの言う通りだ。

 俺達が来たからだけではない。俺達はきっかけにすぎない。この辺境伯家皆が耐えたからだ。辺境伯夫人は傷付いても耐えようとした。


「クーファル兄さまがずっと前に……ボクが泣いていた時に言ってくれた事があります。

 同じ状態が続くと先が見えなくなって不安になる。

 だけど、良い事も悪い事も同じ状態がずっと続く訳がない。必ず変化する時は来る。

 先には未来しかないんだ。人は未来を選べるんだと。ボクもそう思います。

 誰が言ったのかは忘れましたが、「明けない夜はない」んです」


 前世、日本人だった時に聞いた。何かの歌詞だったか、アニメだったか? ベタすぎてなんとも思わず聞き流していた言葉だ。

 だが、この世界では違う。理不尽でどうしようもない事の多いこの世界ではな。

 

 この世界で、こんな平和で穏やかな日々を過ごせるとは思わなかった。俺、幸せだよ。

 こんなにみんな一緒に和やかに食事できるなんて。

 3歳の頃の俺には想像も出来なかった。


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