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26ー弟子入り

「シェフおいしいよ」

「ああ、美味いな」

「有難うございます!」


 俺は兄フレイと昼飯中だ。

 リュカは大喜びで、オクソールに弟子入りすると言った。まぁ、まだ体力が戻ってないから養生してからだけどな。


「しかし、リリ」

「はい、にーさま……」

「まだ終わった訳じゃないんだ」


 ん? 何がだ?


「にーさま?」

「あの奴隷商に出入りしていた貴族だが、奴隷商がご丁寧に取引記録を残していた。それで、まだ貴族が一人逃げている。」


 どう言う事だ?


「にーさま、よく分かりません」


 兵達は、奴隷商に踏込み取引記録を発見して、直ぐに記録にある貴族を捕らえに向かった。近辺の貴族ばかりだったそうだが、子爵を一人まだ捕らえられていないらしい。なるほどなるほど……で?


「その子爵と言うのが曲者だ。今迄尻尾を掴めずに泳がせていた子爵なんだ。たかが子爵の癖に、色々際どい事をやってのし上がってきた者だ。裏稼業の者とも繋がりが有ると見ている。当然、評判は頗る悪い。領地の民が逃げ出す事もある」


 なんだそれ! ああ、だから俺が狙われるかも知れない、て事か。


「リリが、此処に滞在している事は公表していないが、用心するに越したことはない」


 そうだな。フレイの言う通りか。


「シェフ、出入りする商人達にも気を付けてくれ」

「はい! フレイ殿下、畏まりました!」

「オクソール、お前も今迄以上に警戒を怠るな」

「はッ、殿下」

「ニル、君も頼んだ」

「はい、畏まりました」


 そして、次の日からこの邸に保護されていた者達が兵に連れられ、次々と家族の元へと帰って行った。ちゃんと着替えをし身綺麗にして。

 そして、この邸には兄フレイの差配によって兵が1分隊残される事になった。


「リリ、城で帰りを待っているからな」

「はい、にーさま」


 兄フレイも、捕らえた者達を護送する為に帝都へ戻って行った。




「リリアス殿下、お目覚めですか?」

「……うん」


 俺は昼寝から目覚めたとこだ。朝からバタバタしたが、もう邸もいつもの落ち着きが戻っている。俺はなにもしていないんだけどな。


「ニリュ、りんごジュースちょうだい」

「はい、殿下」


 俺はよっこいしょと足からベッドを降りソファに向かう。トテトテと……


「……ふわぁ…… 」


 まだ、眠いぜ。ソファに座るとりんごジュースが置かれた。


「ニリュ、ありがと」


 そして俺は両手でコップを持って飲む。ふぅ、暇だな……一気に邸の中が寂しくなったな。


「殿下、どうされました?」

「ニリュ、暇だね」

「殿下、ご本のお部屋に行きますか?」

「んー……リェピオスはどこ?」

「レピオス様ですか? 医務室におられると思いますが」

「じゃあ、リェピオスの所に行く」

「殿下、ご気分でも悪いのですか?」

「ああ、ニリュ違うよ。リェピオスに弟子入りしようと思って」

「えっ? 殿下が弟子入りですか?」

「うん、そう」


 あの薬湯が気になっていたからな。この際だから色々教わりたいんだよ。


 オクソールに弟子入りしたリュカは、少しずつ鍛練を始めている。まだ体力が万全ではないのに、嬉々として鍛練している。

 部屋も客間から使用人部屋へ移された。もう薬湯も飲んでいないそうだ。城へ戻る前に、一度村に帰らせようと思う。このままは駄目だろう。

 獣人とは人間よりも強靭だ。その獣人の中でも強い狼獣人達がひっそりと隠れる様に暮らしていた。過去に人間は、彼らにどんな酷い仕打ちをしたのだろう。俺には想像もつかない。

 


「ニリュ、リェピオスは忙しいかな? 迷惑かかりゃないかな?」

「殿下、ご自分でレピオス様に聞かれてはいかがでしょうか? 私は大丈夫だと思いますよ」


 そうか。よし、自分でお願いしよう。


「分かった」


 ニルに手を引かれて邸の中を歩く。1階の奥、裏口近くの部屋にレピオスは居た。


 此処が医務室か。初めて来たな。こっちのエリアには来た事がないしな。と、言うよりも邸の中全部を俺は知らない。

 自分の部屋と客間、応接室、食堂、厨房、父が来た時に執務室代わりに使っている部屋、そしてご本のお部屋位だ。3歳児にとっては広いんだよ。


「おや、リリアス殿下。どうされました?」


 レピオスが先に気がついて声を掛けてきた。


「リェピオス、ボクを弟子にしてください!」


 俺はガバッとレピオスに向かって頭を下げた。意表を突いて動揺させ畳み込む作戦だ!


「で、殿下! お止め下さい! どうか頭を上げて下さい!」


 チラッと上目遣いで俺はレピオスを見る。


「じゃあ、弟子にしてくりぇりゅ?」

「殿下…… どうしてまた?」

「教えて欲しいて言ってたよ?」

「まあ、そうですが…… お教えするのは構いません。弟子はやめて下さい」

「ええー! どーしてー!? 」

「どうしても何も……」

「ボクが3歳だかりゃ?」

「いえ、そうではなく」

「じゃあ、りゃりりゅりぇりょが言えないかりゃ?」

「ブフフッ、殿下それは全然違いますよ。言えてないのは気付いておられたのですね?」

「気付かない訳ないじゃん!!」

「ハハハハ!」

「リェピオス酷い」

「殿下は面白いですな」

「ぶぅ…… 」


 思わずほっぺがふくれちゃったよ。


「いや、殿下。弟子入りは無理です。殿下は皇子殿下なのですから」


 そうか、皇子だから無理と言うのか。身分の差がある世界だったな。しかしだな、レピオス。悪いが、そんな事で俺は諦めないんだよ。


「リェピオス、関係ないんだよ。知識を沢山もったリェピオスに、知識を持たないボクが弟子入りすりゅのは当然なんだよ」

「殿下……!」


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